2016 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌における線維芽細胞増殖因子の多機能性とその制御に向けた新展開
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15H04833
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
別役 智子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (60333605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Hegab Ahmed 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (00507915)
副島 研造 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (30236145)
安田 浩之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70365261)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 線維芽細胞増殖因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor: FGF)とその受容体(FGFR)は、近年、肺癌に対する新たな分子標的薬の標的として注目されている。申請者らは、FGF9を強制発現することにより肺線癌を発症するマウスモデルを確立した。本課題では、FGF9に誘導された癌細胞がFGF9非依存性に増殖し、さらに二次的に新規発癌を誘導する“癌幹細胞”様の特質を獲得するメカニズムを明らかにする。さらに、FGF9は腺癌だけではなく、肺胞II型上皮細胞から小細胞癌をも誘導しうるという我々の発見に基づき、その機序を明らかにし、肺小細胞癌のマウスモデルを確立する。今年度は、in vitroで上皮幹細胞の増殖と分化を模倣するsphere-like colony formation assay をもちいて、FGF9誘導肺腺癌を発症した肺組織から採取した線維芽細胞の役割に注目した。正常肺から採取する線維芽細胞に比較し、支持細胞(feeder cells)として肺上皮の増殖をより促進させることを発見した。また、In vitro でFGF9誘導肺腺癌細胞と正常肺線維芽細胞の共培養により、線維芽細胞にFGF2の発現を誘導することがわかった。これらの事実から「FGF9誘導肺癌の腫瘍関連線維芽細胞はFGF2依存性に“癌幹細胞”様の特質維持に寄与する」という新仮説を立てた。この仮説を検証するために、FGF2欠損マウス肺から採取した線維芽細胞と正常マウス肺から採取した線維芽細胞に、FGF9誘導肺癌細胞を共培養し癌細胞増殖能に違いがあるか否かを検証した。SPC-rtTA, TRE-Fgf9-IRES-eGfp double transgenic miceとFGF2欠損マウスを掛け合わせ、FGF2欠損がFGF9非依存性の腫瘍増殖能を阻害できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの成果で、2本の論文を執筆中である。一つは、本肺癌モデルにおける免疫、炎症細胞の関与についてである。本腫瘍の形成時期、増大時期においてそれぞれ腫瘍内、腫瘍周囲に多く炎症細胞が集積する。このプロファイルを明らかにした。多きな結果の一つは本腫瘍にM2タイプのマクロファージの関与を明らかにしたことである。さらにこのマクロファージの機能を解析することにより腫瘍免疫を修飾していることを明らかにした。二つ目は、FGF9の小細胞癌への形質転換の機序を明らかにしたことである。このことにより従来、発症母地となる細胞が不明だった小細胞癌に対する新たな知見と、それに基づく治療標的分子の探索なる論文である。
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Strategy for Future Research Activity |
動物、細胞実験と平行して臨床検体を用いた研究を促進中である。現在、小細胞癌の臨床検体ベースからFGF関連シグナルの関与についての層別化を行っている。さらに、他の遺伝子変異との相互関係について、網羅的解析を行う。来年度の総括に向けて、基礎、臨床両方の観点から相補的にまとめを行っていく。 動物実験については、FGF-TKIの臨床前動物実験を開始している。FGF9特異的阻害剤ではない。しかし、今年度我々が明らかにしたように、腫瘍が放出するFGF9が、腫瘍関連線維芽細胞にFGF2を強く発現させる。したがって、FGF2,9両方の受容体を阻害することで、腫瘍細胞に対してだけではなく、腫瘍関連線維が細胞の機能も低下させるのではないかという仮説のもとに実験を遂行する。
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Research Products
(3 results)