2016 Fiscal Year Annual Research Report
In vivoナノ計測による心筋収縮制御機構の解明
Project/Area Number |
15H04677
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
福田 紀男 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (30301534)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
照井 貴子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10366247)
小比類巻 生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40548905)
大山 廣太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 特別研究員 (70632131)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 生理学 / 生物物理 / ナノバイオ / 分子イメージング / 心筋 / 細胞・組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)細胞内Ca濃度にともなって蛍光シグナルを変化させるCameleon-Nano140をラット幼若心筋細胞のサルコメアのZ線に発現させた。その結果、局所のCa濃度とサルコメア長を同時に計測できる実験系を開発することに成功した(Tsukamoto et al., J Gen Physiol 2016)。Cameleon-Nano140による単一サルコメア長の計測精度は17 nmであり、Z線周囲のCa濃度に応じたサルコメアの動的挙動を詳細に定量化することが可能となった。β受容体刺激薬を投与すると、細胞内局所Ca濃度が上昇するとともにサルコメアの収縮性が増大した。なお、この論文は、生理学分野において世界で最も権威があるJ Gen Physiol誌の表紙を飾った。 (2)申請者らは、世界で初めてマウスin vivoにおけるサルコメア動態のナノイメージングに成功している(Kobirumaki-Shimozawa et al., J Gen Physiol)。このシステムを発展させ、マウスin vivo心筋細胞内の一本の筋原線維における約30個の連続したサルコメアの動きを計測した(Z線にGFPを発現)。すると、個々のサルコメアの挙動には「個性」が存在し、それらが統合されることによって調和の取れた心筋細胞の動きがもたらされることが分かった。すなわち、筋原線維に沿って力学的な力の配分機構が働き、結果、個々のサルコメアの間に協調性がもたらされるものと考えられる。 (3)申請者らは、赤外レーザーによる局所加熱が単離心筋細胞の収縮を引き起こすことを報告している(BBRC 2012)。この収縮においては、サルコメアそのものが熱の受容器として機能しており、細胞内Ca濃度の上昇は生じない。マウスin vivoにおいて、左心室中央部に赤外レーザ―を照射すると、拍動中の心筋細胞の収縮率が増大した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H28年度、申請者らが創成した「心臓ナノ生理学(cardiac nano-physiology)」を大きく進展させ、心筋細胞内局所のCa濃度と単一サルコメアの同時計測が可能となった。心筋興奮収縮連関においてはCaがキープレーヤーとなっていることは広く知られているが、従来の研究では細胞内Ca濃度の平均値しか求めることが出来ず、細胞内におけるCa濃度のバラツキが細胞全体の収縮にどのような影響を及ぼしているのかを知ることができなかった。心筋細胞内局所Ca濃度が一過性に上昇すると、不整脈が惹起される。H28年度に構築した実験系はin vivo心臓に応用可能であり、不整脈が生じる際、その根源となっている心筋細胞の細胞内Ca濃度ががどのように上昇し、そしてどのようにサルコメア収縮をもたらすのかを知ることができる。また、健常マウスにおいて、in vivo心筋細胞内のサルコメアの挙動には「個性」が存在することが示されたが、この知見は、サルコメアはすべて一様に動くとする従来の生理学の常識を覆すものである。H29年度、in vivo心筋ナノイメージングを心疾患モデルマウスに応用する予定であるが、病態を「サルコメア動態の不均一性」に基づいて定義することが可能になるものと期待される。さらに、申請者らは、赤外レーザーを用いて、in vivoマウス心筋の収縮性を増大させることを可能にした。この手法は、H29年度、病態マウスに適用させることが可能である。当初の計画では、二年間でここまでの成果を得られるとは期待しておらず、よって、「当初の計画以上に伸展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)上述したように、申請者らは、in vivoマウス心筋細胞内の一本の筋原線維における約30個の連続したサルコメアの動きを計測することに成功し、個々のサルコメアの動きには個性が存在するが、平均化すると安定した収縮反応が得られることが分かった。H29年度、心臓の様々な部位についてこの実験を行い、サルコメア動態が心臓において統合されている仕組みを明らかにする。 2)1)の手法を拡張型心筋症や肥大型心筋症のモデルマウスに応用し、in vivo心筋興奮収縮連関について検討する。サルコメアの挙動のみならず、Cameleon-Nano140を用いることで局所Ca濃度についても調べ、リズム破綻による突然死の原因をin vivoにおいて分子論的に明らかにする。 3)H28年度、拍動しているマウス心臓に対して加熱収縮を惹起させることに成功した。よって、細胞内Ca動態や膜電位といったミクロパラメーターと心臓全体のマクロパラメーター(心電図や心臓内圧)を同時計測し、新たな心臓刺激法としての機能評価を行う。また、2)の病態マウスに本技術を適用し、どこまで心臓機能を回復させることができるのかを定量化する。 4)申請者らは、心筋サルコメアが生理的な低Ca濃度存在下で自発的に振動し(SPOC)、その振動数が静止時心拍数に比例することを報告している(BBRC 2006)。また、SPOC現象を定量的にシミュレートできる数理モデルの開発に成功している(Prog Biophys Mol Biol 2011など)。このモデルを心筋細胞に拡張し、SPOCの振動特性がどのように変化するかを計算する。また、多数の細胞をつなぎ合わせて心臓モデルを開発し、細胞局所レベルでの興奮収縮連関から心臓のポンプ機構につながるin vivoダイナミクスの式を提案する。
|
Research Products
(4 results)
-
[Journal Article] In vivo cardiac nano-imaging: A new technology for high-precision analyses of sarcomere dynamics in the heart2017
Author(s)
Togo Shimozawa, Erisa Hirokawa, Fuyu Kobirumaki-Shimozawa, Kotaro Oyama, Seine A. Shintani, Takako Terui, Yasuharu Kushida, Seiichi Tsukamoto, Teruyuki Fujii, Shin'ichi Ishiwata, and Norio Fukuda
-
Journal Title
Prog. Biophys. Mol. Biol.
Volume: 124
Pages: 31-40
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-