2015 Fiscal Year Annual Research Report
院外心停止例の救命に寄与する要因の多面的分析と治療ストラテジの構築に関する研究
Project/Area Number |
15H05006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石見 拓 京都大学, 健康科学センター, 教授 (60437291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 孝 京都大学, 健康科学センター, 教授 (10252230)
嶋津 岳士 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50196474)
早川 航一 関西医科大学, 医学部, 助教 (60403086)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 救急蘇生学 / 心臓突然死 / 集中治療 / 心肺蘇生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究者らが先行研究で開始した、搬送先医療機関の治療体制、低体温療法などの集中治療に関するデータの集積を更に進めるとともに、従来評価が困難であった救急隊員が行う『心肺蘇生の質』も含めて、院外心停止例の救命に寄与すると思われる要因を包括して前向きに登録する仕組みを構築するとともに、多面的に分析し、院外心停止の社会復帰率を向上させるための治療ストラテジ、地域の救急医療体制を検討し、提案することを目的とする。 平成27年度は、平成26年度までの基盤研究(C)に引き続き病院到着後の集中治療に関するデータを前向きに登録・分析し、研究分担者・協力者・参加施設との研究会議を概ね月1回のペースで定期的に開催した。研究参加施設の現場負担がこれまで以上に少なくなるよう、現場から上がった意見をもとにWeb入力システムの改修を行った。平成25年12月までの2,749例の症例について病院前ウツタイン記録との確定を完了し、研究参加施設からの提案のあった解析テーマの検討を進めている。さらに、平成27年度に研究協力関係を構築した大阪府内の複数の消防機関(枚方寝屋川市、吹田市、箕面・池田市)と共同で、救急隊員が行う、『心肺蘇生の質』に関わるデータを収集するコホート研究の登録を開始した(パイロット登録ののち9月から本登録開始予定)。『心肺蘇生の質』を含むコホート研究については、対象地域内で発生した院外心停止例のうち、救急隊が蘇生処置を行い医療施設に搬送されたものを対象とする。主たるアウトカムは、社会復帰(脳機能良好な状態での1ヶ月生存)とし、従来記録していた病院前蘇生記録(目撃状況、居合わせたものによる心肺蘇生の有無、蘇生処置の時間経過、初期心電図波形等)に加えて、心肺蘇生の質に関わる記録(胸骨圧迫の深さ、テンポ、胸骨圧迫中断時間等)を測定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、院外心停止例の搬送先病院の治療体制及び、低体温療法などの病院到着後の集中治療に関するデータを前向きに登録・分析し、1.院外心停止例に対する病院到着後の治療体制・治療内容の実態把握、2.院外心停止例の搬送先選定基準の検討・予後予測因子の検討、3.院外心停止からの社会復帰率向上に寄与する治療体制・集中治療の検討を進めることを目的としている。基盤研究(C)ではWebによる症例登録システムを構築し、大阪の救命救急センターを中心に12病院から病院前ウツタイン記録と病院到着後蘇生記録を結合し、2012年には688症例を確定した。分析対象となった657症例において、治療目的体温管理が適応となる病院前心室細動であった症例のうち、44.2%(34/77)にしか施行されておらず、低体温療法等の適応にガイドラインとの乖離があることが示唆された。1ヶ月生存率は9.0%であり、脳機能良好な状態での1ヶ月生存率は3.0%だった。本研究成果は学術論文として英文国際雑誌に出版された(J.Intensive Care 2016)。基盤研究(B)では引き続き研究参加施設の現場負担が少ない体制を維持するため、研究事務局にデータマネージャーを確保し、データの質を維持するとともに登録症例数を確保している。平成25年12月までの2,749例の症例について病院前ウツタイン記録との確定を完了し、研究は順調に推移している。心肺蘇生の質に関わるデータについては、協力消防機関に導入する徐細動器に付属する加速度センサーで自動的に記録、収集し、データマネージャーがデータクリーニングした上で現場に還元する体制を構築した。特にデータクリーニングについて、データの質向上のため、先行して研究を実施しているアリゾナ大学のデータマネージャーとミーティングを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
心肺蘇生の質データの収集、及びフィードバックを先行して実施している米国アリゾナ大学の研究者等とのミーティング(ウェブ会議を含む)を継続的に行い、研究の質の向上に努める。心肺蘇生の質データの収集については、新しいデバイスを用いた集計となるため、事前に記録収集の方法について、関係する消防機関と十分な調整を行い、訓練期間を設けデータの質を担保する。データマネージャーがデータの質を維持するとともに、現場の負担を軽減し、症例登録しやすい環境を整え、症例数を確保する。また、毎年度末に各年度のデータの連結、クリーニング、解析を行い、院外心停止からの社会復帰に関係する要因を検討し、十分な症例数が確保できた段階で、心肺蘇生の質のデータに基づくフィードバック、院外心停止例の状況別の搬送先選定基準等、院外心停止症例に対する包括的ストラテジの検討を進める。合わせて、参加を決めた消防機関以外との協議を進め、心肺蘇生の質に関するデータベースの拡大も試みる。 病院前蘇生記録、医療機関での低体温療法等の集中治療等の記録については、年間2000症例を超える症例集積を実現しており、引き続き症例の蓄積を進めるとともに、現在参加している救命救急センター以外にも救急受け入れ機関の参加を呼び掛けていく。研究分担者・協力者、参加施設との打ち合わせを定期的に開催し、研究の質向上を図るとともに、集積されたデータの解析、国内・国際学会での発表、論文作成を進める。現場から提案のあった「予後予測因子の検討」「来院時血清アルブミン濃度と予後との関連」「来院時腎機能と予後との関連「高濃度酸素曝露と予後との関連」などの研究テーマについて解析を進めている。引き続き毎年2,000件以上の症例登録を継続し、社会復帰率向上に寄与する治療体制・集中治療の検討を進めていく予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Cohort profile of Comprehensive Registry of In- Hospital Intensive Care for OHCA Survival (CRITICAL) study in Osama, Japan.2016
Author(s)
1.Yamada T, Kitamura T, Hayakawa K, Yoshiya K, Irisawa T, Abe Y, Ishiro M, Uejima T, Ohishi Y, Kaneda K, Kiguchi T, Kishi M, Kishimoto M, Nakao S, Nishimura T, Hayashi Y, Morooka T, Izawa J, Shimamoto T, Hatakeyama T, Matsuyama T, Kawamura T, Shimazu T, Iwami T.
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Journal Title
Journal of Intensive Care.
Volume: 4(10)
Pages: 1-10
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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