2015 Fiscal Year Annual Research Report
木質耐火構造における燃え止まりメカニズムの解明とそれに基づく2時間耐火CLT開発
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15H04532
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
原田 寿郎 国立研究開発法人 森林総合研究所, 構造利用研究領域, 領域長 (50353818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新藤 健太 国立研究開発法人 森林総合研究所, 複合材料研究領域, 主任研究員 (10414484)
宮武 敦 国立研究開発法人 森林総合研究所, 複合材料研究領域, チーム長 (20353873)
上川 大輔 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材改質研究領域, 主任研究員 (30409651)
安藤 恵介 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (70262227)
服部 順昭 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 名誉教授 (90115915)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 建築構造・材料 / CLT / 耐火構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
CLTへの2時間耐火性能付与技術開発の第1ステップとして石膏ボード等の無機材料による被覆について検討した。60cm×60cm程度の試験体を用いた小型炉での試験の結果から、2時間耐火の構造としては、ケイ酸カルシウム板を加熱側に配置し、内側に結晶水を多く含む石膏ボードを配置し、被覆の層厚を60mm程度とする方法が最も合理的であることが明らかとなった。 被覆材料および木質構造材料の構成や厚み、物性を変化させた場合に、火災時の内部温度推移がどのようになるか予測することが可能になれば、耐火構造の木質材料に必須とされる耐火試験時の「燃え止まり」を実現するための部材の構成断面を科学的な知見に基づいて設計することができる。このため、小型炉での耐火試験を基に耐火被覆等の仕様と断熱性などの耐火性能との関係を検証するとともに、1次元の熱伝導解析により耐火試験時の部材内部温度を予測する方法を検討した。CLTおよび被覆材料からなる試験体の厚み方向の熱移動を、空間的には中央差分、時間的には4次精度のルンゲクッタ法を用いた一次元の非定常熱伝導解析モデルによる熱伝導解析を行ったところ、比較的よく一致する解析結果が得られた。 2時間耐火CLTの実用化に向けては、指定性能評価機関での実大寸法の試験体による性能評価が必須であることから、この仕様による壁での2時間耐火の実大加熱試験を建材試験センターで実施した。2時間加熱、6時間放置後も耐火性能に問題はなく、試験終了時の試験体観察においても、ケイ酸カルシウム板は、亀裂はあるものの脱落は見られず、加熱側のCLT表面も、ネジ穴を含め、炭化は認められなかったことから、2時間耐火性能を満たす性能が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱伝導解析モデルについては、小型炉を用いた実験結果に基に一次元の非定常熱伝導解析モデルによる熱伝導解析を行ったところ、比較的よく一致する解析結果が得られた。また、小型炉を用いた予備試験結果を基にケイ酸カルシウム板と石膏ボードで被覆するタイプでの2時間耐火構造の仕様を確定し、3m×3mの実大壁試験体で実証試験を行ったところ、優れた非損傷性、遮炎性、遮熱性を示し、CLTの加熱面側の表面での炭化もなかったことから、仕様の有効性を確認できた。以上のことから平成27年度の計画は達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度はスギCLTの壁構造において、無機材料ではなく難燃処理した木材でCLTを被覆することにより2時間耐火構造の性能を付与する仕様の開発を検討する。 まず、難燃処理方法の検討については、これまでのレーザによるインサイジングに変え、ドリルによる方式を採用することとし、ドリルインサイジングのパターンと注入性の関係について検討を行い、必要な薬剤量を効率的に注入できるインサイジングパターン、薬液濃度、注入条件を決定する。 次に、2時間耐火構造の性能を付与するのに必要な難燃薬剤注入処理木材への薬剤注入量並びに被覆厚さの検討を行う。難燃処理する木材はスギを予定している。この検討に際しては、60cm×60cm×15cmのCLT試験体の上に、難燃処理したラミナを被覆した試験体を作製し、森林総合研究所にある小型試験炉を用いたISO834の加熱温度に従った予備的な2時間加熱試験(その後8時間程度放置)を行い、CLT本体が炭化することなく、試験体が燃え止まる仕様を決定する。難燃処理木材の被覆方法については、ラミナの積層方法についても検討を行う。難燃処理木材のCLTへの固定はビス留めを予定しており、そのための留めつけ方法についても合わせて検討する。 以上の結果を踏まえて、難燃処理木材を被覆したCLTの壁構造について、2時間耐火構造の仕様を決定するとともに、3m×3mの実大寸法の壁試験体を作製し、指定性能評価機関の壁炉を用いて2時間耐火の載荷加熱試験を行い、耐火性能を検証する。 29年度については、28年度の結果を踏まえ、床構造での2時間耐火構造の仕様について検討を行い、実大試験での実証試験を行う予定である。
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Research Products
(2 results)