2016 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣漿液性腺癌の卵管起源説に対する実験的検証と発癌分子機構の解析
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15H04985
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
京 哲 島根大学, 医学部, 教授 (50272969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 健太郎 島根大学, 医学部, 准教授 (70346401)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 卵巣漿液性腺癌 / 卵管采 / 不死化細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
in vitroの漿液性癌発癌モデルを構築するために、卵管采由来の初代培養上皮細胞にTERT, cdk4, cyclinD1の発現ウイルスを感染させて過剰発現し、不死化細胞を作成した。これらの細胞はcytokeratin陽性、PAX8陽性、calretinin陰性で、上皮性のミュラー管由来であることが証明され、間違いなく卵管采由来であることを確認した。さらにこの不死化細胞にdominant negative p53発現ベクターを導入し、引き続いて卵巣漿液性癌に高頻度に認められる遺伝子異常をmimicする遺伝子操作を加えた結果、特定の3つの遺伝子異常の組み合わせでマウス造腫瘍能を有する癌化細胞を樹立した。マウス腫瘍の病理組織学的解析では腫瘍は高異型漿液性癌に酷似する形態を呈した。不死化細胞にdominant negative p53発現ベクターを導入した細胞は、造腫瘍能は持たないものの、p53不活化細胞の観点からは臨床的にはSTIC細胞に匹敵するものと考える。STIC細胞と卵管采上皮不死化細胞の相違点を分子生物学的に解析すると、エストロゲン刺激によるERK経路の活性化が卵管采上皮不死化細胞では認められるのに対し、STIC細胞ではエストロゲン刺激のない状態でも恒常的にERK経路が活性化し、STIC細胞の特徴的なシグナル活性化を実証した。卵管采上皮不死化細胞で認められたエストロゲン刺激によるERK経路の活性化は、排卵時の卵胞液の曝露などを通じたエストロゲン刺激がSTIC細胞への進展に重要な役割を演じている可能性を示唆するものとしてさらに検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵管采不死化細胞より特定の遺伝子変異の導入により漿液性癌の特徴を持つ細胞を樹立し、多段階発癌モデルを作成し得た。また前癌病変としての性格を持つSTIC細胞のシグナル伝達系の特徴を明らかにし、卵管采からの初期段階発癌経路解明への道筋をつけた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回のin vitro発癌モデルでは、特定の3つの遺伝の変異導入により癌化し得たが、高異型漿液性癌に特徴的な遺伝子異常の一つであるBRCA遺伝子異常をmimicするものではなかった。そこで、BRCA遺伝子機能をノックアウトしたゲノム編集操作により同様の発癌実験を行う予定である。
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Research Products
(2 results)