2016 Fiscal Year Annual Research Report
ナルコレプシーの感受性遺伝子の探索及び個別化治療への応用
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15H04709
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
宮川 卓 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (20512263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 裕美 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (90637448)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲノム / 遺伝学 / ゲノムワイド関連解析 / ナルコレプシー / 過眠症 / アシルカルニチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ナルコレプシーと真性過眠症では共通の遺伝素因を持つか検討するために、Polygenic解析を実施した。また真性過眠症はヒト白血球型抗原(HLA)のDQB1*06:02を保有する群としない群で、その遺伝的素因や病態が異なると考えているため、この2群にわけて解析を実施した。合計のサンプルサイズは、ナルコレプシー患者393例、HLA-DQB1*06:02陽性真性過眠症患者38例、HLA-DQB1*06:02陰性真性過眠症患者119例及び健常者1,582例のゲノムワイド関連解析のデータを利用した。Polygenic解析の結果、ナルコレプシーとHLA-DQB1*06:02陰性真性過眠症では遺伝的共通性が小さいが、ナルコレプシーとHLA-DQB1*06:02陽性真性過眠症においては遺伝的共通性があることが示唆された。 次に、これまでの研究結果より、SNPのような多型だけでなく、頻度の低い変異も睡眠障害に関わる可能性が高いと考えられる。近年、全ゲノム解析やエクソーム解析のデータが、公共データベースにおいて公開されるようになった。しかし同時に、これらのデータベースには様々な疾患の変異が含まれることが報告されている。そこで、まず睡眠に関わる遺伝子をKEGG及び先行研究により抽出する。次に、それら抽出された遺伝子上にアミノ酸置換を伴い、かつインシリコ解析で有害であると推定される変異を、全ゲノム解析やエクソーム解析の公共データベースより選択する方法を考えた。現在、PER2遺伝子上に睡眠障害と関連すると予測される候補変異を見出し、実際に患者及び健常者のDNAサンプルを用いて、疾患と関連するか検討を行う段階に来ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種過眠症のゲノムワイド関連解析のデータを利用したPolygenic解析により、ナルコレプシーとHLA-DQB1*06:02陽性真性過眠症においては遺伝的共通性があると考えられる。そのため、真性過眠症においてもHLAのタイピング結果の重要性が示唆され、さらに将来的な個別化医療(Precision Medicine)にも貢献するものと考える。また、真性過眠症の研究を行う際には、本研究のようにHLA-DQB1*06:02を保有する群としない群にわけて解析を行う必要があることも確認できた。 疾患と関連する頻度の低い変異を検出するために、全ゲノムシークエンスやエクソームシークエンスを行うことは、良い方法ではあると思われる。しかしながら、費用が掛かる、解析が容易ではない、データ量が膨大、多重検定等の様々な問題があるのも事実である。そのため、より廉価で効率的な方法を試みる必要があるのではないかと考え、今回公共のデータベースを活用する上記の方法を実施した。実際にPER2遺伝子上に睡眠障害の候補変異を絞り込んでいるため、順調に研究は進んでいると考えている。 ナルコレプシーを対象としたゲノムワイド関連解析及びHLA解析に関しては、統計学的な検出力を高めるため日本人集団、ヨーロッパ系集団及び中国人集団の結果を統合したメタ解析を、スタンフォード大学のナルコレプシーセンター(Mignot教授)との共同研究で実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
PER2遺伝子上に位置する睡眠障害の候補変異に関しては、睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒症候群、ナルコレプシー、特発性過眠症、真性過眠症及び健常者コントロールのDNAサンプルを用いて、これら睡眠障害と関連するか検討を行う。さらにPER2遺伝子のリシークエンスの必要性についても検討する。現時点では、睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒症候群とPER遺伝子の変異は関連するのではと予測を立てている。そのため、さらに多くの睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒症候群のDNAサンプルを保有するグループとの共同研究を計画している。これにより、再現性研究を実施することができ、より確かな疾患関連変異を同定することが可能になると考える。 Polygenic解析の結果から、ナルコレプシーとHLA-DQB1*06:02陽性真性過眠症において遺伝的共通性があることが示唆された。そして、ナルコレプシーのゲノムワイド関連解析のデータを用いた多集団におけるメタ解析により、平成29年度には新規のナルコレプシーの関連SNPが同定されると考えられる。そこで、これら新規関連SNPに関しては、HLA-DQB1*06:02陽性真性過眠症と関連するか検討する。HLA-DQB1*06:02陽性真性過眠症は症例数が少ないため、そのDNAサンプルの収集も継続して実施する必要がある。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Epigenome-wide association study of DNA methylation in panic disorder2017
Author(s)
Shimada-Sugimoto M, Otowa T, Miyagawa T, Umekage T, Kawamura Y, Bundo M, Iwamoto K, Tochigi M, Kasai K, Kaiya H, Tanii H, Okazaki Y, Tokunaga K, Sasaki T
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Journal Title
Clinical Epigenetics
Volume: 9
Pages: 6
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Evaluation of polygenic risks for narcolepsy and essential hypersomnia2016
Author(s)
Yamasaki M, Miyagawa T, Toyoda H, Khor SS, Liu X, Kuwabara H, Kano Y, Shimada T, Sugiyama T, Nishida H, Sugaya N, Tochigi M, Otowa T, Okazaki Y, Kaiya H, Kawamura Y, Miyashita A, Kuwano R, Kasai K, Tanii H, Sasaki T, Honda Y, Honda M, Tokunaga K
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Journal Title
Journal of Human Genetics
Volume: 61(10)
Pages: 873-878
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Phenome-wide association study maps new diseases to the human major histocompatibility complex region2016
Author(s)
Liu J, Ye Z, Mayer JG, Hoch BA, Green C, Rolak L, Cold C, Khor SS, Zheng X, Miyagawa T, Tokunaga K, Brilliant MH, Hebbring SJ
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Journal Title
Journal of Medical Genetics
Volume: 53(10)
Pages: 681-689
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] A polymorphism in CRAT is associated with HLA-DQB1*06:02 negative essential hypersomnia2016
Author(s)
Miyagawa T, Khor SS, Toyoda H, Kojima H, Futagami T, Yamasaki M, Saji H, Mishima K, Honda Y, Honda M, Tokunaga K
Organizer
The European Human Genetics Conference 2016
Place of Presentation
バルセロナ(スペイン)
Year and Date
2016-05-23 – 2016-05-23
Int'l Joint Research
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[Presentation] A polymorphism in CRAT is associated with HLA-DQB1*06:02 negative essential hypersomnia2016
Author(s)
Miyagawa T, Khor SS, Toyoda H, Kojima H, Futagami T, Yamasaki M, Saji H, Mishima K, Honda Y, Honda M, Tokunaga K
Organizer
The 13th International Congress of Human Genetics
Place of Presentation
国立京都国際会館(京都市左京区)
Year and Date
2016-04-06 – 2016-04-06
Int'l Joint Research
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