2017 Fiscal Year Annual Research Report
ベクター媒介性感染症におけるベクター唾液の役割の解明
Project/Area Number |
15H04588
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
加藤 大智 自治医科大学, 医学部, 教授 (00346579)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乙黒 兼一 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (40344494)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 吸血昆虫 / 唾液 / サシチョウバエ / サシガメ |
Outline of Annual Research Achievements |
病原体の侵入口は“病原体と宿主防御機構の最初のせめぎ合いの場”で、そこで繰り広げられるイベントとその結果は、病態に大きな影響を及ぼす。本研究では、ベクター媒介性感染症の感染局所で繰り広げられるイベントについて、ベクター唾液成分が宿主の生理機能や免疫機構、病原体の感染に及ぼす影響を解明する。本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)コロニーの樹立に成功したアジアに分布する吸血性サシガメTriatoma rubrofasciataの唾液腺遺伝子転写産物について、詳細な比較バイオインフォマティックス解析を行い、その構成を明らかにした。また、Triatoma属、Panstrongylus属、Rhodnius属など他のサシガメの唾液との比較解析を行った。 2)Panstrongylus chinaiの唾液腺遺伝子転写産物の詳細な解析を行い、その構成成分を明らかにした。また、唾液タンパクの70%程度を占めるリポカリンファミリーについて、より詳細な解析を行った。この結果、Panstrongylus属の唾液成分は、Rhodnius属よりもTriatoma属に近いことが明らかになり、また、分子レベルでもTriatoma属と類似したものが主要成分であることが分かった。 3)アジア、アフリカに広く分布するサシチョウバエPhlebotomus papatasiおよびP. duboscqiのコロニー確立に成功した。現在、感染実験を念頭に、人工吸血系の確立を試みている。 4)サシチョウバエおよびサシガメの唾液成分の組換えタンパクを作製し、それらが血液凝固に及ぼす影響を検討した。血液凝固系を阻害するタンパクがいくつか見つかってきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロニーの樹立に成功したアジアに分布する吸血性サシガメTriatoma rubrofasciataの唾液腺トランスクリプトーム解析、その中から多数の新規物質を同定することができた。これまでとは異なる次世代シークエンスを用いた解析で、膨大なデータ量を得ることができた。また、Panstrongylus chinaiの唾液の構成成分を明らかにし、主成分のリポカリンファミリーの詳細な解析を行い、結果は2報の論文として発表した。本研究は、Panstrongylus属のサシガメで2種目の唾液成分の報告で、Panstrongylus属サシガメの唾液要素や、それぞれのタンパクの二次構造はRhodnius属よりもTriatoma属に近縁であるこが明らかになった。一方、サシガメの唾液成分は属ごとに特徴的な構成をしており、属によって異なる吸血戦略を持つことが示唆された。サシチョウバエおよびサシガメの個々の唾液成分については、継続して生理活性の解明を行っている。また、サシチョウバエのコロニー飼育に日本で初めて成功し、今後は唾液成分のin vivoでの解析や、唾液がリーシュマニア感染に及ぼす影響についての研究の進展が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)唾液腺比較トランスクリプトーム解析 これまでに得られた吸血性サシガメの唾液腺遺伝子転写産物の比較解析を行う。 2)ベクター唾液成分が宿主の生理機能に及ぼす影響の検討 大腸菌発現系を用いて組換えタンパクを作製し、サシチョウバエやサシガメの唾液成分が、血小板凝集、血液凝固系、血管収縮、炎症メディエーターに及ぼす影響を検討する。 3)ベクター唾液成分が原虫感染に及ぼす影響の検討 サシチョウバエの唾液成分が、リーシュマニア原虫の感染に及ぼす影響を検討する。
|
Research Products
(20 results)