2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of nucleic acid therapy using rapid acting DDS
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15H04920
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 浩文 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30322184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 正樹 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70190999)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 核酸治療 / DDS / 抗癌剤 / 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭酸アパタイトを静注可能にしたスーパーアパタイト粒子(super carbonate apatite: sCA)は従来問題とされてきた障壁をクリアし臨床応用が期待できる本邦発の核酸デリバリー法である。 平成28年度の研究結果は以下の通りである。 1)KRAS変異大腸癌に効果を示す新たな核酸であるmiR-29b変異体とmiR-4689のふたつのマイクロRNAを用いてKRAS変異のある膵癌に対しての抗腫瘍効果を検討した。癌の中でも特に予後不良な膵癌の治療開発は喫緊の課題である。その結果、4つの膵癌細胞株に対してmiR-4689よりもmiR-29b変異体が圧倒的に高い抗腫瘍効果(細胞増殖、細胞浸潤、アポトーシス誘導)を示した。miR-29b変異体によりアポトーシス誘導因子の増強、抑制因子の減弱や、MAP kinase構成分子の発現抑制がみられた。ゲムシタビンとオキザリプラチンなどの抗癌剤とmiR-29b変異体の併用効果も確認された。動物実験でもmiR-29b変異体は効果的であったので、前臨床試験に関する大型助成金の申請を開始した。 2)オキザリプラチンとスーパーアパタイト単独投与との併用効果をマウス担癌モデルで検討した。スーパーアパタイトによって腫瘍内の抗癌剤濃度は1.5倍に上昇し、抗腫瘍効果も増強された。腫瘍間質液圧の低減化によるものと考えられた。 3)ICGをスーパーアパタイトに内包し、静注することでマウスの腫瘍イメージングに成功した。ICGを励起する長波長の光線をあてることでマウス皮下腫瘍の増殖効果を認めた。これには、温度上昇と活性酸素発生の両者が関与していることを観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くの核酸医薬に抵抗性の膵癌に対して、大腸癌で効果がみられたmiR-4689とmiR-29b変異体の効果を調べた結果、miR-29b変異体が非常に有効であることが分かった。また、抗癌剤との併用効果も得られ、このラインは、前臨床試験に向け進めてゆく準備が整ったと考えている。腫瘍に対するICG光線療法についても、リポソームに比べて、マウスの肝臓や脾臓などからのICGの消退が速やかである利点が得られるなど、一定の成果がみられ論文投稿準備段階である。実用化にはもうひと工夫必要であるが、粒子の精製によって実用化の手ごたえを感じている。スーパーアパタイト単剤による抗癌剤の効果増強は、in vitroでは、タキソテール、5-FU, アドリアマイシン、オキザリプラチンなどで確認された。In vivo実験では、生体材料を用いたオキザリプラチンの測定が容易でなくかなり難渋したが最終的に安定して測定に成功し、両者の併用による抗腫瘍効果の増強も確認できた。これについても、現在論文投稿準備中である。どの核酸がどの腫瘍に効くのかを患者サンプルで判定できるよう、KRAS下流のシグナル活性を測定するSRE反応性のレポータープラスミドとmiR核酸を混じてシグナル抑制を調べたが、両者を混じるタイミングや、pre-incubationの仕様によってルシフェレース発現の結果が大きく変わるため、適正なアッセイ系を確立することが先んじて必要と認識した。一方で、転移モデルについて踏み込まなかった。ひとつの癌腫で転移なども含めて検討することは意義があるが、治療に難渋する多くの癌で検討することが、核酸医薬の戦略的にはより重要であることから、他癌への展開を優先する。研究計画に若干の前後、あるいは修正はあるものの、いくつものブレークスル―がみられ、論文化や実用化への橋渡しができたことからおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)治療に難渋する多くの癌で検討することが、核酸医薬の戦略的にはより重要であることから、大腸癌、膵癌に引き続き食道癌、肝細胞癌、乳癌(triple negative, luminal type)、悪性リンパ腫(特にDLBL)、肺癌(小細胞癌、腺癌、扁平上皮癌)、卵巣癌、平滑筋肉腫などについて抗腫瘍効果を検討する。 2)28年に確立したICG内包スーパーアパタイト光線療法を改良・発展させ、現状、獣医領域で使用されているICG内包リポソームを凌ぐレベルに発展させる。これには粒子の最適化作業が効果を増強すると推定している。 3)癌の切除標本から細胞を培養し、どのマイクロRNAが治療に適しているかを判別する。例えば培養癌細胞にsCA-miR4689を投与しKRAS下流シグナルのSRE luciferase活性が抑制されるかを調べる。しかし、レポタープラスミドの投与のタイミングと核酸投与のタイミングによって結果が大きく変わるため、SRE反応性にルシフェレースを培養液中に分泌する分泌型システムを導入して、アッセイの最適化を図る。 4)腫瘍周囲の間質液圧(IFP)は高く、血管から漏れ出た腫瘍に到達するまでの障壁となる。そのためVEGF antagonistやTNF alphaなど腫瘍間質液圧を下げて腫瘍効果を高める薬剤の開発が進んでいる。スーパーアパタイトはマウス尾静脈に注入後 2時間ほどでIFPを低下させる作用を有する。このために早期に腫瘍へ集積できる。IFP低下作用のメカニズムを明らかにすることは重要な検討課題である。腫瘍と細胞外マトリックスの間の接着因子に注目してIntegrin-family, E-cadherin, CD44,などsCAの成分のうち特にカルシウムとの相互作用について検討する。
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Research Products
(1 results)