2015 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス性血管病におけるGLP1/DDP4の新しい作用メカニズム解明と治療応用
Project/Area Number |
15H04802
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
成 憲武 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任准教授 (30378228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 健 浜松医科大学, 大学院医学系研究科, 技術専門職員 (20397433)
菊地 良介 名古屋大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (30721435)
坂東 泰子 (暮石泰子) 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60452190)
竹下 享典 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (70444403)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスホルモンに加えて、ストレスに伴う血管細胞代謝と機能維持に重要なホルモンの乱れが、血管の老化促進や再生低下の原因の一つと考えられている。本研究では、ストレスによる過剰な炎症応答が、生体内ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)によるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)ホルモンの分解亢進及びGLP-1/GLP-1受容体(GLP-1R)シグナル減弱化を介して血管老化を引き起こし、さらにそれに伴う動脈硬化性血管病を発症・増悪させるのではないかと考えた。そこで、研究代表者は、6週齢雄ApoE欠損マウス(ApeE-/-)に高脂肪食負荷(対照群)、高脂肪食/チューブ型拘束ストレス負荷(ストレス群)と高脂肪食とチューブ型拘束ストレス+DPP4阻害剤(DPP4-I治療群, 30mg/kg/d)の3群に分けて、3ヶ月間負荷によるストレス性動脈硬化誘発モデルを作成し、マウス大動脈(岸部/大動脈弁、胸部大動脈と腹部大動脈に分離)、血液と骨髄を採集して生化学ならびに組織学検討を行った。その結果、高脂肪食負荷対照群マウスと比較し、骨髄造血幹細胞の活性化と血液中マクロファージと白血球の数の増加が確認された。長期間のストレス負荷による3箇所の動脈硬化病変部位における炎症性細胞浸潤とカテプシンS/Kとマトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP2/MMP9)発現・活性亢進に伴う血管老化と動脈硬化形成促進が認められた。その一方、動脈硬化線維性被膜とコラーゲン沈着の減弱が確認された。これらの変化は、DPP4阻害剤の投与で著しい改善が認められた。さらに、GLP-1受容体作動薬(exenatide, 10μg/kg/d)投与による同様な改善効果が確認された。これらのことより、DPP4のストレス性血管老化と動脈硬化形成への関与が明らかになり、DPP4阻害剤は、これらのストレス性血管病治療に対する有用性が証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、実験計画書に記載した初年度の計画通りに研究を進め、以下の成果を収めた。 1)高脂肪食/チューブ型拘束ストレス負荷による安定したストレス性血管老化モデルと動脈硬化誘発モデルの作成に成功した。 2)生化学検討と組織学検討によりストレスは血管老化と動脈硬化形成を促進することが明らかになった。 3)DPP4阻害剤投与は、ストレスによる血管老化(平成29年度計画分)と動脈硬化形成を著名に抑制した。 4)GLP-1受容体作動薬(exenatide, 10μg/kg/d)投与によるDPP4阻害剤と同様な効果が確認された。 5)ストレスによる骨髄細胞の造血幹細胞への影響に関して詳細な検討を行った。 6)DPP4遺伝子欠損による血管老化抑制効果を確認するとともにその機序解明を進めている。特許申請を検討中で、現段階では、結果の一部公表とした。申請が終了した後、研究成果を即時に開示する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレスにより骨髄-血中・組織内単球/好中球系細胞が活性化するとともに、生体内で多面的作用を有するGLP-1/GLP-1Rシグナルが減弱され、血管内皮老化が生じると予想される。その際、血管細胞アポトーシスや骨髄内皮前駆細胞機能不全が生じ、血管老化反応の加速とそれに伴う血管新生低下・血管病悪化を明らかにすることをH28年度以降の研究目的とし、以下の解析を実施する。
1)ストレスによるマクロファージ活性化とGLP-1活性及びそのシグナル低下の時空間パターンとその関連性評価-拘束ストレス負荷後、ストレス群と非ストレス群マウス骨髄、血液、筋肉、血管を採集する。フローサイトメトリー、免疫染色によって造血幹細胞数と炎症細胞(好中球/単球・マクロファージ系)を解析し、ELISA、PCRやウェスタンブロット法によってGLP-1、DPP-4活性、ストレスホルモンやGLP-1/Rシグナル活性化を評価する。
2)ストレス性血管老化及び再生不全病態に対する骨髄由来マクロファージの寄与する度合いの評価-拘束ストレス7週間負荷後、マウスにリポソーム投与によるマクロファージディプリーションや骨髄移植による骨髄造血幹細胞の再構築を行ない、β-gal染色や内皮機能測定法によって血管老化の改善を評価する。ストレス負荷4週後、下肢虚血モデルを作成し、経時的にレーザードップラーと免染により血管新生の改善効果も評価する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Cathepsin S Activity Controls Ischemia-Induced Neovascularization in Mice.2015
Author(s)
Li X, Cheng XW, Hu L, Wu H, Guo-Ping, Hao CN, Jiang H, Zhu E, Huang Z, Inoue A, Huang Z, Sasaki T, Takeshita K, Okumura K, Murohara T, Kuzuya M.
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Journal Title
Int J Cardiol.
Volume: 183
Pages: 198-208
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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