2016 Fiscal Year Annual Research Report
胎生期低栄養が小胞体ストレス応答を介して成人期の脂肪蓄積リスクとなる機序の解析
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15H04882
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
伊東 宏晃 浜松医科大学, 医学部附属病院, 教授 (70263085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 千津子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (20397425)
鈴木 一有 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (50456571)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | DOHaD / 胎児発育不全 / 生活習慣病 / 脂肪肝 / 肥満 / 胎生期低栄養 / 妊娠 / 胎児 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では低出生体重児の出産率は増加の一途をたどっており年間約10万人に達する。欧州の疫学研究から低出生体重児は、成長後に肥満、肝脂肪変性、メタボリックシンドロームを発症するハイリスク群となる可能性が報告されている。近年、肥満の増悪による糖・脂質代謝異常に脂肪組織や肝臓における慢性炎症による臓器リモデリングが重要な役割を果たすことが明らかとなり、さらにその制御メカニズムとして小胞体ストレス応答が注目されている。本研究計画は、「胎生期の低栄養環境は、小胞体ストレス応答性を恒久的にプログラムし、出生後に飽食の環境を生きた場合に肥満・メタボリックシンドロームを発症するハイリスク群となる」という仮説を想定し、動物実験によりその基礎的な検証を行い、「先制医療(preemptive medicine)」を指向した基礎的な検討を目指すことを目的とした。研究期間に 1.妊娠マウス母獣に40%の摂餌制限を行うことで、成長した産生仔において肝脂肪変性が増悪するモデルを調整した。 2.上記動物モデルにおいて、肝脂肪変性が増悪した肝臓組織ではではマクロファージの浸潤数の亢進とともに小胞体ストレス応答が亢進していることを見いだした。 3.上記動物モデルの産生仔に、小胞体ストレスを軽減する合成シャペロンであるTauroursodeoxycholic acid (TUDCA) を経口投与することで、慢性炎症の改善と共に、肝脂肪変性の劇的な改善を認めることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間に 1.妊娠マウス母獣に40%の摂餌制限を行うことで、成長した産生仔において肝脂肪変性が増悪するモデルを調整した。 2.上記動物モデルにおいて、肝脂肪変性が増悪した肝臓組織ではではマクロファージの浸潤数の亢進とともに小胞体ストレス応答が亢進していることを見いだした。 3.上記動物モデルの産生仔に、小胞体ストレスを軽減する合成シャペロンであるTauroursodeoxycholic acid (TUDCA) を経口投与することで、慢性炎症の改善と共に、肝脂肪変性の劇的な改善を認めることを見いだした 4.マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子解析により、胎生期の低栄養によって脂肪肝が悪化したマウス肝臓では、胎生期の正常栄養群に比べて、38の遺伝子発現が増加し、15の遺伝子発現が低下することが明らかとなった。 5.胎生期低栄養群に小胞体ストレスを軽減する合成シャペロンであるTauroursodeoxycholic acid (TUDCA) を経口投与することで、22遺伝子発現が改善し、15遺伝子の発現が増加していた
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究期間において確立した胎生期低栄養により産生仔の脂肪肝が増悪するマウスモデルを用いて、マイクロアレイ法により遺伝子の網羅的発現変化を解析した。平成29年度ではさらに、次世代シークエンサーによるMBD法にて、この動物モデルの肝臓における遺伝子のメチル化を網羅的に解析する予定である。マイクロアレイによる遺伝子発現の変容と、MBD法による遺伝子メチル化の網羅的な解析結果をバイオインフォマティクスの手法により解析し、胎生期の低栄養により脂肪肝が増悪するメカニズムならびに、小胞体ストレスの軽減により脂肪肝が改善するメカニズムについて解明を目指したい。さらに、マイクロアレイの解析で遺伝子発現の変化を来し、かつ脂肪肝の増悪に関与すると思われる遺伝子群に対して、クロマチン沈降法によるヒストン修飾の検討を行う予定である。
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Research Products
(25 results)
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[Journal Article] Annual Report of the Perinatology Committee, Japan Society of Obstetrics and Gynecology 2015: Proposal of urgent measures to reduce maternal deaths.2017
Author(s)
Takeda S, Takeda J, Murakami K, Kubo T, Hamada H, Murakami M, Makino S, Itoh H, Ohba T, Naruse K, Tanaka H, Kanayama N, Matsubara S, Sameshima H, Ikeda T.
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Journal Title
J Obstet Gynaecol Res
Volume: 43
Pages: 5-7
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Randomized double-blind comparison of the effects of intramyometrial and intravenous oxytocin during elective cesarean section.2016
Author(s)
Akinaga C, Uchizaki S, Kurita T, Taniguchi M, Makino H, Suzuki A, Uchida T, Suzuki K, Itoh H, Tani S, Sato S, Terui K.
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Journal Title
J Obstet Gynaecol Res
Volume: 42
Pages: 404-409
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Fetal environment and glycosylation status in neonatal cord blood: A comprehensive mass spectrometry-based glycosylation analysis.2016
Author(s)
Sato R, Tsuchiya KJ, Matsuzaki H, Takei N, Itoh H, Kanayama N, Suda T, Watanabe H, Ohashi T, Tanaka M, Nishimura S, Maekawa M; HBC study group
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Journal Title
Medicine (Baltimore).
Volume: 95
Pages: e3219
DOI
Peer Reviewed
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