2017 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白寿命タイマーによる小児期遺伝性疾患の治療薬開発
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15H04878
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
小坂 仁 自治医科大学, 医学部, 教授 (90426320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 健 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第二部, 室長 (30392418)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 蛋白構造 / シャペロン / 薬物スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代シークエンス解析により、多くの小児期発症遺伝性難病の遺伝学的診断が可能になってきた。しかしながら診断確定後も多くの疾患で治療法がない。現在遺伝子診断からどの様に、治療薬開発につなげるかが課題となっている。遺伝子変異の内、アミノ酸置換等による蛋白立体構造折れたたみ不全により細胞内局在が変化することがある。細胞内局在変化を指標として、変異による立体構造不全を解消する薬剤(シャペロン分子)を見出す計画を立てた。先天性白質形成不全症のうち、Pelizaeus-Merzbacher病 (PMD) にまず着目した。この疾患においては、患者の約3割においてproteolipid protein 1 (PLP1)遺伝子変異が見出される。PLP1の変異蛋白は構造不全を生じた異常タンパク質が小胞体に蓄積され、シャペロンタンパク質の発現誘導、タンパク質合成低下及び小胞体関連分解等の小胞体ストレス応答が起こる。これらの応答によっても異常タンパク質が処理できない場合、細胞はアポトーシスを起こすと考えられる。変異型PLP1をGFPとの融合タンパク質として、細胞内に発現させ、細胞全体の蛍光量、および細胞膜局在の2つのパラメータを指標として、薬物スクリーンングを行い、複数の候補薬物を得た。この方法を更に多くの小児期発症の遺伝性難病に適応するため、脊髄小脳変性症において、蛋白の局在変化を定量化して、薬剤スクリーニングを行っている。薬理学的シャペロンのスクリーニング法としてアゴニストに対する競合阻害や、酵素活性上昇が指標に用いられてきているが、多くの疾患原因蛋白は受容体や酵素ではないため簡便な機能評価系がなかったが、我々の研究により細胞内局在を指標にした薬理学的シャペロンスクリーニング法により多くの遺伝性疾患の薬物スクリーニングを可能とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PLP1遺伝子については、MO3.13細胞のPLP1A242V安定発現株に、薬剤の添加前後におけるGFP蛍光強度及び細胞内局在の変化をIn Cell Analyzerによる解析において、変異蛋白の蛋白発現量および共焦点顕微鏡による細胞膜局在蛋白を指標にして、薬物スクリーニングを行った。また候補薬の添加により、小胞体ストレス検出ベクター(ERAI ER Stress Detector(登録商標)、コスモバイオ社)をリポフェクタミン法でトランスフェクションした。IRE1を介してXBP1による小胞体ストレスを惹起するツニカマイシン(5μg/ml)を添加し小胞体ストレスを反映するルシフェラーゼ活性を、Nano-Glo Dual-Luciferase Reporter Assay Systemを用いて解析した。候補薬添加により変異蛋白を安定発現させたオリゴデンドロサイト由来のMO3.13細胞で小胞体ストレス応答を減少させることを確認した。また、他の変異 (W162R、I186T、W162L) についても同様の評価を行い、膜局在の回復および小胞体ストレスの改善傾向が得られた。また 候補薬剤によるPLP1A242Vの遺伝子発現変化を解析する目的で、マイクロアレイ解析を行った。HEK293細胞のPLP1A242V安定発現細胞株の候補薬剤添加群、該安定発現細胞株の候補薬剤非添加群( PLP1A242V)、及びHEK293細胞の正常型PLP1発現細胞株(PLP1Wt)の3種類の群のRNAを、RNeasyを用いて抽出し、マイクロアレイ解析を行い、化合物の作用点解析を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた薬剤をPlp1-A242Vを有するモデルマウスに投与し、症状改善作用が認められるか否かを、評価する。マイクロアレイ解析による化合物の作用点解析を更に、ウエスタンブロッティング法や免疫染織で確認する。マウスにて症状改善効果が認められた薬剤に関しては、臨床応用をめざして前臨床に進む。また細胞内局在に着目した構造不全を解消する薬剤のスクリーンング方法を更に、多くの遺伝性小児神経に適応することを目的として脊髄小脳変性症にかかわる遺伝子5種;CACNA1A(患者変異:1種)、TPP1(患者変異:2種)、FOLR1(患者変異:1種)、POLG(患者変異:2種)、PEX16(患者変異:2種)についてもGFPとの融合蛋白およびFLAGタグを付加したプラスミドの調整が終了しており、正常型と変異型の局在および発現の差異およびそれらを指標にした薬物スクリーニングを更に進める。
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Research Products
(1 results)