2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規自己免疫性難聴トランスジェニックマウスによる蝸牛イムノバイオロジーの新展開
Project/Area Number |
15H04992
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 郁 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (00169179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 晶 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50286556)
原田 竜彦 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (60238186)
藤岡 正人 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70398626)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 免疫学 / 耳科学 / 自己免疫 / 難聴 / 橋渡し研究 / 前庭障害 / 内リンパ水腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
内耳性難聴の原因のひとつに古くから自己免疫の関与が考えられており、自己抗体や標的タンパクの同定を中心に国内外で多くの基礎的・臨床的検討がされてきている。当研究では自己免疫発症の実態である免疫寛容の破綻に焦点を当て、発生工学を駆使して新規自己免疫性難聴トランスジェニックマウス(Tg)モデルを樹立し解析している。内耳有毛細胞に外来抗原HA(Hemagglutinin)を強制発現するTgとしてMath-HAを樹立した。Math-HAマウス用の外挿遺伝子作製には、HA 遺伝子(HA, A/PR/8 H1N1 (PR8), HA512-520 ペプチド)を米国UCR, Scripps研究所(Carlson博士)から供与を受け、内耳有毛細胞特異的遺伝子発現には過去に定評のあるMath1遺伝子J2X enhancerをUT Southwestern医学センター, Johnson博士から供与を受けて用いた。さらにこのHA抗原を特異的に認識するCD4+ T細胞、CD8+T細胞を有するTg (6.5TCR,CL4-TCR)をそれぞれハーバード大学医学部のvon Boehmer研究室、Northwestern大学Khazaie博士より導入した。それぞれをMath-HAと交配させたところ、前者との二重Tgは一側性低音障害から始まる変動性進行性感音難聴を、後者との二重Tgは緩徐進行性両側性高音障害型難聴を呈した。 また、変動性難聴を呈する二重Tgを経時的に解析すると、難聴の進行に伴って姿勢障害、歩行障害を呈する個体が現れ、本モデルにおいては前庭機能障害を合併する可能性が示された。組織学的解析から前庭障害を呈する個体の蝸牛において内リンパ水腫が認められ、内耳有毛細胞へのCD4陽性T細胞による自己免疫が内リンパ水腫を引き起こすことがprospectiveに示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CD4陽性T細胞による内耳有毛細胞への自己免疫発動が、組織学的に内リンパ水腫を引き起こしながら、蝸牛障害、前庭障害の両方を引き起こすことを示した点については、一つの大きな知見と考えている。 本研究では、原理的に、実験に用いるTgマウスの遺伝学的背景を、世界的に確立されているT細胞Tgに揃える必要がある。従って本研究の限界として、白色系のマウスでしか当該モデルの作成ができない。一般的に眼球運動の解析では虹彩の模様を認識しその移動量を定量するが、白色系のマウスでは虹彩が単色であるため、通常用いられている眼振解析による前庭機能評価が不可能だった。 この部分についてH28年度に新規解析法の樹立を試みたが、技術的に困難であり、断念した。最終的には一側性鼓室内麻酔における前庭障害の運動評価を行うことで前庭障害の定量に成功したが、これらの技術開発に時間を費やしたため、研究の進展が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
CD4陽性T細胞による内耳への自己免疫発動が内リンパ水腫を引き起こす現象の、分子生物学的メカニズムの探索をする。特に(1)担当細胞の同定、(2)(1)の表面抗原の同定、を行うことで、橋渡し研究に役立つ治療標的の探索を進めたい。
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Research Products
(1 results)