2015 Fiscal Year Annual Research Report
鏡像体タンパク質を用いた医薬品探索技術の開発と実証
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15H04653
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大石 真也 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (80381739)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 天然物 / ペプチド / キラル化合物 / スクリーニング / 医薬品探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
鏡像体タンパク質を活用した天然物・天然資源の鏡像体化合物群からの医薬品候補化合物の探索手法の確立に向けて、以下の検討を行った。 (1)鏡像体タンパク質の化学合成:細胞増殖・腫瘍増殖に関わるSH2ドメインタンパク質の化学合成について検討し、Grb2 SH2ドメインを複数のフラグメントのNCL反応を経て合成するプロセスを確立した。Dアミノ酸からなる鏡像体タンパク質も同様のプロセスで合成するとともに、あらかじめ蛍光団等の修飾基を付したN末端フラグメントを用いることで、生物活性評価系に用いる数種類の標識タンパク質を合成した。この他のSH2ドメインタンパク質についても化学合成の可能性の検討を進めた。 (2)生物活性評価系の構築とスクリーニング:新たに化学合成MDM2タンパク質を用いたELISA系を確立し、これまでに確立済みの蛍光偏光法等による生物活性評価系と同様にMDM2-p53阻害活性を高感度に評価できることを明らかにした。また、天然資源からのMDM2-p53相互作用阻害剤の同定を目指して、植物由来の成分のスクリーニングを行った。さらに、新たに化学合成したGrb2 SH2ドメインタンパク質について、化合物アレイ法によるスクリーニングを実施するとともに、Grb2 SH2ドメインのリン酸化チロシン結合部位に結合する化合物を同定するためのELISA系を確立した。 (3)ヒット化合物の鏡像体の生物活性評価と構造活性相関研究:これまでに見出したMDM2-p53相互作用阻害剤について、部分構造の異なる複数の誘導体の合成と生物活性評価を行い、活性発現に寄与する立体配置やアルキル側鎖長を明らかにした。これによりヒット化合物がMDM2のp53結合ドメインに特異的に結合していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MDM2-p53相互作用阻害剤のヒット化合物について、その生物活性に寄与する構造要素を明らかにするとともに、天然資源をリソースとするスクリーニングを実施した。また、新たな標的分子として設定したGrb2 SH2ドメインタンパク質の化学合成法を確立し、化合物アレイ解析によるスクリーニングを完了した。いくつかのドメインタンパク質では、化学合成後のフォールディング条件の設定がうまくいかず、期待された構造・機能を示さないことがあったものの、当初予定していたよりも多くの化学合成タンパク質の取得に成功しており、研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)鏡像体タンパク質の化学合成:感染症治療薬の標的となる病原微生物由来のタンパク質の化学合成を新たに検討する。固相合成法やNCL法の組み合わせにより効率的な化学合成プロセスを確立した後、生物活性を示す機能性タンパク質であることを確認する。 (2)生物活性評価系の構築とスクリーニング:SH2ドメインタンパク質に対するスクリーニングから得られたヒット化合物の生物活性を精査するための二次評価系を確立する。これまでに経験した均一系・不均一系の利点・欠点をもとに、高い感度で阻害活性を評価できる方法を作成する。 (3)ヒット化合物の鏡像体の生物活性評価と構造活性相関研究:スクリーニングでは、L体とD体の両方のタンパク質にヒットするキラル化合物が取得されている。化合物側およびタンパク質側の両方の観点から、これらの生物活性が発現するメカニズムを精査する。この他にも、ヒット化合物の誘導体の作成を通して構造活性相関研究を展開する。
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Research Products
(14 results)