2015 Fiscal Year Annual Research Report
FoxO転写因子による癌と老化の制御機構とその制御化合物の探索
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15H04682
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
下川 功 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (70187475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 亮一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (30509310)
朴 盛浚 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (60635853)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 老化 / カロリー制限 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアの機能、Redox 制御に対するFoxO1, FoxO3の役割:マウス肝臓からミトコンドリア分画を調整した。細胞外フラックスアナライザーを用いて、酸素消費速度および細胞外酸性化速度を計測し、ミトコンドリア機能(定常状態、予備呼吸能、共役、脱供役状態)を評価した。WTマウス-CRでは、10カ月齢、15カ月齢、24カ月齢において、年齢による大きな変化はなかった。Foxo3 (+/-)-CR群では、10カ月齢では、WT-CRに比べて、脱共役状態における呼吸が減少していた。一方、24カ月齢では、逆に酸素消費量がFoxo3 (+/-)-CRにおいて有意に上昇していた。Foxo1 (+/-)-CRでは、WT-CRと有意な差はなかった。以上の結果は、Foxo3が加齢にともなうミトコンドリア呼吸機能の制御、維持に役割を果たしていること、高齢期では、Foxo3による抑制的な制御が破綻していることを示唆している。 ミトコンドリアの形態的変化:Foxo3 (+/-)マウスでは、高齢期にミトコンドリアの機能が破綻していることが示唆されたので、形態的な変化を電子顕微鏡的に観察した。Foxo3 (+/-)-CRマウスの肝細胞では、WT-CRに比較して、長径が伸びたミトコンドリアや異常な分枝をともなうミトコンドリアが観察された。現在、マウスの数を増やし、統計的な解析の準備を行なっている。 組織特異性ノックアウトマウスの作製:Cre-loxPシステムを用いて組織あるいは細胞特異的FoxO1-, FoxO3-KOマウスを作製するために、FoxO1L/L、FoxO3L/LマウスとNestin-Cre/ERT2マウス(脳、特に神経幹細胞特異的)、FABP4-Cre マウス(白色脂肪、褐色脂肪特異的)を導入し、現在、動物実験室において交配している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリアの機能と形態の解析は予定通り進行している。組織特異的ノックアウトマウスの作出準備も予定どおり進んでいる。遺伝子発現解析、ChIP-Seq解析が遅れているが、今後、メタボローム解析を優先することを考慮すれば、あえてChip-Seq解析を行う必要はない可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
メタボローム解析:Foxo3がCRによるミトコンドリア機能制御に重要な役割を果たしていることが示唆されたので、H28年度は、肝組織を用いてメタボローム解析を行い、さらにエネルギー代謝の特徴を明らかにする。 遺伝子毒性応答と発癌:本研究では、発癌に関連する、遺伝子毒性応答を評価する。各系統のマウスに発癌剤DENAを投与後、マウスを屠殺し、肝臓組織を採取する。細胞死、細胞増殖能、DNA傷害を計測する。FoxO1、FoxO3, Mycの発現、細胞回転停止(p21, p27)、DNA修復(Gadd45a)、ストレス応答(SOD2、Gclc,など)、細胞増殖(Cdkなど)に関連する遺伝子、蛋白質の発現を比較する。また、肝細胞癌の発生に重要なGlycogen synthesis kinase (GSK)-3beta/ beta-catenin系の活性化を検索する。 視床下部FoxO-Npy系によるエネルギー代謝制御機構: 視床下部のNpy神経細胞による代謝制御と白色脂肪の細胞老化がCRによる寿命制御機構に関連していることを検討する 白色脂肪におけるFoxOの役割:加齢にともない白色脂肪組織中にp53、炎症性サイトカインの発現が増加し(細胞老化)、インスリン抵抗性の原因となる。FoxO1, FoxO3の白色脂肪細胞の細胞老化抑制における役割を明らかにする。CRによる細胞老化抑制が、FoxO1 (+/-)もしくはFoxO3 (+/-) で減弱することを予測している。
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Research Products
(4 results)