2015 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の摂食行動を調節する脳神経ペプチド連関図の作成とネットワーク評価系の基盤解析
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15H04609
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 晋治 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40345179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 摂食行動 / ペプチドホルモン / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
生物で広くみられる栄養分選好性摂食(Self-selection)は、1938年に提唱されて以来、分子レベルでは未解明な現象とされている。このような現象は内分泌系、すなわちホルモンとお代謝系により制御されていることが知られている。ところが、複数のホルモンがネットワーク構造を形成し制御調節していることが示唆されている。ところが、その分子レベルの解析はこれまで行われていなかったため、本研究では、以下の3点を進めることを計画した。 (1) 摂食行動に関わる脳神経系ホルモンネットワークの連関図を完成。(2) 摂食行動に関わる脳神経ホルモンのネットワーク分析法(評価系)を確立する。(3) 体内外の刺激により摂食行動が修飾される際のネットワーク変化を分析する。 平成27年度の成果を上の(1)から(3)に沿って、以下の通りに記す。 (1)、(2)まず、モデル生物としてカイコを用いた。カイコ幼虫の脳-食道下神経節-前額神経球の局所神経回路内の神経分泌細胞が摂食中枢であることは以前の研究から明らかにしていたので、そこにある単一細胞由来のcDNAを用いPCRで発現しているホルモン類及び受容体を確認している。現在、全単一細胞の解析は終わっていないが、幼虫体内の組織別の発現解析がまもなく終了する段階である。 そのため、ホルモン―受容体でつなげた連関図の作成、およびネットワークを評価する系がまだ完成していない。 (3)一方、ホルモンネットワーク解析が可能となった後に、分析するための行動解析プラットフォームは、フタホシコオロギを用いることで完成するに至った。これを用いることにより、長時間観察から選好性などの分析が容易に可能となった。また、この昆虫種は非モデル生物種であるため、次世代シーケンサーによるホルモンおよびその受容体の網羅的な解析がほぼ完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度の計画は、以下の3点に区分しており、それぞれの進捗状況を以下に記す。 (1) 摂食行動に関わる脳神経系ホルモンネットワークの連関図を完成:やや遅れている。カイコ幼虫の摂食中枢である脳-食道下神経節-前額神経球の内分泌細胞を酵素消化により単一細胞化、cDNAの増幅、PCRにてホルモン類や受容体の有無を細胞毎に確認するに至っているが、標的としている細胞全てに対しての分析が終了していない。 (2) 摂食行動に関わる脳神経ホルモンのネットワーク分析法(評価系)を確立する:やや遅れている。ペプチド性因子はMALDI-TOF MSを用いて半定量解析ができるようになっており、カイコ1頭の脳由来の抽出物で比較定量が行えるようになっている。一方、受容体の分析などが遅れているため、ネットワーク連関図作成に必要な全転写物の分析は終わっていない。 (3) 体内外の刺激により摂食行動が修飾される際のネットワーク変化を分析する:おおむね順調に進んでいる。ネットワーク解析と共に行う、個体の行動、及び体内の腸管蠕動運動などの解析は、Image Jを基礎としたソフトウェア(行動にはTracking、蠕動運動にはKymograph)が可能となった。現在、Protocolを改善中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の計画は、平成27年度に遅れた分を加味して、以下の3点に区分に対し以下に記す。 (1) 摂食行動に関わる脳神経系ホルモンネットワークの連関図を完成:カイコ幼虫およびフタホシコオロギの摂食中枢である脳-食道下神経節-前額神経球の内分泌細胞を酵素消化により単一細胞化、cDNAの増幅、PCRにてホルモン類や受容体の有無を細胞毎に確認する。局所神経回路に存在する内分泌細胞に対しホルモン―受容体の連関図をいち早く完成させ、ネットワークの基礎を作る。 (2) 摂食行動に関わる脳神経ホルモンのネットワーク分析法(評価系)を確立する:ネットワーク連関図作成に必要な全転写物の分析を行う。なお、ネットワークの評価系を確立するに当たり、当初の計画には無かったが、部分ネットワーク構造の評価系をパイロット実験で、モニターしてみる。 (3) 体内外の刺激により摂食行動が修飾される際のネットワーク変化を分析する:行動解析や選好性の簡便化とハイスループット化を見据えて改善していく。
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Research Products
(13 results)