2016 Fiscal Year Annual Research Report
分子イメージング法を応用した子宮肉腫肺転移機構の解明と新治療法の開発
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15H04981
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
吉田 好雄 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (60220688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清野 泰 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50305603)
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50360813)
水谷 哲也 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (90322734)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 子宮肉腫 / バイオマーカー / 肺転移 / 分子イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮肉腫は、極めて予後不良の疾患である。腫瘍が子宮内に限局した状態で外科的に完全摘出した症例でも、無病生存期間は12-19ヶ月である。半数以上の症例で、肺に血行性再発・転移を生じる。5年生存率は、腫瘍が子宮外に進展して発見されたII期以上の場合、20%以下である。発生頻度は極めて稀であるため(子宮体部悪性腫瘍の3-8%)、十分な臨床研究がなされておらず、その多くは後視法的研究である。現在判明している危険因子は、未婚・ホルモン剤内服・乳がん術後のタモキシフェン内服・肥満が知られており、今後少子・晩婚化、乳がん患者の増加、ホルモン療法の普及で患者の増加が考えられる。従って、子宮肉腫に対する早期診断法・経過観察に有用なバイオマーカー・治療法確立は今後重要な課題になる。 現在問題になっている点は、①有効な早期発見の診断マーカーが確立されていないため、30歳以上の女性の約25%に生じる子宮筋腫との鑑別が困難で、術後摘出標本で初めて診断されることが多い。②稀少症例であるため有効な臨床研究が実施されていないため、適切な治療薬が不明である。③ 患者の臨床病態を反映した適切な動物実験モデルがないため、疾患の詳細な病態が不明である。④ 血行性転移を予防する適切な治療薬がない。 本研究の目的は、難治性子宮肉腫に対して、分子イメージング法を用いた診断バイオマーカーの開発・患者の臨床状態を反映した同所移植動物実験モデルの開発・それらを用いた新規血管保護による肺転移予防法の開発を行うことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮筋腫と子宮肉腫の治療前の鑑別診断法の確立は、適切な外科的治療法の選択において、最も重要な問題点である。我々の施設は、EstrogenにF-18を添加したF-18-Estradiol (FES)トレーサーの開発を行いPETを用いて診断能の向上を試みてきたが、検査の煩雑さや多施設での検討が困難であるという問題点があった。 そこで、子宮肉腫と子宮筋腫とをより簡便に鑑別するために、NCBIより公開されているビックデーターの解析を行い、子宮肉腫に特異的な新たな血清マーカーを検出し (特願2015-152893)、東洋紡と共同で、ELISA法を用いた高感度迅速測定法(5-6分)を開発した。検出された血清生理活性蛋白はオステオポンチン蛋白質、プログラニュリン蛋白質、GDF-15蛋白質、および、ミッドカイン蛋白質である。 次に子宮肉腫は、約50%に遠隔転移(特に肺転移)をきたす疾患であり、その機序を解明するために子宮肉腫肺転移動物モデルを作成し、抗転移株と低転移株を樹立し転移責任遺伝子候補を同定した(特願2014-149007)(Cancer Letter)。同定された遺伝子は、TNNT1、ZIC1、COLIA2であった。特に TNNT1は、子宮肉腫の低酸素環境と強く関連し、転移能と関連する遺伝子として最近着目されている。 また、我々は18F‐FDG PET/CTイメージングで得られた画像を「ディジタル画像処理」を行い、ピクセル強度の空間的な変動の関数として腫瘍内の低酸素領域の不均一性を数量化する試みとしてテクスチャー解析を実施した。その結果コントラストが、最も子宮肉腫の予後を反映した。このことは、18F‐FDG PET/CTイメージングを用いたテクスチャ特徴量パラメータContrastは、子宮肉腫の腫瘍内低酸素領域の不均一性を反映し予後不良因子であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
まず市販薬であるエリブリンメシル酸塩(ハラヴェン®)は、本邦で開発された悪性軟部腫瘍に対する適応を持った微小管ダイナミクス阻害薬である。最近、新たな薬剤作用機序として、乳がんモデルを用いた基礎実験系で、エリブリンは、病的血管のリモデリングにより腫瘍の血流を増加させ低酸素状態を解除し、さらにEMT抑制し、転移浸潤を抑制する作用が示唆された。低酸素環境をエリブリン投与により改善され、その後に使用された化学療法剤の腫瘍縮小効果が向上したり、遠隔転移が抑制されることが示された。我々の、基礎的な検討でも、子宮肉腫の遠隔転移能獲得には、低酸素環境と関連している可能性があるので、乳がん同様に子宮肉腫においてもエリブリン投与により遠隔転移や浸潤を抑制する可能性があると推察されこれを基礎的に検討する。さらにラミニンペプチドも同様に 血管新生阻害効果があるため、エルブリントの比較検討を実施し、子宮肉腫に対する阻害効果があるか否かを検討する。
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Research Products
(9 results)