2016 Fiscal Year Annual Research Report
Exon 45 skipping theraphy using iPS cells deleted exons 46-55 in the DMD gene
Project/Area Number |
15H04756
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中村 昭則 信州大学, 医学部, 特任教授 (10303471)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴 祐司 信州大学, 医学部附属病院, 准教授(特定雇用) (70613503)
宮崎 大吾 信州大学, 医学部附属病院, 講師(特定雇用) (80596370)
武田 伸一 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 遺伝子疾患治療研究部, 部長 (90171644)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ジストロフィン / エクソンスキップ治療 / アンチセンスオリゴヌクレオチド / iPS細胞 / 心筋細胞 / 網羅的遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋ジストロフィーの中でも最も頻度が高く、最重症型であるDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)は、進行性に全身の筋力低下を示し、30歳代で心不全または呼吸不全により死に至る疾患である。原因遺伝子はDMD遺伝子であり、筋形質膜に局在するジストロフィンをコードしている。DMDに対する治療の1つに、遺伝子変異により生ずるアミノ酸の読み枠のずれを人工核酸アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて修正し、ジストロフィンの発現回復を図るエクソンスキップ治療がある。我々は、遺伝子の変異が多く集積するエクソン45-55の中で、その全領域を欠失する患者が無症候性であることを報告し、注目してきた。即ち、エクソン45-55内に変異を持つDMD患者に対して、エクソンスキップ治療によりエクソン45-55欠失型への変換により、多くの患者を無症候性に転換できる可能性がある。DMDのモデルマウスを用いた検討によりエクソン45-55スキップ治療が可能であることを示してきた。一方で従来のアンチセンスオリゴヌクレオチドでは、心筋細胞への導入効率は低いものであった。 そこで、平成28年度は、エクソン46-55を欠失したDMD患者の同意を得て、そのリンパ球からiPS細胞を樹立し、心筋細胞への安定的な誘導に加え、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたエクソン45スキップ治療に成功することができた。また、患者心筋細胞におけるエクソンスキップ効率はアンチセンスオリゴヌクレオチドの容量依存性に起こっており、モデルマウスに比べて導入効率は高いことが分かった。現在、導入に関する機序について、スカベンジャー受容体の関与並びに、治療前後の細胞を用いて網羅的遺伝子発現解析を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、現時点までにDMD遺伝子エクソン46-55欠失したDMD患者からのiPS細胞から心筋細胞への誘導とそれに対するエクソン45スキップ治療を行い、エクソン45が確実にスキップされること、それに伴いジストロフィンタンパク質の発現が確認できたことは、当初の想定より早い進捗であった。 従来のDMDモデルマウスや筋ジストロフィー犬を用いた心筋細胞へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの導入効率が高くなかったことを考えれば、iPS細胞由来の心筋細胞で、高いエクソンスキップ効率を示せた意義は大きく、in vivoとin vitroの違いの機序解明に向けた解析に進めることができている。当初、骨格筋細胞に対しては心筋細胞と並行して行う予定であったが、エクソンスキップ治療がより困難な心筋細胞での実験・解析がより優先されるべきと考えて研究を進めることができた。以上から、これまでの進捗状況としては概ね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、1)心筋細胞への分化誘導時期におけるエクソンスキップ効率の検討、2)ジストロフィンの発現回復が見られた細胞と欠損している細胞について網羅的遺伝子発現解析、3)心筋細胞における遺伝子発現の違いについて、mRNAやタンパク質の発現の解析をRT-PCR法やウエスタンブロット法を用いて検討する。以上の結果については、学会等で発表するほか、英文論文としてまとめる予定である。現在までに、主にiPS細胞を心筋細胞への分化誘導実験を中心に行ってきた。これは、1)筋ジストロフィーのモデルマウスやモデルイヌを用いたin vivo実験では、骨格筋に比して心筋ではアンチセンスオリゴヌクレオチドの導入効率が極めて悪かったこと、2)従来、培養心筋細胞を用いたin vitroでのエクソンスキップ治療実験が不可能であったためである。我々は、iPS細胞を用いることでin vitro実験が確立したことに加えて、これまでのin vivoでの報告とは異なり、培養心筋細胞ではエクソンスキップ効率が十分に高いことを示すことができた。この成果は、今後の関連した研究に与える影響は大きいと考えており、心筋細胞における導入効率の問題についてはスカベンジャー受容体が関わっているとの仮説を立てて、平成29年度で検討を行う予定である。また、iPS細胞より誘導した心筋細胞を用いた実験のノウハウとエクソンスキップ治療の成功から、心筋細胞と併行して骨格筋細胞に対しても同様の検討を行う計画である。
|
Research Products
(2 results)