2016 Fiscal Year Annual Research Report
疲労に抗して行動する意欲を維持する脳内機構の解明と食品によるその調節の可能性
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15H04500
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 和生 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80213148)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 動機 / 脳内自己刺激 / 脳報酬系 / 持久運動能力 / 栄養科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
I. ICSS (intracranial self-stimulation, 脳内自己刺激)を用いた疲労度測定法の最適化 ICSSのプロトコールとして、報酬電気刺激を受けるために必要なレバー押し回数が次第に増加するprogressive ratio法を用いたとき疲労負荷により応答がどのように変動するかを検討した。刺激を得るためのレバー押しを諦めた回数をブレイクポイントとするが、運動による疲労負荷で明らかな変化がなかった。対照でのブレイクポイントが低く、レバー押しへの意欲が高まっていない可能性があり、レバー押し回数増大のプログラムについて検討を要する。 III. 動機の生成/維持に対して側坐核D1およびD2受容体が果たす役割の解明 昨年度のラット側坐核シェルへのDA受容体阻害剤微量投与に引き続き、同コア部へ阻害剤を投与し、走行にどのような影響を及ぼすか検討した。側坐核でのDA受容体は1型(D1R)と2型(D2R)があり、各々に対し特異的な阻害剤であるSCH23390、およびEticloprideを投与し、走行時間を測定した。対照として生理食塩水を投与されたラットに比べどちらの薬物も持久走行時間を有意に減少した。D1R阻害の方がD2R阻害に比べより短時間で走行を停止させる傾向を示したが、統計的な差はなかった。 IV. 食品によって抗疲労・疲労回復効果が認められるものは動機の維持に寄与するか 適量のカフェインが動物の持久運動時間を延長する報告があるが、ラットトレッドミル走行で同様の結果を得た。同じ投与量でオープンフィールドでの自発行動量および回転カゴでの自発運動量が増大した。このことから、カフェインは運動する動機の形成と運動を継続する意志のどちらか、もしくは両方に影響している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
I. ICSS (intracranial self-stimulation, 脳内自己刺激)を用いた疲労度測定法の最適化:検討予定のICSSプロトコールのうちProgressive ratio法について実験を行った。ブレイクポイントの測定を行うことができることを確認したが、レバー押しの負荷回数増大のプログラムについてさらに適切な負荷曲線を検討する必要があると考えられた。また未だ例数が少なく、これについても電極設置手術の技術についてトレーニングを要する。 II. 運動負荷時の側坐核ドーパミン(DA)動態のマイクロダイアリシスによる検討:当初の計画は実行済みで、走行トレーニングを行って持久運動能力を高めた動物での応答を測定する計画を追加し、検討中である。 III. 動機の生成/維持に対して側坐核D1およびD2受容体が果たす役割の解明:コアへのDA受容体阻害剤投与について終了し、この項目での当初の計画を達成した。光遺伝学的検討についてはDA作動性神経でのオプシン発現組換えマウスについて実験に必要な規模での繁殖が可能となったため、刺激用光ファイバーの設置手術、光刺激パターン、目的神経の応答をc-fos発現で確認するなどの基礎的条件の検討を行っている。 IV. 食品によって抗疲労・疲労回復効果が認められるものは動機の維持に寄与するか:カフェイン投与について運動する動機の亢進と持久運動する意欲の維持効果を明らかとし、食品としてのカフェインに運動時の抗疲労効果がある可能性を示した。食品(成分)の抗疲労・疲労回復効果について1つを候補として示すことができたが、同様の効果を持つ食品(成分)についてさらに検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
項目IのICSSについてはさらに例数を増し、適切なプロトコールとその応用について検討を行う。本研究に従事する人員を増し、複数の視点で手術方法を見直すことで適切な実験手技を得るように改善する。 項目IIIの薬理学的検討については順調に目的が達成されたが光遺伝学的検討は若干遅れており、POMC作動性神経でのオプシン発現マウスについても繁殖の規模を大きくする。 項目IVについてカフェイン以外の有機酸投与やタンパク質投与についてさらに検討を行う。カフェインの作用機構について、骨格筋など末梢組織における作用、あるいは中枢神経系に対する作用を介するものか等を検討し、さらに知見を深める。
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