2016 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内脂質シグナル分子による小胞輸送制御を介した血管細胞機能の調節
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15H04673
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
多久和 陽 金沢大学, 医学系, 教授 (60171592)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 脂質 / 生体分子 / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスにおいて、PI3Pase作用の器官系の発達における新作用の分子機構について、今後明らかにすることは重要な課題である。そこで、さまざまな細胞種特異的にCreリコンビナーゼ(Cre)を発現する複数のdeleterマウスとPI3Paseflox/floxマウスの交配による細胞種特異的KOマウスの組織形態学的観察、細胞内の微細構造、遺伝子発現、タンパク発現の解析を継続した。並行して、既に同定したPI3Pase発現細胞において、siRNA法を用いたノクダウンの細胞機能におよぼす影響をより詳細に解析した。一方、イノシトールリン脂質産生酵素であるPI3Kの機能解析については、PI3K-C2αとPI3K-C2βの機能的相違を解明するために、floxedマウスとCre deleterマウスを交配し、組織特異的なPI3K-C2α-単独KOマウス、PI3K-C2β-単独KOマウス及びPI3K-C2α/ PI3K-C2β二重KOマウスの表現型解析を継続した。胎児の子宮内生存と肉眼的異常の有無、全身のさまざまな器官の形態と機能の解析を継続し、異常が認められる場合には、免疫染色を含む組織染色や遺伝子発現による原因を探索した。スフィンゴシンキナーゼSphKは形質膜や小胞体、ゴルジ装置の他にエンドソーム膜に局在し、スフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質に由来するスフィンゴシンをスフィンゴシンー1-リン酸 (S1P)に変換することにより、膜スフィンゴ脂質レベルを変化させる。SphK KOマウスから単離した細胞の解析を継続し、小胞機能が影響を受けていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管内皮細胞で同定したPI3Paseのノックアウトマウスの解析によって、予想外に、PI3Pase がある器官系の発達に必須であることが判明した。このPI3Paseの機能は、その喪失がマウスの生直後の死亡につながることから、生命維持に必要な重要機能である。当初、PI3Paseをノックダウンすると細胞内小胞のPI-3-Pレベルが増加することを見いだした。しかし、血管内皮細胞におけるPI3K-C2αノックダウンのイノシトールリン脂質レベルに及ぼす効果を解析したところ、PI3K-C2αの酵素産物はPI-3-Pではなく、PI-3,4-P2と考えられた。したがって、PI3PaseはPI3K-C2αの酵素産物を脱リン酸化するのではないと考えられる。PI3PaseはおそらくPI3K-C2αとは異なるPI3Kによって小胞膜上で産生されたPI-3-PをPIに分解する酵素分子であると考えられる。また、スフィンゴ脂質代謝酵素ノックアウトマウスの解析は、スフィンゴ脂質がおそらくイノシトールリン脂質とは異なる機序により小胞輸送に関与していることを示唆している。これは全く新しい発見であり、今後は細胞レベルでの解析により、この機構の解明を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスにおいて、PI3Pase作用の器官系の発達における新作用の分子機構について、今後明らかにすることは重要な課題である。そこで、さまざまな細胞種特異的にCreリコンビナーゼ(Cre)を発現する複数のdeleterマウスとPI3Paseflox/floxマウスの交配による細胞種特異的KOマウスの組織形態学的観察、細胞内の微細構造、遺伝子発現、タンパク発現の解析を継続する。並行して、既に同定したPI3Pase発現細胞において、siRNA法を用いたノクダウンの細胞機能におよぼす影響をより詳細に解析する。一方、イノシトールリン脂質産生酵素であるPI3Kの機能解析については、PI3K-C2αとPI3K-C2βの機能的相違を解明するために、floxedマウスとCre deleterマウスを交配し、組織特異的なPI3K-C2α-単独KOマウス、PI3K-C2β-単独KOマウス及びPI3K-C2α/ PI3K-C2β二重KOマウスの表現型解析を継続する。胎児の子宮内生存と肉眼的異常の有無、全身のさまざまな器官の形態と機能の解析を継続し、異常が認められる場合には、免疫染色を含む組織染色や遺伝子発現による原因を探索する。スフィンゴシンキナーゼSphKは形質膜や小胞体、ゴルジ装置の他にエンドソーム膜に局在し、スフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質に由来するスフィンゴシンをスフィンゴシンー1-リン酸 (S1P)に変換することにより、膜スフィンゴ脂質レベルを変化させる。ある特定の細胞種に的を絞って、SphK KOマウスから単離した細胞の解析を継続する。
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Research Products
(10 results)