2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞壁を炭素源かつ反応場とした、新奇な機作によるニューカーボンの創製
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15H04525
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 幸恵 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (30301120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 継之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (90533993)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 木質科学 / バイオマス / 構造・機能材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物を>2000℃で炭化すると、細胞内腔に円錐黒鉛ウイスカ―(cone-shaped graphitic whisker, CGW)が形成される。CGWはらせん円錐状に連なって積層した1枚の炭素六角網平面から成る超分子構造である。CGWは木質では細胞壁の熱分解ガスが炭素源となり気相成長で形成されるが、このときSiCの結晶が核となり、安定な成長に適した円錐頂角を与える。反応場としての足場や微小空間がウイスカー形成にどのように作用するかを解明することを目的とした。 植物に含まれるケイ酸体も、熱処理の過程で分解してSiCとなり、CGWの核となり得ることに着目した。核としてSiCを外部添加した場合と、元来含まれるケイ酸体による場合とで、CGW形成に差異が現れるかを、スギ木部、サトウキビ茎、籾殻を試料として検討した。SiCを添加して作用させた場合、CGWの径は植物種によらず>2.1 μmとなるが、元来含有されているケイ酸体を作用させた場合にのみ0.9 μmの細径のCGWが形成された。ケイ酸体が木質に内包された構造であることが、CGWの形成機構に影響していることを見出した。 さらに本研究遂行の過程で、密度勾配遠沈法によるCGWの精製にも成功した。CGWの浮沈法密度値は、電子回折法密度によって予めCGWの基本構造(らせん円錐状超分子)構造規則性に基づく密度値より、若干小さいことが判った。溶媒中でCGWが表面構造に起因する浮力をうけて低いみかけ密度としてふるまう可能性を示唆する結果を得た。CGWの成長には足場と核を要するため、これらが必然的に不純物として生成物に混入する。CGWの基礎物性を解明し、工業的利用に向けた研究を進めるには、不純物からのCGWの分離精製は必須であり、これに向けて展開を可能にする重要な成果といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画は、①種結晶足場の調整、②マイクロ空間の調整、③他のニューカーボン創製への応用の、3つのサブテーマから成る。 初年度は主として旋回円すい炭素フィラメントの形成に関して①と②に取り組んだが、凝集体について、構造をさらに制御する必要があり、引き続き①②に取り組んだ。そこで①セルロースゲル構造体の利用も含めたナノセルロース材料を活用した各種の結晶足場形成、および水ガラス含浸、シリル化等によるSiの分散程度の異なる試料調整等をテーマに遂行しつつある。②ではセルロース膜マイクロロールの巻き径制御の方法を検討し、これをマイクロ空間として用いることを試みている。 イネ科植物など異なる植物種を利用したところ、ウイスカの形状に大きな変化が見られた。このことにより、核となる粒子のサイズが大きく寄与していることが判った。特に、サブマイクロ径のウイスカの安定的な合成が初めて可能となったことは意義深い。また、一連の観察を通して、これまで明らかでなかった成長点について、成長方向側(upgrowth)であることが判明した。 このように、未だ進行中の事項があるものの、当初の計画以上に進行した事項もあることから、(2)おおむね順調に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、セルロースゲル構造体の利用も含めたナノセルロース材料を活用した各種の結晶足場形成、および水ガラス含浸、シリル化等によるSiの分散程度の異なる試料調整等をテーマに遂行する。とくにセルロース膜マイクロロールの巻き径制御の方法を検討し、これをマイクロ空間として用いる方法で、フィラメント形成の温度に着目した生成機構の解明に取り組む。
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Research Products
(5 results)