2016 Fiscal Year Annual Research Report
Nrf2-p62ダブルノックアウトを用いたオートファジー異常による肝発癌の解析
Project/Area Number |
15H04917
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳川 徹 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10312852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田渕 克彦 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20546767)
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
内田 文彦 筑波大学, 附属病院, 医員 (70736008)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | p62 / Nrf2 / 肝臓癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酸化ストレス防御系の転写因子であるNrf2とp62を掛け合わせたNrf2-p62ダブルノックアウト(DKO)マウスを用いてNAFLDからNASHを経て肝細胞癌の発症におけるp62の役割を探ることを目的として以下の研究を行った。 【in vitroの解析】 1)アポトーシスシグナルの検討: p62(-/-)MEFで増殖能の異常が知られているため、p62(-/-)MEFとp62をsiRNAでノックダウンした細胞についてFACSで確認したところアポトーシスが低下しており、Bcl-2ファミリーの異常が認められた。これらの原因が、Src系のシグナルにp62が修飾を加えてをアポトーシスを制御していることが示唆された。2) Caco-2細胞を用い、CRISPR/Cas9システムにより、p62、あるいはNrf2欠損細胞を作成した。各Caco-2細胞を単層培養して透過性の指標である細胞膜抵抗値を測定した。 【in vivoの解析】Nrf2-p62 DKOマウスの製作:Nrf2とp62の単独欠損ノックアウトマウスを交配し、Nrf2(-/-) p62(-/-)ノックアウトマウスを選別したところ、Nrf2-p62 DKOマウスはNALDからNASHを引き起こし、ある一定の割合で肝臓癌を発症することを確認した。 【臨床的探索】免疫染色によるオートファジー因子の臨床サンプルでの発現の検討: 臨床検体を選択し、p62, LC3-A, LC3-B, γ-H2AX, 8-OHG, p53, Ki67の抗体を用いて免疫染色を行い、臨床検体での発現を観察したところ、おのおのの発現の状態、臨床病態(TNM分類、pN、局所再発、後発転移、生存率など)との比較をおこない統計学的に関連のあるものを検討したところ、p62,LC3-A・B とも陽性例において有意に予後不良であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vitroの解析の解析は予定より進行状況が良好で、アポトーシスの異常についての検討についてはBclファミリーから、最終的にSrc系のシグナルにp62が関与してアポトーシスに抵抗していることを示唆する結果が得られ、論文として発表した。発癌の原因が炎症性のサイトカインなどである可能性も考えられたため、ゲノム編集も従来の方針を変えて、解析目的に応じて細胞株を変更した。in vivoの解析は、ダブルノックアウトマウスが完成し、実際の肝臓のNAFLD~NASHさらに肝臓癌の発症までを検討できるレベルになった。臨床的探索については、肝細胞癌に代用の口腔扁平上皮癌での発現を免疫染色で行ったところ、想定外にp62と再発の関連が見出されたため、8-OHGによる酸化ストレスの評価、γ-H2AXによるDNA障害の評価、p53, Ki67などの評価を加えた。以上から、一部計画の変更があったものの、おおむね進捗状況は順調だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
アポトーシスの異常については解析が終了し、Nrf2-p62 DKOマウスによる発癌も検証でき、ゲノム編集での細胞の変異の導入についても準備が完了し、今後の研究については、このままの方針で継続すれば結果は得られると考えられている。臨床検体については口腔癌のサンプルで得られた知見をさらに解析して行く方針とし、若干の方針の変更も交えながら研究を進めていく予定である。in vitroの実験については、近年の知見でTNFαなどの炎症性サイトカインと協調して肝発癌を促進することが見出されており、さらに腸内細菌叢の変化が重要視されていることから、本年度は肝クッパー細胞における過剰な炎症応答の関与とエンドトキシンの産生について焦点を当てる方向で解析をすすめていく方針である。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Corrigendum to "p62 modulates the intrinsic signaling of UVB-induced apoptosis" [Journal of Dermatological Science 83 (2016) 226-233].2017
Author(s)
Ito S, Kimura S, Warabi E, Kawachi Y, Yamatoji M, Uchida F, Ishibashi-Kanno N, Yamagata K, Hasegawa S, Shoda J, Tabuchi K, Sakai S, Bukawa H, Sekido M, Yanagawa T.
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Journal Title
J Dermatol Sci
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] p62 modulates the intrinsic signaling of UVB-induced apoptosis.2016
Author(s)
Ito S, Kimura S, Warabi E, Kawachi Y, Yamatoji M, Uchida F, Ishibashi-Kanno N, Yamagata K, Hasegawa S, Shoda J, Tabuchi K, Sakai S, Bukawa H, Sekido M, Yanagawa T.
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Journal Title
J Dermatol Sci
Volume: 83
Pages: 226-33.
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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