2015 Fiscal Year Annual Research Report
患者リソースと疾患モデルを融合した副腎白質ジストロフィー病型診断・治療法の創出
Project/Area Number |
15H04875
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
下澤 伸行 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 教授 (00240797)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 副腎白質ジストロフィー / 病型規定因子 / iPS細胞 / 脱髄 / モデルマウス / 造血細胞移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
副腎白質ジストロフィー(ALD)は、病因遺伝子は発見されたものの遺伝子変異と多彩な臨床型との間に相関はなく、発症時期や病型を規定する修飾因子の存在が予想されている。また大脳型の治療法は発症早期の造血細胞移植に限られ、その発症予測・病型規定因子の同定は、臨床現場より強く求められている本症克服への喫緊の課題である。本研究ではALDの国内診断拠点として集積した患者データとバイオリソースに、遺伝子欠損マウス、iPS細胞を用いて分子、細胞、個体レベルでの解析を通じて各病型の機序を解明し、疾患モデルの検証を経て、ALDにおける病態解明、病型診断バイオマーカーの同定から戦略的創薬をめざしており、27年度は以下の研究成果を挙げている。 1. ALD患者診断施設として1年間に小児大脳型4例、思春期大脳型2例、成人大脳型2例、AMN 2例、アジソン病2例、女性保因者16例、発症前患者3例を診断し、各病型ごと、さらには大脳型移植例においては移植前後の患者から、同意を得た上で血清、DNA、RNA、髄液サンプルを臨床情報とともに集積した。 2. ALD患者細胞のLC/MS脂質解析を行い、ALD患者において特徴的な脂質分子種を特定した。引き続き、多検体による解析、細胞レベルでの検証を経て、ALDP機能不全による基本病態の解明を進めている。 3. 小児大脳型患者複数例において移植前後の血液由来RNAを用いたマイクロアレイ比較解析を行い、2つの大脳型発症候補遺伝子を抽出した。引き続き、リアルタイムPCRにて検証するとともに、発症前、大脳型、非大脳型のより多くの患者検体を用いて、その遺伝子の動態を確認している。 4. Abcd1欠損マウスと野生型マウスに脱髄誘発実験を施行し、感受性の差異を検出した。引き続き、再現性の確認を行うとともに、大脳型発症モデルマウスとして発症病態の解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ALD患者サンプル、臨床情報は国内診断中核施設として順調に収集している。集積したサンプルを用いた多角的解析病態関連因子の探索により、以下の成果を得ている。患者および対照線維芽細胞のLC-MS/MSを用いた比較メタボローム解析にてALD患者特有の脂質分子種を特定し、引き続き多検体による検証作業を進めている。また移植前後の多検体の患者血液由来のRNAを用いたマイクロアレイ比較解析にて、2つの大脳型発症候補遺伝子を抽出し、引き続き、リアルタイムPCRにて検証するとともに、発症前、大脳型、非大脳型のより多くの患者検体を用いて、その遺伝子の動態を確認している。またAbcd1欠損マウスと野生型マウスに脱髄誘発実験を施行し、感受性の差異を検出した。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度に得られた病型修飾候補因子の検証作業を進め、抽出した因子より病型診断マーカーを探索し、生体試料からのバイオマーカー測定系を開発し、より多くの検体で診断特異性を検討する。さらに病型規定因子が病型特異性を示す機序を、細胞レベルでの実験系を構築して解明する。 Abcd1欠損マウスへの脱髄誘発実験にて高感受性を示したマウスを大脳型発症モデルとして、脳組織を用いた遺伝子発現、メタボローム解析を進め、発症病態を解明する。 ゲノム編集技術を用いてAbcd1欠損ゼブラフィッシュを作製し、その表現型の観察、生化学的解析を行い、作成した大脳型発症モデルマウスとともに、疾患モデルとして大脳型発症予防から発症後の治療法の開発に繋げる。 ALD患者細胞よりiPS細胞を樹立し、グリア系細胞に分化し、遺伝子発現、メタボローム比較解析にて発症関連因子を探索する。
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Research Products
(8 results)