2016 Fiscal Year Annual Research Report
APOBEC3ファミリーの抗ウイルス作用スペクトルを規定する分子基盤の解明
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15H04740
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Research Institution | National Hospital Organization Nagoya Medical Center |
Principal Investigator |
岩谷 靖雅 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 部長 (90303403)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レトロウイルス / 宿主因子 / APOBEC3 / 感染制御 / 核酸結合 / 構造解析 / 生化学 / HIV |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト細胞内シチジン脱アミノ化酵素APOBEC3(以下、A3)は、レトロウイルスの増殖を強力に抑制する作用を有する。ヒトでは、AとB、C、D、F、G、Hの7種がコードされており、異なった抗ウイルス作用スペクトルを示すことが知られている。本課題では、構造生物学を駆使し、抗ウイルス作用スペクトルの違いを規定する分子機序を解明することを目的に研究を進めている。レトロウイルスであるHIVは、Vif タンパク質を感染細胞内で発現しA3を分解することによって抗ウイルス作用スペクトルを制御する。これまで、A3ファミリーのVif結合領域は3タイプ(A3C、A3G、およびA3Hタイプ)が存在し、A3CとA3Gタイプの構造学的な特徴は明らかにされてきた。しかし、A3Hに関する情報は乏しく、その責任アミノ酸すら明らかになっていなかった。その大きな要因は、ヒトA3H がVifに感受性が低い(低結合性)ことであった。そこで、霊長類由来のA3HのVif感受性を探索することにり、チンパンジーA3H(cpzA3H)がVifに対する感受性が高いことを明らかにし、97番目の残基の違いが決定要因であることを明らかにした。さらに、網羅的なStructure-guided mutagenesis により、Vifの結合領域(9残基からなる)同定した。A3HのVif結合領域は、A3CやA3GのVif結合領域と隣接しているが異なる部位に位置していた。しかし、A3HのVif結合領域は負電荷で囲われた疎水性の浅いくぼみを形成し、他の2タイプのVif結合領域と類似した構造学的特徴を有していた (JMB 429: 1262-, 2017)。また、A3Hタンパク質の立体構造決定に向けて、独自に開発した精製方法により可溶性A3Hの精製に成功し、微結晶ではあるが、結晶化条件を絞り出す突破口を開いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで不明であったA3HのVif結合領域を同定し、その結合インターフェイスの構造学的な特徴を明らかにした。これらの成果を学術論文として輩出しただけでなく、当該年度開催された国内外の学会で口頭発表した。一方、技術的に難しいと考えられているA3Hタンパク質の実構造決定に向け、微結晶を得られる段階に到達したことは評価できると考えられる。さらに、本研究課題に付随した学術論文、総説および学会報告もなされた。これらのことからも、当各年度の本研究課題は、総じて研究計画以上に進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
A3ファミリータンパク質のドメイン構造として、唯一決定していないA3Hタンパク質の立体構造決定に力を注ぐ予定である。具体的には、結晶化条件の最適化およびミクロシーディングを行い、良質なタンパク質結晶の育成・構造決定を押し進める。さらに、当初の計画通り最終年度として、構造生物学的および生化学的な視点からA3ファミリーの抗ウイルス作用スペクトルに関する比較解析結果を、学術論文としてとりまとめる計画である。最終的に、A3 ファミリータンパク質による抗ウイルス作用野分子機序の全容解明をめざすとともに、変異誘発(発ガン)作用に関する新たな分子生物学的な知見を導き出したいと考えている。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Maraviroc, as a Switch Option, in HIV-1-infected Individuals With Stable, Well-controlled HIV Replication and R5-tropic Virus on Their First Nucleoside/Nucleotide Reverse Transcriptase Inhibitor Plus Ritonavir-boosted Protease Inhibitor Regimen: Week 48 Results of the Randomized, Multicenter MARCH Study.2016
Author(s)
Pett SL, Amin J, Horban A, Andrade-Villanueva J, Losso M, Porteiro N, Sierra Madero J, Belloso W, Tu E, Silk D, Kelleher A, Harrigan R, Clark A, Sugiura W, Wolff M, Gill J, Gatell J, Fisher M, Clarke A, Ruxrungtham K, Prazuck T, Kaiser R, Woolley I, Arnaiz JA, Cooper D, Rockstroh JK, Mallon P, Emery S, and
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Journal Title
Clinical infectious diseases
Volume: 63
Pages: 122-132
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Virological characteristics of hepatitis B genotype G/A2 recombination virus in Japan2016
Author(s)
Tsuzuki Y, Watanabe T, Iio E, Fujisaki S, Ibe S, Kani S, Hamada-Tsutsumi S, Yokomaku Y, Iwatani Y, Sugiura W, Okuse C, Okumura A, Sato Y, and Tanaka Y
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Journal Title
Hepatology Research
Volume: 46
Pages: 75-783
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] A study on false-positive serological cases for HIV-2 in Japan2016
Author(s)
前島雅美, 伊部史朗, 根本理子, 今橋真弓, 今村淳治, 蜂谷敦子, 松田昌和, 重見麗, 岡崎玲子, 杉浦亙, 横幕能行, 岩谷靖雅
Organizer
第64回日本ウイルス学会
Place of Presentation
札幌
Year and Date
2016-10-23 – 2016-10-25
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[Presentation] Structural features of the APOBEC3H region critical for HIV-1 Vif interaction2016
Author(s)
Nakashima M, Tsuzuki S, Awazu H, Ode H, Maejima M, Hachiya A, Yokomaku Y, Watanabe N, Akari H, Iwatani Y
Organizer
Cold Spring Harbor Laboratory -Annual Retrovirus- Meeting
Place of Presentation
Cold Spring Harbor Laboratory, NY, USA
Year and Date
2016-05-23 – 2016-05-28
Int'l Joint Research
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