2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストンアセチル化酵素KAT2Aによるエネルギー代謝調節機構の解明
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15H04851
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
松本 道宏 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所 糖尿病研究センター 分子代謝制御研究部, 部長 (90467663)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 代謝調節 / 転写 / 酵素 / エピゲノム修飾 / 肥満 / 糖尿病 / 肝臓 / 脂肪組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
KAT2Afloxマウスと肝臓あるいは脂肪細胞特異的Creリコンビナーゼトランスジェニックマウスとの交配により、肝臓特異的KAT2A欠損マウス (L-2AKO)ならびに脂肪細胞特異的KAT2A欠損マウス(adipo-2AKO)を作製し、通常食飼育において代謝表現型解析を行った。L-KAT2AKOは対照マウスと比べて、体重、血糖値、血中インスリン値に差を認めず、各種負荷試験にて評価した耐糖能、インスリン感受性、肝糖新生能のいずれも対照と差を認めなかった。現在、肝遺伝子発現に対するKAT2A欠損の影響を明らかにするため、cDNAマイクロアレイを用いた解析を行っている。 初代培養肝細胞における検討では、L-2AKO肝細胞で糖新生系酵素をはじめとする絶食応答遺伝子の発現が減弱していた。KAT2Aに対するショートヘアピンRNA (shRNA)を用いた肝細胞における急性のノックダウンでは、これらの遺伝子の発現はより強く抑制されていた。これらの結果からL-2AKOでの肝臓における代謝変化は、慢性的な欠損による代償機転ないしKAT2A paralogであるKAT2Bによる代償などのため顕在化しない可能性が示唆された。そこでKAT2Afloxマウスの肝臓へのCreリコンビナーゼの導入や、shRNAを用いたKAT2Aの急性欠損の実験系での表現型解析に着手した。またKAT2Bによる代償も想定し、全身性KAT2B欠損・肝臓特異的KAT2A欠損マウスの作製に着手した。またKAT2Aの絶食時の活性化機構の解析として、質量分析によりPKA依存的なリン酸化部位を5カ所同定した。adipo-2AKOも通常食飼育下では対照マウスと比し、代謝表現型に差を認めなかった。 現在高脂肪食負荷による肥満・糖尿病の進展に対する影響、ならびに低温飼育での褐色脂肪組織や白色脂肪組織の褐色化への影響も検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エネルギー代謝調節における肝臓・脂肪細胞におけるKAT2Aの役割を明らかにするため、研究計画に基づき実験を実施した。以下に進捗を報告する。
肝臓特異的KAT2A欠損マウスを作製し、通常食飼育下で代謝表現型解析を実施したが、対照と比し差を認めなかった。そのため、肝臓での絶食-摂食サイクルにおける遺伝子発現の変化にKAT2A欠損が及ぼす影響の検討、ならびに高脂肪食飼育下での解析に着手した。表現型に差が認められない理由として、慢性的なKAT2AないしはKAT2Bによる代償機転が示唆された。このためshRNAによるノックダウンやCreリコンビナーゼアデノウイルスを用いた急性の遺伝子欠損の実験系を構築し、解析を行っている。またKAT2Bによる代償機転に対しては、全身性KAT2B欠損・肝臓特異的KAT2A欠損マウスの作製に着手した。 KAT2Aの標的遺伝子探索に関しては、本酵素のノックダウン肝細胞における網羅的遺伝子プロファイリングを行い、多数の候補分子を得ている。またKAT2Aの活性化機構に関しては、質量分析を用いてPKA依存的なリン酸化部位を同定した。各部位の変異体を作製し、活性化の責任部位を決定するための解析を行っている。 脂肪細胞特異的KAT2A欠損マウスを作製し、通常食飼育下で代謝表現型解析を実施した。対照と比し差を認めなかったため、高脂肪食飼育下での代謝表現型解析に着手した。また肝臓特異的KAT2A欠損マウスと同様の代償機転を想定し、全身性KAT2B欠損・脂肪細胞特異的KAT2A欠損マウスの作製も開始した。培養脂肪細胞を用いたKAT2Aの機能解析として、3T3-L1脂肪細胞におけるKAT2Aノックダウンの影響を遺伝子発現の変化を中心に解析を行った。対照と差を認めなかったため、KAT2A/2Bダブルノックアウト脂肪細胞での解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoにおける肝臓のKAT2Aの役割については、現在構築中の急性KAT2A欠損の実験系と全身性KAT2B欠損・肝臓特異的KAT2A欠損マウスを用いて解析の予定である。絶食/摂食応答遺伝子発現を中心に、エネルギー代謝におけるKAT2A (ないしKAT2)の欠損の影響の検討を行い、その役割を明らかにする。また初代培養肝細胞を用いたin vitroの解析も行い、KAT2A欠損の影響や標的遺伝子の同定を行う。cAMP-PKA経路によるKAT2Aの活性化機構については、PKAによるリン酸化とヒストンアセチル化酵素活性との関係や、既にGCN5と相互作用することを報告者らが明らかにしている転写調節分子CITED2の関与などを検討する。 in vivoにおける脂肪細胞のKAT2Aの役割については、高脂肪食飼育下における脂肪細胞特異的KAT2A欠損マウスの解析、ならびに全身性KAT2B欠損・脂肪細胞特異的KAT2A欠損マウスの通常食ないし高脂肪食飼育下、寒冷飼育下での解析により検討する。KAT2A (ないしKAT2A/B)の欠損が、肥満、耐糖能やインスリン感受性、糖脂質代謝、脂肪細胞の数や質、エネルギー消費へ及ぼす影響の検討から、その脂肪細胞における役割を明らかにする。またKAT2A欠損脂肪細胞におけるin vitro系を用いて、KAT2Aの脂肪細胞における標的遺伝子を遺伝子発現解析ならびにChIP-seqによる遺伝子プロモーター/エンハンサー解析等より同定する。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Central Insulin Action Activates Kupffer Cells by Suppressing Hepatic Vagal Activation via the Nicotinic Alpha 7 Acetylcholine Receptor.2016
Author(s)
Kimura K, Tanida M, Nagata N, Inaba Y, Watanabe H, Nagashimada M, Ota T, Asahara S, Kido Y, Matsumoto M, Toshinai K, Nakazato M, Shibamoto T, Kaneko S, Kasuga M, Inoue H.
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Journal Title
Cell Rep.
Volume: 14
Pages: 2362-74
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Hepatocyte β-Klotho regulates lipid homeostasis but not body weight in mice.2016
Author(s)
Kobayashi K, Tanaka T, Okada S, Morimoto Y, Matsumura S, Manio MC, Inoue K, Kimura K, Yagi T, Saito Y, Fushiki T, Inoue H, Matsumoto M, Nabeshima Y.
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Journal Title
FASEB J.
Volume: 30
Pages: 849-62
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Paternal allelic mutation at the Kcnq1 locus reduces pancreatic β-cell mass by epigenetic modification of Cdkn1c.2015
Author(s)
Asahara S, Etoh H, Inoue H, Teruyama K, Shibutani Y, Ihara Y, Kawada Y, Bartolome A, Hashimoto N, Matsuda T, Koyanagi-Kimura M, Kanno A, Hirota Y, Hosooka T, Nagashima K, Nishimura W, Inoue H, Matsumoto M, Higgins MJ, Yasuda K, Inagaki N, Seino S, Kasuga M, Kido Y.
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A.
Volume: 112
Pages: 8332-7
DOI
Peer Reviewed
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