2017 Fiscal Year Annual Research Report
HLA導入マウスを用いた特異体質性肝障害の発症機序解明と前臨床予測法の基盤構築
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15H04661
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
伊藤 晃成 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (30323405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 重樹 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (30728366)
関根 秀一 千葉大学, 大学院薬学研究院, 講師 (70401007)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 特異体質毒性 / HLA / 薬物性肝障害 / 自然免疫 / 獲得免疫 / 薬物過敏症 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、アバカビル(ABC)とTLR9リガンドであるCpG-ODNの併用によりB*57:01トランスジェニック(Tg)マウスで一過性にALT上昇が起こることを報告した。今年度はALT上昇の背景で免疫活性化が起こっているかについて詳細に調べた。ABCとCpG-ODNの併用投与1週間後の時点で肝臓から単離した単球系細胞をフローサイトで調べたところ、B*57:01-TgマウスでのみCD8陽性細胞の増加を認めた。CD4陽性細胞数に変化はなかった。CD8陽性細胞では記憶マーカーであるCD44の増加とCD62Lの低下を認めたことから、これらCD8陽性細胞の増加はHLA-B*57:01を介した特異的な免疫活性化を反映していると考えられた。一方でCD8陽性細胞では抑制性のマーカーであるPD-1発現も同時に増加しており、寛容系の速やかな上昇が1週間以降のALT低下に関わっている可能性が示された。B*57:01-TgマウスにおいてCpG-ODNを併用した時のみABCによる肝障害を認めたが、ABCのみの投与が免疫系に与える影響については不明である。そこで、ABC単独で1週間混餌投与後に脾臓ならびに末梢リンパ節より細胞を回収し、CD8細胞の活性化状態を調べた。その結果、脾臓とリンパ節いずれにおいてもB*57:01-TgマウスではメモリCD8細胞が増加する(脾臓ではナイーブCD8細胞の減少も確認済み)一方、溶媒投与群では変化が無いこと、さらにB*57:03-Tgマウスおよび同腹マウスではABCの投与によっても変化が無いことを確認した。このことから、ABC単独投与でもB*57:01マウスのCD8陽性細胞活性化までは生じてはいるが、肝臓の傷害に至るにはCpG-ODNによる自然免疫の活性化が必要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていたHLA-B*57:01-Tgマウスでフルクロキサシリンによる肝障害モデルを確立するには至っていないものの、同じくB*57:01多型依存的に過敏症を起こすことが知られているアバカビル(ABC)を用いて肝障害を再現することに成功した。また、肝障害の発現には、自然免疫のサポートが必要であるという新たな知見も得ることができた。これら成果を最終的に2報の査読付き論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
主に2点に絞って研究を進める。一つ目は、CpG-ODNの役割を明らかにするための研究である。ABCの肝障害がCpG-ODNを併用することで何故肝臓に顕著に見られるようになるかの理由は全く不明である。自然免疫活性化の位置づけをより明確にするために、CpG-ODN投与により肝臓にどのような細胞が集積するのかについて詳細に調べる。また、CpG-ODNの投与ルートについてこれまでは腹腔投与のみであり、結果的にCpG-ODNの肝臓への曝露が大きいために肝障害が特に見え易い可能性も考えられたため、静脈内投与など他の投与ルートについても検討する。二つ目は増悪を再現する条件の探索である。B*57:01-TgマウスにABCとCpG-ODNを併用して見られる肝障害は1週間で収まってしまう。実際にこのタイミングでPD-1発現の上昇も確認されたため、寛容系の関与が強く疑われている。前年度に引き続きPD-1ノックアウトマウス(PDKO)とHLA-Tgマウスを掛け合わせて得られるHLA-Tg x PDKOの確立を行い、このモデルで同様にABCとCpG-ODNを連投した際に増悪するか調べる予定である。H29年度にB*57:01-Tg x PDKOについては繁殖できるところまで至ったためH30年度は引き続き、陰性対照であるB*57:03-Tg x PDKOの繁殖を進め、両系統が十分数揃った段階で薬物投与実験を行う予定である。
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Research Products
(15 results)