2016 Fiscal Year Annual Research Report
富栄養化精密予測に向けた土壌コロイド粒子に存在するリンの化学形態と生物利用の連関
Project/Area Number |
15H04467
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 剛己 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30262893)
山口 紀子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (80345090)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コロイド / リン |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌中の粒径1 マイクロメートル以下の水分散性コロイド粒子(WDC)にはリンが濃集し,かつ下流へ長距離移動しやすいという特性をもつことから,水域の富栄養化と藻類の増殖に最も中核的な役割を有している.土壌の栄養元素濃度は,肥料や堆肥の施用によって増加する.今年度は,土壌に含まれるナノ粒径のコロイド粒子を分画し,それに含まれているリンの化学形態を明らかにすることを目的とした.
土壌の分散液をろ過・超遠心操作によって,コロイド粒子を抽出し,目的の粒径範囲のコロイドが回収されているかについて,動的光散乱装置を用いて,コロイドの平均粒径分布を測定して確認した.WDC画分に含まれる粒子のうち,検出された粒子径の範囲は21-6400 nmであった.豚ぷんを施用した土壌のWDC画分の粒径分布は,<20 nmが0%,20-1000 nmが79.6-88.4%,1000-6500 nmが11.5-20.4%であった.
得られたコロイド粒子について,リン濃度を分析したところ,豚ぷん堆肥の連用によって,土壌のWDC画分に含まれるPの濃度が増加した.放射光を光源とするX線分光法を用いて,リンの化学形態を定性した.その結果,WDCに蓄積したPの大部分はFe(水)酸化物に吸着した形態であり,堆肥の施用量が増加することでCa結合態のPの割合がわずかに増加する傾向がみられた.逐次抽出法の結果によって,豚ぷん堆肥の連用によって,土壌のPがAl/Fe(水)酸化物に吸着していたことも確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水分散性コロイドを土壌から分画し,リンの化学形態の分析に成功した.計画通りに順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
農地から水域へのPの流入には,土壌中の鉄水酸化物の一種であるフェリハイドライト(ferrihydrite)が大きく寄与していると考えられる.ferrihydriteはPとの親和性が高く,農地に人為的に肥料として供給されるPを高濃度に吸着し,その粒径特性から降雨などによって水域へ移動しやすい特性を有するためである.ferrihydriteに吸着したPをリン源とした培地でラン藻類を培養し,生育に及ぼす影響を明らかにする.
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Research Products
(2 results)