2015 Fiscal Year Annual Research Report
染色体分断技術とゲノム編集技術の融合による酵母ゲノム工学の新展開
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15H04475
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
原島 俊 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (70116086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 峰崇 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80379130)
笹野 佑 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90640194)
浴野 圭輔 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (30310030)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酵母 / ゲノム工学 / 染色体工学 / ゲノムの再編成工学 / ゲノム育種 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画 1-1) 2領域同時削除技術(PCD-CRISPR)の開発 従来のPCD技術では成功していなかった染色体2領域の同時削除が、CRISPR/Cas複合体の発現下においてPCD技術を行う(PCD-CRISPR法と称す)事により可能となるかどうか試みた。まず、染色体末端領域の2カ所について同時欠失を行ったところ、従来法では全く得られなかった同時欠失形質転換体が、形質転換体数総数の約20%の頻度で得られることがわかった。次に、相同組換え部位が倍となり、より難易度の高い染色体内部領域の2カ所同時欠失を行ったところ、同じく従来法では全く得られなかった2領域同時欠失形質転換体が約50%の頻度で得られることがわかった。これらの結果より、染色体の末端、内部にかかわらず、PCD-CRISPR法によって、少なくとも2領域については、同時欠失が可能である技術が確立した。 計画 1-2) 2領域同時重複技術(PCDup-CRISPR)の開発 従来のPCDup法では成功していなかった染色体2領域の同時重複が、CRISPR/Cas複合体の発現下でPCDup技術を行う事により可能となるかどうか試みた。その結果、形質転換体総数の約40% の頻度で、目的の2領域が同時に重複している形質転換体が得られることがわかった。これらの結果から、PCDup-CRISPR法は、従来法では実現できなかった染色体2領域同時部分重複が可能であることが示された。 こうした技術の開発を進める中で、要素技術の最適化に関連した実験も行った。例えば、従来のPCD法では、染色体DNAとの相同組換え領域の長さが400bp必要であり、オーバーラップPCRを行う必要があったが、PCD-CRISPR法では、プライマーに付けた50 bpの短い相同配列を持つ欠失用断片を用いても、高い効率で染色体の部分欠失を行うことが出来ることなどを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに開発してきたPCD、PCDup法(従来法と称す)では取得できなかった同時2領域欠失や同時2領域重複を持つ形質転換体が、本年度開発したPCD-CRISPR法、同時2カ所重複技術(CRISPR-PCDup)の開発によって、初めて可能となった。原理的には可能であるとは信じていたが、予期せぬ問題点が出て来る等によって、期待通りに進展するとは思っていなかった。しかし、それが、実際に、期待通りに進展したことは、大きな進展であると評価しても良いと思っている。この進展は、次のステップとして、同時3カ所欠失、同時3カ所重複技術、さらにはもっと多数の領域を、一度の形質転換操作で可能とする、これまでになかった革新的ゲノム工学技術の開発に結びつくものである。 PCD-CRISPR法とPCDup-CRISPR法は、一度に少なくとも2領域を操作できるため、複数箇所の染色体部分欠失株や重複株の作製に要する日数を大幅に減らすことが出来る。例えば、2つの染色体領域を操作するために必要な日数を比較すると、従来法では確認作業も含めて25日程度必要であったが、それが12日程度で可能となる。また、従来のPCD法やPCDup法では、相同組換え効率の低さから、標的領域との相同配列が400 bp必要であり、ゲノムDNAから増幅させた相同配列とマーカーやテロメアを含むPCR断片を個別にPCRによって調製した後、オーバーラップPCRによってこの2つのPCR断片を繋げるという作業が必要であった。しかし、PCD-CRISPR法やPCDup-CRISPR法では、標的領域との相同配列が50 bpのものを用いて高効率な部分欠失や部分重複を起こすことが出来ること、すなわち、必要なPCR断片を一回のPCRで調製することが出来るようになった。こうした成果を考えると、当初の計画以上に進展していると評価しても良いと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策については、別途開発を進めてきた技術(PCS-CRISPR法)によって、染色体の同時3カ所の分断、さらには4カ所の分断に成功したので、そうした技術に基づいて、次には、同時3領域(3カ所の部位ではなく、3カ所の領域であることに注意)の欠失技術、同時3領域の重複技術を確立することが重要と考えている。このような、3つ以上の染色体領域を対象とする、さらにハイスループットなPCD-CRISPR法およびPCDup-CRISPR技術を確立することは、これまで、到底考えられなかったゲノムの多様な操作の発展に貢献するものと信じている。そうした技術の開発は、ゲノム機能の解析やゲノム育種に大きな進展をもたらすものと信じている。
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Research Products
(19 results)