2016 Fiscal Year Annual Research Report
林木育種は人工林の遺伝的多様性をどう変化させたのか
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15H04510
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井出 雄二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (90213024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 陽子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (00302597)
内山 憲太郎 国立研究開発法人森林総合研究所, 森林総合研究所樹木分子遺伝領域, 主任研究員 (40501937)
木村 恵 国立研究開発法人森林総合研究所, 森林総合研究所林木育種センター, 主任研究員 (20436520)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝的多様性 / DNA分析 / 超高齢林 / 核SSR / SNP / 社寺林 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では静岡県天竜地域を対象に、様々な林齢のスギ人工林の遺伝的多様性を調査している。材料の収集については、平成28年度は、新たに90-100年生(以下高齢林とよぶ)の5林分のサンプリングを行ったほか、10年生2林分および300年生以上林分(以下超高齢林とよぶ)の追加的サンプリングも行った。これまでに収集したサンプルについて、SNPマーカーおよびSSRマーカーによる遺伝子型分析を昨年度に引き続き実施した。スギは、遺伝的に太平洋側、日本海側、屋久島の三系統に大別されるが、SNP分析の結果のSTRUCTURE解析および主座標分析によって、超高齢林および高齢林、すなわち天竜地域において古い時代に造林されたスギは、すべて太平洋側系統に属すことが明らかとなった。これは、天竜林業地においては、明治以前に伊勢、熊野、吉野などの産地からスギ種苗が導入されたとする記録と矛盾しない。また、これらの林分は、遺伝的多様性の面においても、既往研究における各地の天然林のそれと大きな違いはなかった。これは、これらの人工林が、十分多くの母樹からの種子によって造成されたことを示唆している。一方、林分内の個体間の近縁関係を調べたところ、超高齢林の一部にクローンや半兄弟関係にある個体の組み合わせが認められ、古い時代には、挿し木や特定母樹からの採種が、行われていたことが明らかになった。さらに、調査林分間には一定の遺伝的分化が見られ、それぞれが独立した採種源に由来することが推察された。SSR分析の結果については現在、解析取りまとめ中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、研究開始時に計画したのスギ林分からのサンプリングをほぼ終えている。また、SSRおよびSNP解析も順次、順調に行っており、一定の成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで収集した中で、サンプル林分の数が少ない100年~500年の間に位置する林分を探索し針葉をサンプリングする。それにより、静岡県天竜地域のスギ人工林の遺伝的な特徴を時系列に沿って考察することが可能となる。
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Research Products
(2 results)