2015 Fiscal Year Annual Research Report
キンギョヘルペスウイルスに対する耐病性機構の解明による選抜育種バイオマーカー開発
Project/Area Number |
15H04544
|
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
佐野 元彦 東京海洋大学, その他部局等, 教授 (00372053)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 崇 東京海洋大学, その他部局等, 教授 (40313390)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | キンギョヘルペスウイルス / 耐病形質 / ウイルス増殖促進因子 / ウイルス増殖部位 / ウイルス侵入門戸 / 耐病の遺伝性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ウイルス感染・増殖促進する標的組織成分とその作用機序の特定:腎臓抽出液のウイルス増殖促進効果について、耐病系統と感受性系統で差違があるのか調べたるため、両系統魚の腎臓抽出液と尾鰭の培養細胞を作出した。感受性系統由来細胞の方が耐病系統由来細胞よりも10倍程度感受性が高かった。また、腎臓抽出液の添加効果をこの鰭細胞で調べたところ、いずれの組み合わせにおいても同程度のウイルス増殖促進効果が認められた。このことから、このウイルス増殖促進物質が直接的に耐病性と関わっている可能性は低いと判断された。 2)トランスクリプトーム解析による発現遺伝子の解明:耐病系統と感受性系統を供試し、ウイルス浸漬感染後の魚体内ウイルス動態を定量PCR法により経時的に調べたところ、感受性魚では鰓や鰭という体表組織での一次増殖がまず起こり、ついで標的器官である腎臓などでの増殖が起こって死に至った。一方、耐病系魚ではこの一次増殖部位での増殖が少なく、標的臓器でもウイルスが増えないことが分かった。以上のことから、耐病系魚では、一次増殖部位での増殖が少なく、その結果、血流で標的細胞に運ばれるウイルス量も少ないことに加え、腎臓等の標的細胞の感受性が低いことから、相乗的にウイルスが魚体内で増殖することなく、耐病性を示すと考えられた。 3)単離される耐病性候補遺伝子の耐病形質との相関性の解明:昨年度に作製した耐病成魚×感受性魚の交配稚魚(F1)を用いたF1×F1によるF2稚魚およびF1×感受性魚の戻し交配稚魚を作製しウイルス感染による死亡率を調べたところ、F2稚魚では約20%、戻し交配稚魚では約50%の死亡が認められた。このことから耐病形質は、メンデル遺伝し、優性形質を有することが判明した。また、♂耐病性魚×♀3倍体クローンギンブナとの4倍体雑種交配では、2交配群の作製に成功したがウイルス感染後の耐過魚は得られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)本課題では、標的である腎臓の抽出液中のウイルス増殖促進物質に注目していたが、耐病系と感受性系の魚から準備した抽出液と鰭由来細胞の組み合わせによる試験から、この物質が直接的に耐病性と関わっている可能性は低いことが判明した。当初の作業仮設が否定されたが、これによる課題進行の遅滞はなく、細胞の感受性の違いの方が大きいことが判明してきたので、今後、この解析に重点を置くこととする。 2)耐病系統と感受性系統を供試し、浸漬法と注射法によるウイルス感染後の魚体内ウイルス動態を定量PCR法により経時的にウイルスDNAコピー数を計測したところ、耐病性形質の発揮においては、ウイルス感染直後の一次増殖が重要であり、加えて標的細胞の感受性が重要と推察され、次年度のトランスクリプトーム解析の時期と部位を絞り込むことができ、計画通り順調に進行している。 3)計画通りF2稚魚と戻し交配稚魚での感染実験による形質の判定を実施でき、耐病形質は、メンデル遺伝し、優性形質を有することが判明し、予想以上にクリアーなデータが得られ、順調に耐病形質の解明進んでいる。また、♂耐病性魚×♀3倍体クローンギンブナとの4倍体雑種交配では、計画通り作出して感染実験を行ったが、全数死亡し、目的とする耐過魚が得られなかった。3倍体の染色体に1つの染色体を耐病魚から持ち込んだ交雑魚はすべて弱い可能性が濃厚であるが、その判定を下すには交配数が少ないことから、慎重を期して再度交配数を増やして確認する予定とするが、計画の遅滞にはならない。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)耐病形質とウイルス増殖促進物質の関連性に注目したが、当初の作業仮設が否定されたが、これによる課題進行の遅滞はなく、細胞の感受性の違いの方が大きいことが判明してきたので、今後、耐病性魚と感受性魚における細胞のウイルス感受性の差違の解析に重点を置くこととする。 2)計画通り進行しており、本年度の試験結果から次年度のトランスクリプトーム解析の感染後の時期と部位を絞り込むことができたことから、鰓と体表におけるウイルス感染直後の一次増殖を主な解析ターゲットとして実施する。 3)順調に耐病形質がメンデル遺伝し、優性形質を有することが判明したことから、F2稚魚あるいはF1×感受性魚の戻し交配稚魚を人為感染させ、死亡魚と生残魚の遺伝的特性をゲノムあるいは発現遺伝子の多型から解析する。また、♂耐病性魚×♀3倍体クローンギンブナとの4倍体雑種交配では、交配数が少ないことから、慎重を期して再度交配数を増やして確認する予定とする。
|
Research Products
(6 results)