2015 Fiscal Year Annual Research Report
土壌環境に触発された細根動態が駆動する土壌酸性化のメカニズムの実証
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15H04519
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
谷川 東子 国立研究開発法人 森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (10353765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 恭弘 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (60353827)
松田 陽介 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30324552)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人工林 / 土壌酸性化 / 細根 / スギ / カルシウム / ヒノキ |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木が元来の性質として土壌を肥沃にするのか、もしくは栄養を枯渇させて土壌を痩せさせるのか、という問題の解は、人類が永続的に森林を利用するために不可欠な情報である。本邦の代表的な造林樹種であるスギは、痩せて酸性度の高い土壌ではますます土壌を酸性にし、肥沃で酸性度の低い土壌ではますます養分を蓄積し酸性度を弱めること、すなわち土壌酸性度に対しスギ林は正のフィードバック効果をもつこと、さらに酸性度の高い土壌の林分で細根量が有意に高いことを先行研究で明らかにした。本課題はこの先行研究を発展させ、より広範囲に調査地を設定し、フィードバック効果の普遍性を検証すること、土壌―植物間相互作用が土壌酸性化の原因であるかを検証することを目的としている。 本年度はスギ林で肥沃で酸性度の低い土壌と痩せて酸性度の高い土壌の2グループから、温度降水環境および林分条件が類似する土壌をもつ林分を資料から抽出し、そのうちの17か所のスギ林を踏査し、林分・土壌条件に問題がないかをチェックした。最終的に7林分で調査プロットを作成し、立木位置・樹高を測定、表層土壌および土壌オーガー試料を採取した。採取した土壌試料の化学性と、オーガー試料中の細根量について、測定を開始した。 本課題では、スギと対照的な挙動をする樹種としてヒノキ林でも物質循環調査を継続している。その中では、ヒノキの活性を示すと考えられる細根呼吸量は、土壌酸性度には依存しない事が示され、ヒノキは土壌酸性に対する感受性の低さが改めて示された。 また、スギ・ヒノキの根と葉について室内培養試験を行い、分解過程で生成する有機酸等の分解産物を擬似雨で定期的に回収し、その溶存有機物特性を3次元励起蛍光スペクトルにより解析した。根は葉より分解が遅く、樹木―土壌間相互作用により土壌が痩せて細根量が増えると、森林土壌中の有機物の分解速度が変化する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった調査地数の拡大、土壌化学性・細根量の計測の開始、室内培養実験の開始について、目標を達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
1、調査地の拡大:現在のところ、痩せた土地と肥沃な土地間の細根量の差は統計的に有意ではなく、痩せた土壌を持つ林分の数が少ないことから、本年度はその調査地数の偏りや少なさを是正できるように、さらに調査地を増やす予定である。 2.土壌化学分析:設定された土壌調査地から表層だけではなく先行研究に倣って40cm深まで土壌を採取し、風乾、篩による調整を経て、pH、EC、置換酸度などを測定する。 3.根の形態分析:細根の形態は、土壌の理化学性に依存しバリエーションを持っている可能性がある。とくに極端に細い根などはその寿命や器官としての役割が変動的である可能性がある。そこで細根の形態が調査地によって異なるか否かを調査する。 4.根と葉の室内培養試験:初年度におこなってきた培養実験で得られた溶液の解析を引き続き行う。 5.根と葉の野外分解試験:スギ・ヒノキの分解速度の器官差を、実際の野外で把握するために実施している、野外におけるリターバッグ試験について、解析を継続して行う。
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Research Products
(5 results)