2016 Fiscal Year Annual Research Report
表皮における脂質メディエーターの役割の解明と角化異常症の新規治療戦略への展開
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15H04887
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
秋山 真志 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (60222551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 靖 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (10567754)
室 慶直 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (80270990)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 脂質 / 角化 / 魚鱗癬 / 表皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、表皮における種々の脂質の産生、代謝、輸送を包括的に明らかにし、脂質メディエーターをキーとした表皮細胞の分化、増殖の調節機構を解明するとともに、皮膚バリアとしての角層の形成メカニズムを理解することを目標とした。さらに、本研究計画では、本研究で解明される表皮細胞の分化と角層バリア形成の制御システムに対する脂質ダイナミズムを応用して、これまで有効な治療法がなかった角化異常症に対する根本的な治療法の開発を目指した。前年度から引き続き、本年度の研究では、以下の内容の研究を施行した。 1.脂質関連分子の異常による角化異常症患者データバンクの作成継続:前年度から引き続き、遺伝性角化異常症患者家系を集積し、それらの家系において、既知の病因遺伝子28種についての変異解析を網羅的行った。既知病因遺伝子に変異が同定されなかった家系について、次世代シークエンサーを用いる全エクソーム・シークエンシング、全ゲノム・シークエンシングにより、新規病因遺伝子を同定し、角化異常症患者データバンクを継続作成した。 2.表皮脂質動態と表皮細胞の分化、増殖とのクロストークの解明:患者表皮細胞での角化・分化マーカー分子の発現解析と脂質分析とを併行して行い、それらの相互関係を理解した。角化異常症モデルマウスにおいて、脂質メディエーターの動態と表皮細胞の分化障害をリンクさせて解析した。トランスジェニック・レスキュー系を用い、脂質関連分子、脂質メディエーターと表皮細胞の分化との相互作用を分析した。ヒト変異遺伝子による真の疾患モデルマウスで、ヒト病因変異による脂質動態の異常が表皮細胞分化に与える影響の解析を試みた。 3.脂質メディエーターと表皮細胞の分化・増殖とのクロストークを利用した角化異常症の新規治療法の開発:脂質メディエーターの投与による治療法の開発を目指して、種々の脂質の生物学的活性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.脂質関連分子の異常による角化異常症患者データバンクの作成継続:現在まで継続して、遺伝性角化異常症患者家系を集積し、それらの家系において、既知の病因遺伝子についての変異解析を網羅的に行っている。既知病因遺伝子に変異が同定されなかった家系について、次世代シークエンサーを用いる全エクソーム・シークエンシング、全ゲノム・シークエンシングにより、新規病因遺伝子を同定し、角化異常症患者データバンクを継続作成してきた。 2.角化異常症モデルマウスでの脂質動態の異常と表皮細胞分化障害の包括的解析:脂質メディエーターの動態と表皮細胞の分化障害の相互作用について、これまで得られたデータを、ヒト変異遺伝子による真の疾患モデルマウスの系で検証している。このモデルマウスの作成に予定以上の時間がかかり、その後の計画にやや遅れを生じた。 3.脂質メディエーターと表皮細胞の分化・増殖とのクロストークを利用した角化異常症の新規治療法の開発:脂質自体による新規治療法の開発:脂質メディエーターの投与による治療法の開発を目指して、acylchainの長さの異なる種々のセラミド等の生物学的活性を評価した。さらに、モデルマウスの系でPPAR, RXR, LXR作動薬等による治療実験を施行してきた。 4.現状での研究結果の総括的評価: これまでの研究結果から、表皮におけるセラミド、遊離脂肪酸、中性脂肪、コレステロールの各脂質による表皮細胞の分化に対する影響を包括的にまとめた。逆に表皮細胞の分化・角化が脂質の生成、代謝、輸送にどのような影響を及ぼしているかも検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.真の疾患モデルマウスを用いた表皮脂質動態と表皮細胞の分化、増殖との相関の解明:角化異常症モデルマウスにおいて、脂質メディエーターの動態と表皮細胞の分化障害をリンクさせて解析する。トランスジェニック・レスキュー疾患モデルマウスで脂質関連分子、脂質メディエーターと表皮細胞の分化との関係を分析する。さらに、ヒト病因変異による脂質動態の異常が表皮細胞分化に与える影響も検討する。 2.表皮脂質の異常による角化異常症患者データバンクの作成継続:遺伝性角化異常症患者家系を集積し、既知の病因遺伝子30種についての変異解析を網羅的行う。既知病因遺伝子に変異が同定されなかった家系について全エクソーム(全ゲノム)・シークエンシングにより、新規病因遺伝子を同定し、角化異常症患者データバンクを継続作成する。 3.脂質メディエーターと表皮細胞の分化・増殖との相互作用を用いた角化異常症の新規治療法の開発:脂質メディエーターの投与による治療法の開発を目指す。治療薬の候補として、sphingosine-1-phosphate、コレステロール等が挙げられる。モデルマウスの系でPPAR, RXR, LXR作動薬等によるPPAR isoforms, RXR isoforms, LXR isoformsのシグナルを介した治療法の開発も検討する。 4.研究結果の総括と臨床応用の可能性の評価:今回得られた、表皮脂質による表皮細胞の分化・角化に対する影響と表皮細胞の分化・角化が脂質の生成、代謝、輸送に与える影響のデータと、本研究での治療実験の結果を総括し、実際に臨床応用可能な治療法を提案する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Biallelic mutations in KDSR disrupt ceramide synthesis and result in a spectrum of keratinization disorders associated with thrombocytopenia.2017
Author(s)
Takeichi T, Torrelo A, Lee JYW, Ohno Y, Lozano ML, Kihara A, Liu L, Yasuda Y, Ishikawa J, Murase T, Rodrigo AB, Fernández-Crehuet P, Toi Y, Mellerio J, Rivera J, Vicente V, Kelsell DP, Nishimura Y, Okuno Y, Kojima D, Ogawa Y, Sugiura K, Simpson MA, McLean WHI, Akiyama M, McGrath JA.
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Journal Title
J Invest Dermatol
Volume: 137
Pages: 2344~2353
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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