2016 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of epigenetic enzymes via nitrosative stress and development of its specific modulator
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15H04649
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
上原 孝 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00261321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 昭博 国立研究開発法人理化学研究所, 主任研究員研究室等, 専任研究員 (40391859)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 一酸化窒素 / メチル化 / ニトロシル化 / レドックス / システイン |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAメチル基転移酵素(DNMT)はエピゲノムに関わる重要な酵素である.この作用様式を調べたところ,酵素活性にはシステイン残基が重要であることが報告されていた.そこで,本システイン残基が一酸化窒素(NO)の標的になる可能性を推定した.ビオチンスイッチ法を行ったところ,DNMT1, 3A, 3BともにNOの濃度依存的に活性中心システインがS-ニトロシル化(酸化)されることがわかった.また,この反応には細胞質タンパク質であるGAPDHによるトランスニトロシル化が関与していることを明らかにした.DNMTは酸化修飾によって,酵素活性が著しく低下することを見出した.次に,NOによって発現が上昇する遺伝子のプロモーター部のメチル化を検討したところ,NO処理によってメチル化が消失することがわかった.以上より,DNMTはレドックス,とくにNOによって活性が調節され,これが遺伝子の転写レベルに影響を及ぼすことが明らかとなった.この成果をさらに発展させ,酸化抑制薬の開発に着手した.DNMTの活性中心システインを直接の標的にすると,酵素活性自体が阻害されてしまう可能性がある.そこで,目的化合物は酵素活性には影響せずに,Sーニトロシル化のみを選択的に阻害するものを候補とした.DNMT3Bの構造を利用してin silicoスクリーニングしたところ,対象となる400万化合物ライブラリーから,上位100種を選定した.それらについてSーニトロシル化阻害能を検討した結果,有力な化合物の単離同定に成功した.本化合物は,NOによるDNA脱メチル化を濃度依存的に回復させることを確認した.また,DNMT3Bに特異的に作用し,IC50値は100 nano M以下であった.現在,本化合物のガン形成抑制効果を細胞や動物レベルで解析しており,さらに,最適化を目指すべく誘導体の作成に取り組んでいるところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
DNMTが一酸化窒素によって酸化修飾され,酵素活性調節に関与していることを初めて明らかにすることに成功した.この調節はおそらく定常状態においても機能し,遺伝子の転写に重要な働きをしていることが予想された.一方,これまでのNOの病態生理的役割から,過剰量あるいは慢性的な暴露によって,プロモーターCpGのメチル化が抑制されることで遺伝子制御機構が破綻し,疾患発症が惹起される可能性を示唆する結果であった.これらのことを確認するために,薬理学的なアプローチが有効であると考え,in silico スクリーニングを遂行し,分子特異的Sーニトロシル化阻害薬の単離に成功した.このような標的特異的なSーニトロシル化阻害効果を示す化合物は報告されていない.現在.病態モデル細胞や動物に適用し,その効果を調べているところである.この解析を介して,de novo DNAメチル化(脱メチル化)が病態形成に関与しているのか,このような修飾を受けるDNAに部位特異性があるのか,さらには,NO感受性を示す遺伝子のプロモーターに特異性・感受性の違いがあるのか,などが明らかになる.これまでに,このような問題提起はなされておらず,注目を集めると考えている. 以上の成果に関して,本年3月に特許出願(NOによるDNMT酵素活性制御機構と特異的酸化阻害剤開発のためのスクリーニング法に関して)を行った.それらをまとめた成果を速やかにジャーナルに投稿する予定となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,基本リード化合物に対して様々な官能基を導入することで誘導体を作成し,構造活性相関を明らかにすることを試みている.これらを順次,Sーニトロシル化阻害活性測定アッセイに供し,薬物の最適化を測る.加えて,溶解性や合成経路にも着目し,簡便で,かつ,安価で得られる化合物を選定する予定である.動物実験に供するためにも数グラム単位で合成することも計画している. さらに,これまでに実施してきたin vitroや細胞レベルでの薬効の確認に加えて,種々の病態モデルへの適用を行う予定である.具体的には,マウス炎症性ガン,胃ガン,大腸ガン などに対する効果を調べる予定である.
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Research Products
(9 results)