2016 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌への個別化免疫療法の開発:変異遺伝子由来抗原の同定とiPS細胞技術の応用
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15H04831
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
服部 登 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (00283169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河本 宏 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (00343228)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 癌細胞培養 / スフェロイド培養 / 癌特異的変異抗原 / 腫瘍浸潤性Tリンパ球 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺癌への免疫療法の開発は抗PD-1抗体の有効性が示されたことも受けて一層の注目を集めている.本研究では,1)同一患者の肺癌細胞と正常細胞のゲノムDNAのエクソーム解析を行うことで検出される変異遺伝子の中から患者特異的な癌抗原ペプチドを抽出する,2)抽出された癌抗原候補ペプチドを認識する細胞障害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte: CTL)を人工的に作製する,3)iPS細胞技術を用いてCTLの大量産生を行う,4)患者の癌細胞に対する大量産生されたCTLの殺細胞効果を調べる,ことを試みる.患者特異的かつ癌細胞でのみ発現する変異遺伝子由来の癌抗原を見出しそれを標的とするCTLを大量に作製できるのかどうかを検証し,肺癌への個別化免疫療法開発の可能性を追求することが本研究の目的である. HLA-A抗原がA2402あるいはA0201であった患者で,単核球及び癌細胞のゲノムDNAが採取できたものがようやく3名に到達したので,本年度は次世代シークエンサーを利用してこれらのエクソーム解析を行った.これらの患者からCTOS(cancer tissue-originated spheroid)法での細胞培養並びに凍結保存,さらには細胞株の樹立を試みたがそれぞれ1症例ずつしか成功しなかった.また1例からは癌性胸水中から腫瘍浸潤性Tリンパ球の分離と凍結保存に成功し,さらに,これらの凍結保存されたTリンパ球が解凍後も活性を失っていないことも確認できた.本年度の進捗は以上の通りである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
HLAの合致する肺癌患者が少なかったため,肺癌細胞の分離からCTOS培養並びに細胞株樹立を試みられる患者数が予想以上に少なかった.このため,検体確保に挑戦できる患者数が少なかったことが一つ目の理由である.さらに,手術にて摘出された癌組織からのCTOS培養並びに細胞株樹立が予想外に困難であった.このため,手術にて得られた肺癌組織からの検体採取を断念せざるをえなかった.そこで検体採取を試みる肺癌患者を癌性胸水を有する肺癌患者に絞らざるをえず,研究遂行のために必要な検体採取に予想以上の時間を要してしまったことが二つ目の理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍浸潤性Tリンパ球の分離と凍結保存に成功した患者のエクソーム解析から検出された変異遺伝子をまず羅列する.肺癌における遺伝子発現があることがわかっている遺伝子のみを抽出し,HLAモチーフ検索プログラムによってHLAクラスIとの結合予測を行い,候補となるペプチドの抽出を試みる.次にこの変異ペプチドに対するテトラマーを作製し,腫瘍浸潤性Tリンパ球中にこの変異ペプチドに反応するものがあるかを検証する.
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