2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H04602
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西垣 一男 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (20401333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 在子 山口大学, 共同獣医学部, 助教 (20548622)
鳩谷 晋吾 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (40453138)
久末 正晴 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (80333144)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 内在性レトロウイルス / 進化 / FeLV / 家猫 / 家畜化 / ネコ科動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
内在性レトロウイルス(ERV)は、太古のレトロウイルス感染症の名残である。ヒトや哺乳類の染色体ゲノムには8-10%前後のERVが占めており、宿主と共にERVは共進化している。本研究の目的はERVがどのようにして、宿主に潜り込み、ウイルスの内在化を達成することができたのか?また、内在化したERVが宿主においてどのような機能変化を起こしているのか?あるいはどのような方法で機能変化に達したのかを明らかにする。また、自律増殖能を示すERVの性状や新たな自律増殖能を示すERVの同定を行う。研究は家猫をモデルにERV-DCという内在性レトロウイルスに焦点を置き研究を行った。 「1」ERV-DCのウイルス発現とその発現量を明らかにするために、定量および定性RT-PCR法を開発した。この方法を用いて、正常な家猫の各臓器の発現量を比較検討を行ったところ、まず、ERV-DCは生体内で様々なところで発現していることが明らかとなった。発現量は、末梢血液において高いことが判明した。この発現系の開発によって、新たに自律増殖することができるERV-DCの同定を行った。このERV-DCはFISH解析法によって、C1q32の猫染色体に位置して猫において遺伝していることが判明した。電子顕微鏡観察によって、ガンマレトロウイルスの形態を示すことが明らかとなった。 「2」ERV-DC7およびERV-DC16のenv遺伝子がコードする蛋白質はRefrex-1として知られ、抗ウイルス活性を示す。このRefrex-1がどのようなメカニズムで、宿主遺伝子へと変化したのかを調査した。その結果、ウイルスがRefrex-1へと変化した方法は、家猫集団内に固定化された過程において、Envの開裂およびウイルス粒子への取り込み不全を引き起こすアミノ酸変化が生じた。また対立遺伝子座間における組換えが重要な役割を果たしたことが明らかとなった。これがERV-DCがRefrex-1に変化したメカニズムである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では自律増殖能を示す、新規ERV-DCを明らかにし、この内在性レトロウイルスの同定と性状の解析を、順調に進めてきた。また、ERV-DCの受容体を同定する実験を開始し、ERV-DCの候補遺伝子をいくつか単離した。これらの研究について当初の予定通り、実験計画書と研究のロードマップに記載した通りに進んでいる。特に、Refrex-1という家猫に存在する抗ウイルス分子へ変化を遂げたERV-DCについて、どのように宿主の遺伝子へ変化したのかを明らかにすることができた。この研究についてはウイルス学の専門紙雑誌上に公表することができた。さらに、当初の予定にはなかったが、ERV-DCと同じガンマレトロウイルス属に含まれる猫白血病ウイルス(FeLV)の新たなウイルス干渉群を示す、FeLV-Eというウイルスを発見した。FeLVはしばしばERV-DCと遺伝子の組み換えが生じ、新たなFeLVが出現していることが明らかになっている。FeLV-Eのウイルス性状解析を行い、論文として公表した。以上より、平成27年度の研究計画は順調に進んでおり、また、新たなウイルスの発見と発表を行ったことから、これまでの進歩状況は「当初の計画以上に進展している」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
「1」自律増殖ウイルスの同定と性状解析:自律増殖ウイルスの性状解析を進めるが、現在蔓延している外来性レトロウイルスとERV-DCのような自律増殖能のあるウイルスがどのような点で異なるのかを調べる。つまり、太古のレトロウイルスと現在のウイルスを比較して、何が違うのかを明らかにする。「2」ERV-DCのウイルス受容体の同定と単離:平成27年度からスタートしており引き続き行う。RH hybridcellsを用いて、受容体の染色体上の位置を統計学上に推定する方法である。カリフォルニア大学のDr.Smithの協力のもと進める。 「3」ERV-DC野転写発現調節メカニズムの解明:ERV-DCのプロモーター活性とメチル化状況を調べる。生体内でどのような発現制御になっているのかを解明する。 「4」ERV-DCとネコ科動物との共進化の解析:ネコ科動物におけるERV-DCの遺伝子を単離し、家猫の場合に見られるものと系統を比較し、ERV-DCとネコ科動物の共進化について調査する。 「5」Refrex-1の機能遺伝子への変化の解明:引き続き、Refrrex-1がどのようにして、宿主の遺伝子に変化したのかを、その道程を解析する。また、Refrex-1のウイルスとしての機能放棄をしている個所を中心に解析を行い、古代レトロウイルスの不活性化メカニズムを明らかにすることによって、ウイルスの宿主遺伝子への変化の過程を明らかにする。 「6」ERV-DCの家猫系統における保有率の調査:ERV-DCはどのようにして家猫にやってきたのか、その祖先を探求するとともに、どのようにして家猫に内在化したのかを解明する。
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Research Products
(3 results)