2016 Fiscal Year Annual Research Report
iCAF:iPS由来の癌線維芽細胞による膵癌幹細胞、間質幹細胞の糖鎖標的探索
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15H04924
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木田 泰之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 主任研究員 (20396526)
舘野 浩章 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 主任研究員 (30450670)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膵癌 / 糖鎖 / レクチン / 癌-間質相互作用 / トキシン / ラッグデリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
アンメットメディカルニーズの代表である膵癌に対しては、全く新しい概念に基づく新規治療法の開発が熱望されている。本研究では、膵癌の病理組織学的な特徴である間質組織増生に焦点を当て、間質組織が存在する状態における膵癌幹細胞、膵癌間質幹細胞に特異発現する糖鎖を同定する。 従来の、膵癌細胞株やそれをマウスに植えた移植モデルは、間質組織をほとんど含まない癌細胞だけが充満した髄様性の増殖を示し、臨床膵癌の病理的特徴を模倣する事は出来ていなかった。我々はある細胞株(CSCL-1)が間質組織誘導をもたらし、臨床膵癌の形態を再現すことを明らかにし、癌幹細胞マーカーであるCD24,44,131といった分子の発現も保たれている事から、臨床膵癌の特性を解析する絶好のモデルと認識した。 我々は、産総研糖鎖グループが独自に開発した「レクチンアレイ」技術を使い、世界的にも解析が遅れている膵癌における糖鎖解析に取り組んだ。臨床膵がん幹細胞様細胞株(CSCL-1)の糖鎖発現を網羅的に解析した結果、特異的に表出している糖鎖としてH type 3糖鎖と、それに反応するレクチン rBC2を同定した。奇しくも、このrBC2は、先に産総研がヒトiPS/ES細胞に特異的に反応するレクチンとして発見した分子と同一であった。このrBC2レクチンが認識するH type 3糖鎖の修飾が癌幹細胞とiPS細胞に共通に起きている事は癌stemnessの解明、治療法開発への足がかりになる大きな発見であった。それに加えて、70例のヒト臨床膵臓がんにおけるrBC2レクチンの反応性を確認した所、ほぼ全例で強く反応することが確認でき、rBC2が認識するH type 3糖鎖を膵がんに対する有望な治療ターゲットと確信した。ここで我々は、このrBC2レクチンを直接がん幹細胞を標的とする治療担体としての応用に研究を展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度(2年目)は、1年目に明らかにした膵癌表面に特異的に発現するH type3 糖鎖を標的とする治療法の開発にエフォートを割いた。まず、rBC2レクチンに緑膿菌外毒素(PE38)を結合させた薬剤融合レクチン(=rBC2-PE38)を作成した。6種類の膵癌細胞株(SUIT-2、AsPc-1、BxPc-3、CSCL-1、MiaPaca-2、PACN-1)、および申請者が樹立した日本人膵癌由来の細胞株8種類の糖鎖発現は様々である。rBC2に反応する糖鎖発現レベルをFACS及び、マウス移植腫瘍結節のレクチン組織染色にて把握した。これらの細胞に対してrBC2レクチン単体、rBC2-PE38,の殺細胞作用をMTT法により評価した。これまでの検討の結果、rBC2-PE38のIC50は、rBC2レクチンに親和性を持たない細胞株に対しては23.01~711.2 ng/mlであった。一方、臨床膵がんに最も近い形態形成能を有する膵がん細胞株(CSCL-1)のみはrBC2に強い親和性があり、そのCSCL-1におけるIC50は1.7 pg/mlと極めて高い殺傷効果を示した。これは従来報告されている抗体-毒素(Immuno-toxin)における(ng/mlオーダー)と比較し約1000倍の強い殺細胞効果を示すものであった。 ここで、レクチンが持つ可能性がある細胞凝集毒性が危惧されたため、rBC2レクチンの血液凝集反応を解析しが、A,B,O,AB型のヒト赤血球との混合試験において全く凝集を起こさず、マウスに15μgという大容量を静脈注射しても、マウスが一切死なない安全性を確認できた。そこで、in vivoでの効果を確認する為に、マウス皮下結節の近傍にrBC2-PE38を直接投与した所、劇的な腫瘍縮小効果を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、膵癌の病理組織学的な特徴である間質組織増生に焦点を当て、間質組織が存在する状態における膵癌幹細胞、膵癌間質幹細胞に特異発現する糖鎖を同定する事を目的に開始した。膵癌細胞株(CSCL-1)が間質組織誘導をもたらし、臨床膵癌の形態を再現すことを明らかにしなった事から、急速に研究が進展した。産総研のレクチンマイクロアレイという技術を併用する事で、膵癌表面に特異的に発現するHtype3という糖鎖を同定でき、それを認識するrBC2レクチンも手に入れた。このrBC2レクチンに毒素を融合した新規のレクチン薬は、血液凝集も起こさず、マウスに投与が可能で、皮下結節を効率的に縮小する事ができた。 今後、このレクチン薬の薬効、薬理を把握し、生体投与の安全性を確認していく。また、膵癌同所移植モデル、腹膜播種モデルを作成し、このレクチン薬を腹腔内投与、血管内投与した抗腫瘍効果マウスの延命効果を確認していく。
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Research Products
(4 results)