2016 Fiscal Year Annual Research Report
ランタノイド依存メタノール脱水素酵素の多様性と制御機構の解明
Project/Area Number |
15H04476
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
谷 明生 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (00335621)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | メタノール / ランタノイド / メチロトローフ |
Outline of Annual Research Achievements |
メタン・メタノールを資化する微生物は地球上でのC1化合物の循環に大きな役割を担っている。中でもメタノール資化性細菌は植物が放出するメタノールを利用して生育し、植物表面で優占化する。Methylobacterium属細菌はその典型で、植物に対して生長促進作用を持っている。メタノールの酸化酵素であるメタノール脱水素酵素MDHは、グラム陰性のメタノール資化性細菌が持っている重要な酵素である。これまでMDHはカルシウム依存のMxaFが知られていたが、そのホモログ酵素・遺伝子XoxFはその機能が分かっていなかった。近年になりXoxFがランタノイド元素を補因子とする酵素であることが発見され、生物学的に全く新規な金属元素依存の酵素であることが明らかとなった。本属細菌のゲノムには必ず両方がコードされており、ランタノイドが存在すると、XoxFを優先的に発現する。このことはXoxFがより重要であり、かつ進化的にも祖先型であることを示している。本研究ではランタノイド元素の存在下で両酵素遺伝子の発現切り替えの分子メカニズムを解明することを目的としている。 一方、XoxF遺伝子は、メタノール資化性が知られていない細菌株ゲノムにも広く存在していることから、ランタノイドが存在すればメタノールを利用するような細菌株の存在が示唆されている。そこでランタノイド存在下でメタン・メタノール資化性細菌を探索し、新属細菌を分離した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Methylobacterium属細菌において、XoxFを破壊すると、MxaFが発現しなくなり、カルシウムが存在してもメタノールに生育しなくなった。しかし自然突然変異により生育が回復した株が複数得られ、そのゲノム解析の結果、両酵素遺伝子の発現切り替えに関わると考えられているMxbD遺伝子に変異があることが分かった。MxbD破壊株はランタノイド存在下で若干の生育をしめしたが、非存在下では全く生育しなかった。現在変異型MxbDをMxbD破壊株に相補し、その生育を調べている。 RNA=Seqの解析結果から、ランタノイドに応答して発現量が高まる遺伝子が明らかになっている。この中には当然XoxFが含まれていた。またXoxFの周辺遺伝子(機能未知)も発現量が上がっていた。その他、Hisitidine kinaseとアノテーションされた遺伝子に注目した。このタンパク質はKinaseドメインはないが、ペリプラズムに移行すると考えられるシグナルペプチドが存在した。その他Ca-binding ドメインが存在した。従って、本タンパク質は細胞外(ペリプラズム)でCaや他の金属と結合すると考えられた。この遺伝子の破壊株は、MxaF, XoxFの発現量がランタノイドに無関係に高まったことから、間接的にランタノイドの存在を感知していると考えられた。現在、本タンパク質の細胞内局在、遺伝子破壊によるゲノムワイドな遺伝子発現の解析を行う予定である。 ランタノイド依存のメタノール資化性細菌として、Pleomorphomonas、Methylophilus属細菌に近縁な新属細菌を複数単離することが出来た。ゲノム解析の結果、前者はMxaF, XoxFを両方持ち、ランタノイドの存在により同じく発現を切り替えることが明らかになった。後者ゲノムにはMxaFが存在せず、ランタノイドの存在下でのみメタノールに生育した。その他の炭素源はほとんど資化しないため、Obligateなメチロトローフであると考えられた。前者の各MDH遺伝子の破壊株の作成を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
変異型MxbD導入株においてMxaF発現のXoxF依存性が解除されるかを検討する。一方でMxaF, XoxFの金属特異性を決定しているアミノ酸残基を入れ替えた変異酵素を発現させて、酵素の金属要求性と、MxaF発現のXoxF依存性が変化するかを検討する。 Histidine kinase遺伝子に関しては、その隣に同じくCa-dependent kinase domainを持つ遺伝子が存在していた。現在両方の遺伝子破壊株の作成、相補株の作成、ランタノイドに応答した発現解析を行っており、遺伝子破壊株が作成できればMxaF, XoxF遺伝子発現の解析も行い、これらがMDH発現の切り替えにも関わっていることを示す。 ランタノイド依存の新規メチロトロフ細菌に関しては、すでに新属細菌であることを示すデータを得ており、ゲノム情報も得たことから、論文を作成して発表する段階にある。
|
Research Products
(9 results)