2016 Fiscal Year Annual Research Report
細胞骨格タンパク質によるバクテリアの形態形成制御メカニズムの解明
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15H04731
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
塩見 大輔 立教大学, 理学部, 准教授 (70507532)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細菌 / 形態形成 / ペプチドグリカン / 細胞骨格タンパク質 / タンパク質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. RodZと相互作用する因子の解析 これまでの研究で、in vivo光架橋によりRodZ同士の相互作用を明らかにしてきた。本年度は、この相互作用に重要な領域とそれ以外の領域でも光架橋実験を行った。その結果、RodZはC末端領域で、RodZ以外のタンパク質と相互作用することが明らかとなった。また、細胞質側でMreBタンパク質と相互作用することが、遺伝学的、あるいは精製タンパク質を用いて生化学的にも示されているが、光架橋実験により、大腸菌細胞内で実際に相互作用していることを明らかにした。
2. MreBによる細胞極性制御機構の解析 MreBの細胞内局在が、大腸菌の形態形成制御、とくに、極性制御機構に重要である。MreBは細胞極に局在せず、細胞中央のみに局在する。本年度は、MreBの細胞内局在の制御機構の解析を行った。大腸菌の内膜を構成する酸性リン脂質を合成できない変異株中では、MreBの局在が異常になり、細胞の形態異常も見られた。また、人工的にMreBを極に局在させたときも、細胞の形態異常が見られた。MreBを精製し、精製タンパク質とリン脂質の結合を調べた。MreBはATP存在下ではリン脂質と結合しなかったが、ATP非存在下で酸性リン脂質に特異的に結合した。大腸菌内では、酸性リン脂質は細胞極に局在している。本研究の結果は、細胞内でATP存在下で重合したMreBは細胞極に局在する酸性リン脂質と結合できず、結果として、細胞極から排除され、細胞中央にのみ局在できることを示唆している。
3. 細胞幅制御機構の解析 本研究室では、細胞幅が野生株と異なる様々な変異株を保持している。本年度は、これらの変異株と、野生株の伸長速度(すなわち、ペプチドグリカン合成の速度)の比較を行った。その結果、細胞幅が細いほど、伸長速度が速かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、特に(2)のMreBによる細胞極性制御機構の解析で大きな進展が見られた。酸性リン脂質によるMreBの局在制御というこれまでになかった新たな概念を提示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、酸性リン脂質が、タンパク質の局在に深く関与していることが明らかとなった。MreBは様々な細胞機能に関与していることが知られており、今後は、酸性リン脂質が、細胞形態形成制御に加えて、どのような制御を行っているかを研究する。 また、細胞長の制御に比べて、細胞幅の制御はほとんど理解されておらず、本年度の研究を元に、詳細に変異株を解析すること、変異MreBを精製し、生化学的な解析を行う予定である。
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Research Products
(6 results)