2016 Fiscal Year Annual Research Report
Multifaceted and exhaustive analysis of the reaction mechanism of the plant by the environment control for the establishment of the cultivation method of high functional vegetables
Project/Area Number |
15H04574
|
Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
小川 敦史 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (30315600)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 光二郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10325938)
曽根 千晴 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30710305)
野下 浩二 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (40423008)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 植物工場 / 農業工学 / メタボローム解析 / トランスクリプトーム解析 / 機能性野菜 / 光合成 / ジャスモン酸 / アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
光環境制御による植物の生育を評価するために、対照区(蛍光灯)、赤青混合光1区(赤50%:青50%)、赤青混合光2区(赤25%:青75%)の光条件下でリーフレタスを水耕栽培した。 赤青混合光1区で栽培した場合、赤青混合光2区や対照区よりも同じ光強度下で光合成速度が低くなる傾向があった。播種後3週間目まで同一の対照光下で栽培し、その後赤青混合光1区もしくは赤青混合光2区に移動させたレタスにおいて、赤青混合光1区では葉のクロロフィル蛍光(最大量子収率(Fv/Fm))が赤青混合光2区に比べて減少した。 代謝物質の網羅解析であるメタボローム解析を行った。その結果、162(カチオン110、アニオン52)の代謝物質のピークが検出された。全162のピーク面積中、対照区と赤青混合光1区との間で有意な変動を示した代謝物質は8、対照区と赤青混合光2区との間で有意な変動を示した代謝物質は9、また、赤青混合光1区と赤青混合光2区との間で有意な変動を示した代謝物質は3であった。 同サンプルを用いて、トランスクリプトーム解析を行なった。全サンプルより得られた約45.8億本の配列データから低品質のデータを除き、最終的に398598708本の高品質リードを用いてTrinityプログラムによるde novo アセンブルを行なった。重複配列等を除き、96808遺伝子(119798転写産物)が得られた。3条件間で発現比の異なる遺伝子を調べた結果、青色光の割合が増えるに連れて、抑制される遺伝子が多かった。それぞれ4倍以上の発現比を示した発現変動遺伝子(DEGs)は195個見つかった。このうち、コントロールに対し、青色光の割合が高い条件で発現が誘導されたDEGsが27個見つかった。 カイワレダイコンにジャスモン酸メチルを処理した結果、ヒスチジンなど数種のアミノ酸が通常の1.5~3倍程度に増加することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では植物工場における高機能性野菜の栽培法の確立に向けて、環境制御による水耕栽培葉菜の反応メカニズムを明らかにすることを目的している。この目標を達成するために、実際の植物工場での実用化を視野に入れた栽培学的研究に、植物生理学、代謝生理学 、分子生物学、という基礎研究の知見を加えた「多面的」側面から、基礎研究分野で用いられている「網羅的解析」技術を加え、環境制御による高機能性野菜栽培法の確立に向けたメカニズムの解明を行う。 今年度までの研究において、異なる光条件下でのレタスの生育の差を明らかにし、またその時の生長に関わる光合成特性における知見を得た。さらに植物体内での光条件に対する反応機構を網羅的に理解するために、遺伝子発現の網羅的解析であるトランスクリプトーム解析、植物体内の代謝物質の網羅解析であるメタボローム解析を行った。その結果光環境の変化に応答する候補遺伝子や代謝物質の特定に至っている。また植物ホルモン処理によるアミノ酸含有量の変化を確認し、高付加価値野菜の栽培法の確立への基礎的知見を得た。 このように現時点で研究目的の達成のために研究計画は順調に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)代謝物質の変動解析 前年度、代謝物質の変動を網羅的に解析できるメタボローム解析を用いて,異なる光条件下での約260種類の代謝物質の変動の差異を網羅的に解析し、顕著に変動を示す数種の物質を特定した。その結果を元に本年度は、顕著に変動を示した物質に注目し、植物ホルモン処理および光環境制御条件下における変動を明らかにする。各物質の定量は、液体クロマトグラフィー・質量分析計(LC-MS-MS)を用いて行う。 (2)発現変動または代謝物質の変動に注目した詳細な遺伝子発現解析 光環境の違いによる植物の反応メカニズムをより詳細に明らかにするために,前年度までに行ったトランスクリプトーム解析において特異的に発現変動が見られた遺伝子、またメタボローム解析において特異的に変動が見られた物質に関与する遺伝子,それぞれの発現変動に着目して、さらに詳細に発現量の変化についての解析をRT-PCR法またはReal time PCR法を用いて行う。 (3)植物ホルモン含有量の変化の検討 植物の生長には植物ホルモンであるオーキシンとサイトカイニンが、ストレスに対してはアブシジン酸が関与していることが明らかになっている。植物体中の各種植物ホルモン含有量変化を測定し、生育に与える影響について考察する。生育段階において経時的にサンプリングした葉身における、オーキシン(IAA)、サイトカイニン(ZR、IPA)、アブシジン酸(ABA)含有量をLC-MS-MSを用いて同時測定し、定量する。
|
Research Products
(10 results)