2015 Fiscal Year Annual Research Report
過酸化脂質の生成機序、疾病への関与機構および食品成分による抑制効果の解明
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15H04497
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
仲川 清隆 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80361145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 陽夫 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20157639)
内野 正 国立医薬品食品衛生研究所, 生活衛生化学部, 主任研究官 (40232863)
木村 ふみ子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50321980)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 過酸化脂質 / 疾病 / 食品機能 / LC-MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究(過酸化脂質の生成機序、疾病への関与機構および食品成分による抑制効果の解明)では、「動物やヒトの加齢老化、疾病における生体脂質の過酸化(脂質ヒドロペルオキシドとその代謝物の生成と分解)の機構と、病態増悪化(細胞機能修飾)の分子メカニズムを、細胞・動物・ヒト試験で解明する」、および、「食品と食品成分による生体脂質過酸化の抑制効果を細胞実験と動物試験で検討し、過酸化脂質の生成制御と疾病予防の基盤的解明を図る」、これらを目的に研究を進めている。本年度は、「過酸化脂質標準物質の調製法の最適化」を進め、過酸化脂質(ホスファチジルコリンヒドロペルオキシド、トリアシルグリセロールヒドロペルオキシド、コレステロールエステルヒドロペルオキシド、脂肪酸ヒドロペルオキシドの分子種/異性体およびこれらの分解物)のより効率的な標品調製法を確立した。現在は、世界の多くの研究者にこれら標品を供給できるように、一層の簡便かつ安価で大量調製可能な合成法へと改良を図っている。また、「過酸化脂質分析法の向上とImaging MS法の開発」に取り組み、過酸化脂質のLC-MS/MS分析にアルカリ金属を用いることで、従来不可能であった“過酸化脂質の分子種さらには異性体の高選択的な定量”を実現しつつあり、更なる検討を進めている。また、組織器官や細胞内における過酸化脂質の分布、局在性、分子機能の解明のため、Imaging MS 法の検討も進めている。こうした分析法の開発により過酸化脂質の生成原因を特定できれば、その軽減に見合う食品・食品成分を選択し活用することで、より効果的な酸化ストレスの低減が実現され、疾病予防に繋がると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、「過酸化脂質標準物質の調製法の最適化」では、より効率的な標品調製法を確立し、「過酸化脂質分析法の向上とImaging MS法の開発」では、LC-MS/MS分析時にアルカリ金属を用いることで、従来不可能であった“過酸化脂質の分子種さらには異性体の高選択的な定量”を実現しつつあり、このように当初の目的をおおよそ達成することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、引き続き平成27年度の研究内容を継続して行う。加えて、構築しつつあるこれらの方法を活用して、「動脈硬化における過酸化脂質の分子解析と分子機構の解明」に取り組み、実際に動脈硬化症患者や高脂質血症者の血中PCOOHの解析(とくに“異性体解析”)を行う。これにより動脈硬化の発症に関わる脂質過酸化機構の解明と過酸化脂質(PCOOH)が動脈硬化の初期病変形成に深く関与することの実証を図る。また、動脈硬化におけるPCOOH関与の分子機構の解明に繋がり得る細胞実験を行う。さらに、メタボリック症候群(肥満症、等)における過酸化脂質の分子解析と分子機構の解明試験や、ヒト表皮においてどのようにSQOOHが生成されるかをSQOOHの異性体解析により解明する。このように平成28年度は、平成27年度の研究成果を基盤にして、ヒトの老化や疾病における細胞障害への過酸化脂質の関与分子機構の解明に努め、平成29年度の研究(食品成分による過酸化脂質の生成と蓄積の制御による疾病予防の可能性の評価)へと展開する。
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Research Products
(10 results)