2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内脂質シグナル分子による小胞輸送制御を介した血管細胞機能の調節
Project/Area Number |
15H04673
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
多久和 陽 金沢大学, 医学系, 教授 (60171592)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | イノシトールリン脂質 / PI 3-キナーゼ / ホスファターゼ / PI-3-P / ノックアウト |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内皮細胞において機能脂質PI-3-Pを脱リン酸化する酵素PI-3-Pホスファターゼ(PI3Pase)のノックアウト(KO)マウスを作成して解析した。ホモKOマウスは、出生直後に死亡した。全身臓器の組織学的解析により、ある器官系の異常が見いだされた。細胞タイプ特異的な抗体を用いた免疫染色を用いてこの器官系の異常を解析した。PI3Paseの細胞内における局在を免疫染色を用いて解析し、同定した。また培養細胞においてこのPI3PaseをsiRNA法を用いてノックダウンしたところ、細胞内小胞のPI-3-Pレベルが増加した。一方、当初、PI-3-Pを産生すると考えられたクラスII α酵素(PI3K-C2α)は、血管内皮細胞ではPI-3,4-P2を産生することを示す結果を得た。さらに、PI3K-C2αによるPI-3,4-P2の産生は、主として細胞膜でおこった。PI3K-C2αをノックダウンした際に観察されたPI-3-Pの減少は、PI-3,4-P2の分解に由来するPI-3-Pプールの減少と考えられた。PI3K-C2αがマウス生体レベルではたす機能をより深く理解するために、血管障害モデルを作成し、PI3K-C2αノックアウトの影響を検討した。PI3K-C2αノックアウトマウスでは、血管障害が増強した。したがって、PI3K-C2αは血管の健全性維持に働いていることが示唆された。これらの成績から、PI3Paseは、PI3K-C2αの直接の産物を脱リン酸化する酵素ではないと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管内皮細胞で同定したPI3Paseのノックアウトマウスの解析によって、PI3Pase がある器官系の発達に必須であることが判明した。このPI3Paseの機能は、その喪失がマウスの生直後の死亡につながることから、生命維持に必要な重要機能である。PI3Paseをノックダウンすると細胞内小胞のPI-3-Pレベルが増加することを見いだした。血管内皮細胞におけるPI3K-C2αノックダウンのイノシトールリン脂質レベルに及ぼす効果を解析したところ、PI3K-C2αの酵素産物はPI-3-Pではなく、PI-3,4-P2と考えられた。したがって、PI3PaseはPI3K-C2αの酵素産物を脱リン酸化するのではないと考えられる。PI3PaseはおそらくPI3K-C2αとは異なるPI3Kによって小胞膜上で産生されたPI-3-PをPIに分解する酵素分子であると考えられる。一方、PI3K-C2αがPI-3,4-P2を産生することは、これまでに明らかにしたPI3K-C2αのエンドサイトーシス作用においてPI-3,4-P2が重要な役割を果たすことを示唆しており、興味深い。PI3K-C2αの血管作用について、血管バリア機能維持作用の他に、ある種の血管障害モデルにおいて、PI3K-Cαが防御的な機能を果たしていることが明らかになった。この結果はこれまでの検討結果とあわせて、PI3K-C2αが血管健全性を維持する酵素分子であることを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウスにおいて、PI3Pase作用の器官系の発達における新作用の分子機構について、今後明らかにすることは重要な課題である。そこで、この器官系のさまざまな細胞種特異的にCreリコンビナーゼ(Cre)を発現する複数のdeleterマウスとPI3Paseflox/floxマウスを交配して、胎仔生存におけるPI3Paseの役割を明らかにする。次に、各細胞種特異的な抗体による組織の免疫染色や脂質プローブを用いた組織染色によって、ホモKOマウス組織において、いずれのタイプの細胞がどのような異常を呈するかを明らかにする。また、セルソーターを用いて異常を呈する細胞を分取し、細胞レベルでの形態学的観察、細胞内の構造、遺伝子発現、タンパク発現を解析する。 PI3K-C2αがPI-3,4-P2を産生することは、これまでに明らかにしたPI3K-C2αのエンドサイトーシス作用においてPI-3,4-P2が重要な役割を果たすことを示唆しており、興味深い。PI-3,4-P2がエンドサイトーシスを制御する分子機構の解明をめざす。一方、イノシトールリン脂質産生酵素であるPI3Kの機能解析については、PI3K-C2αとPI3K-C2βの機能的相違を解明するために、floxedマウスとCre deleterマウスを交配し、組織特異的なPI3K-C2α-単独KOマウス、PI3K-C2β-単独KOマウス及びPI3K-C2α/ PI3K-C2β二重KOマウスの表現型を解析する。
|
Research Products
(15 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Role of S1P2 in inflammation and fibrosis2015
Author(s)
Yoh Takuwa Juanjuan Zhao, Yasuo, Okamoto, Kazuaki Yoshioka and Noriko Takuwa. Role of S1P2 in inflammation and fibrosis
Organizer
14 th International Conference on Bioactive Lipids in Cancer, Inflammation, and Related Diseases Plenary Lecture
Place of Presentation
ハンガリーアカデミーオブサイエンス(ハンガリー ブタペスト)
Year and Date
2015-07-12 – 2015-07-15
Int'l Joint Research / Invited
-
-
-
-
-
-
-