2015 Fiscal Year Annual Research Report
運動器疾患に対するエピジェネティック治療標的の探索
Project/Area Number |
15H04961
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
今井 祐記 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (10423873)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | エピジェネティクス / 軟骨細胞 / DNAメチル化 / Uhrf1 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAメチル化継承の制御因子であるUhrf1 (Ubiquitin-like with PHD and ring finger domains 1)は、様々な組織における多様な分子機能が解明され注目されつつある。しかしながら、骨格組織における機能は不明であるため、生体内機能解析を行った。 四肢間葉系細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現する(Prx1-Cre)マウスとUhrf1 floxマウスを交配し、四肢間葉系細胞特異的Uhrf1KO(cKO)マウスを作出し、解析を行った。その結果、外観上、cKOでは四肢長が明らかに短く、関節部位での変形を呈していた。生後6週齢オスでは、cKO群の四肢長管骨長はControl群に比べ、約31~40%の有意な短縮と骨密度の低下を認めた。さらに、組織学的解析ではcKO群では成長軟骨板細胞の柱状配列に乱れを認め、有意な増殖軟骨の面積の減少を認めた。マウス新生仔膝関節の軟骨細胞初代培養の結果から、アルシアンブルーで染色される軟骨基質の著明な低下を認めた。さらに軟骨分化マーカー遺伝子発現変動を解析したところ、cKO群で有意なCol11a1の減少、Runx2およびMmp-13の発現上昇がみられた。 Uhrf1の最も重要な機能としてDNA維持メチル化が報告されているが、今回の結果から細胞増殖のみならず、細胞分化においても重要な役割を果たすことが示された。Uhrf1の分子機能からは、DNAメチル化に関連した作用が細胞分化に関与していることが推定されるため、今後MeDIP-seqとRNA-seqとの統合的解析により、軟骨細胞分化における役割や分子メカニズムを明らかにしていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定と比較して、概ね順調に進展しており、次年度の研究展開に進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究成果から、四肢間葉系幹細胞特異的Uhrf1遺伝子欠損マウスが、全長管骨の短縮のみならず、四肢全体の低形成、骨密度の低下、骨格変形等を来すことを見出した。このことから、本研究を軟骨のみに限定せず、運動器における多くの組織で評価する意味の重要性を考慮し、開始する。 また、樹立したUhrf1遺伝子ノックダウン細胞株での軟骨分化実験では、遺伝子発現低下を認めたものの、細胞株毎にノックダウン効率が大きく異なり、バラツキが非常に大きくなったため、四肢間葉系幹細胞特異的Uhrf1遺伝子欠損マウス由来の初代培養軟骨細胞を用いて、ゲノムワイド解析を行う。Uhrf1の主な分子機能は、その有する複数の機能ドメインからDNAメチル化による遺伝子発現制御に関与しているため、軟骨細胞におけるUhrf1標的遺伝子を探索する。そのために、 ①RNA-seqによる遺伝子発現プロファイル ②メチル化DNAシーケンス(MeDIP-seq) を、分化前後の細胞を用いて、当施設内の次世代シーケンサおよび共同研究により、ゲノムワイドデータの統合的解析を実施する。同定しえた複数の候補因子について、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子発現抑制の後に、細胞増殖実験や軟骨分化実験を行い、軟骨基質産生能をアルシアンブルー染色により、軟骨分化マーカーの遺伝子発現変動を定量的RT-PCR法により、その機能評価を行う。
|
Remarks |
愛媛大学プロテオサイエンスセンター病態生理解析部門ホームページ http://www.m.ehime-u.ac.jp/school/imailab/publications.php
|
Research Products
(8 results)