2016 Fiscal Year Annual Research Report
国際化時代の医学部海外選択実習: 実施課題と中長期的意義に関する国際共同研究
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15H04753
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
武田 裕子 順天堂大学, 医学部, 教授 (70302411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 芳枝 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 准教授 (30386792)
堀 浩樹 三重大学, 医学系研究科, 教授 (40252366)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 海外選択実習 / 医学生 / アウトカム / 実習手引書 / 国際共同研究 / 進路選択 / コンピテンシー / 低中所得国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、(1)様々な医学部で活用可能な汎用性の高い「海外選択実習手引書」作成と、(2)海外選択実習の中長期的意義を明らかにする調査研究を並行して行っている。「海外選択実習手引書」については、多数の学生が海外実習を行っている英国・米国・カナダの医学部の手引書から枠組みを抽出し、豊富な実例とともに目的に応じて改編できるテンプレートを作成した。その成果は、2017年1月に国際学会(14th Asia Pacific Medical Education Conference)で発表した。 次に、学生時代の海外選択実習の学修アウトカムへの認識、その後の再留学やキャリア選択への影響について、郵送法とウェブ・アンケートを組み合わせて調査した(括弧内に対象者数と回収率を示す):①筑波大学卒業生(n=109, 78.9%)、②三重大学卒業生(n=446, 20.9%)、③医学教育振興財団英国短期留学(n=139, 24.5%)、④笹川記念保健協力財団フィールドワーク・フェローシップ(n=113, 38.1%)。筑波大学卒業生と三重大学卒業生を中心にインタビュー調査を開始し、海外選択実習の意義と課題について質的解析を行っている。 また、海外実習準備教育を「手引書」に盛り込むため、アンケート調査を参考に三重大学で渡航直前の学生を対象にワークショップを開催した。比較のため、前年度の学生対象に実習前後のアンケート調査を実施した(実習前:n=58, 79.3%, 実習後:n=58, 89.7%)。 さらに、途上国における実習課題を明らかにするため、フィリピン・レイテ島の医学校に学生と大学院生を派遣した。渡航前の緊密な連絡の重要性や、現地での移動・宿泊など実習以外での課題が明らかになった。その他、海外実習に関連する国際シンポジウムやセミナーを開催し、体験談を参考に学修アウトカムについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者、研究協力者の協力を得て、円滑に調査を実施することができた。本調査では医学部卒業生を対象としているため、連絡先が卒業後に変更になっている場合も少なくなく、調査対象者数や回収率が十分に得られなかった面もあるが、調査の性質から研究上の制約として予測できるものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年は本研究課題の最終年度となるため、データ解析を進めて報告書にまとめつつ積極的な発信を行いたい。 (1)汎用性の高い「海外選択実習手引書」作成:本年8月にヘルシンキで開催予定の医学教育国際会議(International Association for Medical Education: AMEE)において、本手引書に関するワークショップ(WS)が採択された。海外の共同研究者とともにWSを行い、各国の参加者からコメントを募ってそれらを反映した手引書最終版を作成する。完成した手引書を掲載するウェブサイトを作り、国内外の医学部で自由に利用できるようにする。同じく8月に札幌で開催される第49回日本医学教育学会大会でも、international sessionにて「手引書」とウェブサイトについて紹介する発表を行う。 (2)海外選択実習の中長期的意義に関する研究:医学部卒業生を対象としたアンケート調査のデータ解析を行う。進路や勤務地の選択(離島へき地勤務への態度)、リーダー的役割、健康の社会的決定要因への理解やアドボケートとしての行動を従属変数とし、海外実習経験の有無、実習先の違い(高所得国か低中所得国か)、卒業後の年数などを独立変数として関連を明らかにする。本研究ではmixed methodsを用いており、アンケート調査と共に実施している質的調査は、データが飽和するまで継続する。アンケート調査では、海外実習経験者の99%が医学生に海外実習を勧めると回答している。インタビューではその背景を探り、海外選択実習の意義と課題を質的に明らかにする。また、海外実習を促進する因子を抽出し、留学推進の方策を提言する。 研究成果は、日本医学教育学会大会で発表するほか、報告書にまとめて各医学部の国際交流担当部局に送付すると同時に、論文作成・学術誌への投稿を行う。
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Research Products
(7 results)