2016 Fiscal Year Annual Research Report
原子力災害被災地における「帰還と復興をめざす地域づくりモデル」の構築
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15H04553
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
守友 裕一 福島大学, 経済経営学類, 特任教授 (20166424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 知未 北海道大学, 農学研究院, 講師 (30634977)
林 薫平 福島大学, 経済経営学類, 特任准教授 (30739355)
小山 良太 福島大学, 経済経営学類, 教授 (60400587)
則藤 孝志 福島大学, 経済経営学類, 特任准教授 (80739368)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原子力災害 / 地域復興 / 復興の第二ステージ / 内発的発展論 / 避難地域 / 農山村地域経済 / 帰還 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は原子力災害からの帰還と復興へと向かう福島県を対象として、これまでの除染や放射線低減対策のステージを超えて、暮らしとコミュニティの再生を実現するという、新しいステージに求められる地域づくりを構築することを目的にしている。具体的には、原子力災害復興のフロンティアとして、復興への道をめざしてきている地域を対象として、復興の動きを整理・体系化し、地域復興の指針となる「内発的な地域づくりモデル」の構築を目指すこととしている。この地域での帰還と地域復興が成功するかどうかは、福島県全体として、今後の原子力災害からの地域復興をめざす試金石となる。 こうした課題を念頭に置き、平成28年度には次の内容で調査研究を行った。 飯舘村においては、住民とともに行った除染後農地の放射線測定、作物の試験栽培、農地管理などについて、その結果の整理を行い、また住民とともに地域づくりの先進地域調査を行ってきた。地域のコミュニティ再生の一環としての「暮らしの記憶誌」の作成にも協力してきた。伊達市小国地区においては、「放射線からきれいな小国を取り戻す会」や新たに配置した復興支援員とも協力して、新作物の導入試験や直売所での販売の可能性についての調査研究を行った。南相馬市原町区・小高区においては現地の農業者の水田再生事業、作付実験、ナタネのバイオマス的活用などの調査研究を行ってきた。二本松市東和地区では、直売所、農家民宿の動向に加え、里山・森林資源のバイオマス的活用について調査研究を行ってきた。葛尾村では一部帰村が進む中、農業再生のための地域計画の策定、農業公社の設立などについて調査研究を行ってきた。田村市都路地区において営農再開地域の条件の検討整理と森林資源の活用について調査研究を行ってきた。 さらに国際的比較という視点からイギリスにおいて社会的企業や農村の再生事業とその担い手について調査を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) 研究代表者、研究分担者、連携研究者は、協同もしくは個別に、研究計画上策定した調査地域をたびたび訪れ、地域住民の協力の下、調査研究を順調に進めてきた。それぞれの地域で地域住民の持つ経験的な力と大学側の科学的知見とが比較的うまくかみ合い、地域から信頼される中で参与観察を進め、調査研究を進展させてきた。 こうした信頼関係を基礎に、作付制限解除に向けた実証実験、農地維持のための共同耕作、景観作物の作付、新作物導入の調査検討、ナタネや里山資源のバイオマス的活用の検討が進められ、そこからの理論的整理を進めている。 また「営農再開ビジョン」の策定への協力、道の駅・農産物直売所の計画へのアドバイス、「暮らしの記憶誌」の作成協力も行ってきた。こうした地域住民と一体となった活動から、地域の農業をはじめとする産業とコミュニティの再生に関する知見を得て、その理論化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度において調査研究の対象とした6地域を中心に、各地域を比較して、産業とコミュニティの再生に関する調査検討を進めていく。また国際的な視点を入れて、イギリス等の農村の再生の担い手のあり方、社会的企業等について調査検討も行って行く。 調査研究は、参加・協議の場づくり(住民組織、事業者団体、NPO、社会的企業等)、人づくり(人材発掘、確保、育成等)、ものづくり(農林漁業、6次産業化、資源管理・活用等)に視点をあてて行っていく。 農山村のコミュニティの存立基盤である人的管理と環境資源のそれぞれについて災害以前の状況、復旧に関わる除染・放射線対策・吸収抑制対策の新局面、帰村者の人口動態、生活実態、必要な外部支援のあり方などの観点から、新しいステージに入った地域復興のあり方を構造的、総合的にとらえて、その方向性について提起していく。 本年度は3カ年計画の最終年度であり、以上を踏まえて、原子力災害被災地における内発的な地域づくりのモデルを構築する。
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Research Products
(18 results)