2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H04567
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
平松 研 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90271014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 健夫 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (70391638)
吉山 浩平 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 助教 (90402750)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脱窒 / 水田 / 農業排水路 / 酸化還元電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
一宮市を流れる大江農業排水路を調査地に設定し,同排水路の下流,中流,上流部に存在する魚溜り(A・G・K)を対象にし,それぞれのポイントで6~10月の期間に河川水と底質とコアサンプルを,11月は沈降粒子を採取した.河川水は窒素化合物濃度の測定,底質は全窒素・有機物濃度の測定,コアサンプルは脱窒フラックス・窒素溶出フラックスの測定,沈降粒子は窒素・有機物沈降フラックスの測定にそれぞれ用いた.測定値より,大江排水路における脱窒特性を評価し,魚溜り内の窒素の動きを量的に換算した.排水路の河川水の窒素濃度は6~8月は比較的低い値で推移したが,9~10月には増加が見られた.これは灌漑期である6~8月に水量が多くなり窒素が希釈されたこと,9~10月は灌漑期を過ぎて水量が減ったため窒素濃度が高くなったと考えられた.脱窒フラックスは平均13.79mg-N/m2/dであり,単位面積当たりの脱窒フラックスとしては干潟などより高いポテンシャルを持っていることが明らかとなった.脱窒フラックスは河川水の硝酸性窒素の濃度が濃い場所でより高い値を示した.よって大江排水路の脱窒において硝酸性窒素は重要な制限要素となっていると思われる.また,脱窒速度測定中には底質からの窒素溶出による河川水の窒素濃度の若干の増加が見られた.これは脱窒による溶存窒素減少よりも懸濁態窒素などの分解による溶存窒素増加のほうが多い可能性があると考えられる.窒素の沈降フラックスは平均5201.07mg-N/m2/dであり,魚溜り内の窒素の動態の重要な要素の一つになっていることが分かった.水田における脱窒制御についても実験を継続しているが,データの欠測により明確な判断が出来ない状況であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水田ポットによる実験は季節的な影響を受けるため,今回の実験の欠測に対して補完的な実験を行うことが出来なかったが,次年度に実施する実験における問題点などを洗い出すことに有効であった.また,農業排水路における脱窒速度や物質収支については一部ではあるものの脱窒の効果が明確になり,農業排水路の浄化能についての知見が得られた.一方で,DNAの分析はやや遅れており,DGGEによる分析もバンドが明確でないため,プライマーや設定条件の改良を試みている状況にある.
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には以下に示す当初計画を遂行するものとする. 対象とする排水路および周辺水田域において水質,発生気体中の窒素濃度および亜酸化窒素濃度,セディメントの物理化学特性を測定する.また,現地踏査により窒素負荷のデータを収集する.不攪乱サンプルはインキュベータ内で静置し,酸化還元電位,水質とともに脱窒速度を測定する.この他に,脱窒を律していると考えられる硝酸や有機物を添加し,その差異を検討する.さらに気相をアルゴン置換した後,アセチレン阻害法を用いるものと,用いないものの2通りの実験を行い,亜酸化窒素排出に寄与する割合を検討する. セディメントからDNA を抽出し,PCR 増幅,DGGE による電気泳動を行い,脱窒菌群集構造を明らかにする.また,検出したバンドを単離した上で塩基配列を確認し,種の同定を行う.real time PCRを用いて脱窒菌のDNA 定量を行う.塩ビ製ポット内で水稲を栽培し,脱窒速度の時間変化を計測する.ポットの電位条件は,MFC の回路を接続したもの,しないもの,さらには外部から荷電させるものに分ける.また,土壌の窒素,有機物などの含有量の差異についても検討する.炭素源の条件は前述の土壌条件の他にメタノール添加の有無などを加える.酸化還元電位や水温などはセンサーで継続的に測定し,水質,土壌特性,脱窒菌特性,発生気体については1 日毎,さらには一部,集中的に1 時間毎の計測を行う.平成27年度の実験の問題点を中心に改善を図る. 新たに検討する内容としては,購入したGC-BIDを活用し,いくつかの条件の異なる水田で脱窒量を測定し,その差がどの程度であるのかを確認するとともにその理由を探ることを試みる.
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Research Products
(4 results)