2016 Fiscal Year Annual Research Report
苗生産におけるバイオマス分配を介した生態的トレードオフの解明と環境制御への応用
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15H04575
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
渋谷 俊夫 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50316014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 良輔 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (10409146)
大山 克己 大阪府立大学, 地域連携研究機構, 特任准教授 (20456081)
松田 怜 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20547228)
植山 雅仁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (60508373)
東條 元昭 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (90254440)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 成長モデル / バイオマス分配 / ストレス抵抗性 / 複合影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究成果において,遠赤色光に対する赤色光の割合(以下,R/FR比)の高い光照射下で育成した植物は育成中の生育は遅れるが,その後の生育が促進される可能性が示された.そこで,異なるR/FR比で育成した植物を強光条件下に移したときの成長特性を詳細に調べた結果,高R/FR比で育成した植物は低R/FR比で育成したものよりも相対成長速度が大きくなり,これは高R/FR比で育成した植物における葉面積あたりの同化速度が強光下で高いことに由来することが明らかとなった.次に,複合的な環境制御下におけるバイオマス分配と生態的トレードオフを解明することを目的として, R/FR比と水蒸気飽差(以下,飽差)の交互作用が植物の伸展およびバイオマス分配に及ぼす影響を調べた.その結果,茎の伸長と葉の展開は,R/FR比および飽差がそれぞれ低い場合に大きくなったが,その傾向は茎と葉で異なった.茎の伸長に及ぼすR/FR比の影響は低飽差下で大きくなった一方で,展葉については,R/FR比の影響は低飽差下で小さくなった.その原因について,植物体内におけるバイオマス分配に注目すると,伸展成長が大きくなる低R/FR比・低飽差条件では,シュートを伸長させるために,茎への光合成産物の分配割合が大きくなった一方で,葉への分配割合が減少していた.このような茎と葉との間のバイオマスの競合がR/FR比と飽差の交互作用が茎と葉で異なる理由と推察された.さらに,飽差,CO2濃度,根圏水ポテンシャルが成長および光合成特性に及ぼす影響を調べたところ,3要因の間に複雑な交互作用が認めら,飽差が植物成長におよぼす影響には,水分損失に対する能動的な植物応答が大きく関わっていることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物の成長特性に及ぼす光質と湿度の交互作用,湿度,CO2,根圏水ポテンシャルの交互作用が明らかとなった.これらは学術的にも新規性の高い知見であり,それぞれ国際誌に投稿中である.植物のバイオマス分配を介したトレードオフ関係を明らかにするための考え方は十分に整理され,学術的にも新規性の高い成果が得られていることから,概ね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
光質と湿度の交互作用については,学術的にも価値のあるデータが得られており,新しい展開が期待されることから,そのメカニズムを明らかにするための実験を行う.次年度の研究計画にある環境制御のトレードオフについては,アイデアは整理されており,次年度初頭から実施できる見込みである.
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Research Products
(5 results)