2015 Fiscal Year Annual Research Report
骨細胞におけるリン酸イオン供与システムとFGF23フィードバック機構
Project/Area Number |
15H05010
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
網塚 憲生 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30242431)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 骨代謝 / 歯槽骨 / 歯槽骨 / klotho / kl/klマウス / αklotho-/-マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、「骨細胞におけるFGF23/klothoのオートクリン的フィードバック機構」というサブテーマを研究計画として実施した。研究代表者は、kl/klマウス(αklothoプロモーター領域の変異)、ならびに、近年開発されたαklotho-/-マウスが、血中低リン状態で異常が改善されるか明らかにするため、通常Ca/Pi餌、低Ca/Pi餌、低Ca/Pi餌+塩酸セベラマーを給餌したkl/klマウスとαklotho-/-マウスの歯槽骨の組織異常を解析した。その結果、通常Ca/Pi餌によるkl/klマウスとαklotho-/-マウスは、骨細胞の配列の乱れやDMP-1の過剰発現を示したが、低Ca/Pi餌、および、低Ca/Pi餌+塩酸セベラマーを給餌したkl/klマウスでは組織異常が回復し、野生型マウスと同様の歯槽骨を提示していた。ところが、αklotho-/-マウスでは、低Ca/Pi餌および低Ca/Pi餌+塩酸セベラマーを給餌しても、組織異常が回復せず、通常Ca/Pi餌を与えた群と同様の組織異常を示していた(これらマウスでは血中リン濃度が低下)。そこで、腎臓におけるαklothoおよびFGFR1cの発現を検索すると、低Ca/Pi餌(+塩酸セベラマー)群のkl/klマウスでは、αklothoの発現が上昇していたが、αklotho-/-マウスでは、αklothoの発現が認められないことが明らかとなった。このことは、骨細胞に対して、FGF23/klotho系が直接、作用している可能性を強く示唆している。以上、今回の結果から、リン濃度低下でαklotho発現が誘導される可能性、また、骨組織異常は、低リン状態でklotho産生が誘導されることで回復する可能性、つまり、骨細胞に対してFGF23/klothoのオートクリン的作用が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「骨細胞におけるリン酸イオン供与システムとFGF23フィードバック機構」というテーマで研究を進めてゆくが、申請書の中で記載した通り、平成27年度では、平成26年度の基盤研究Bとの継続性を考えて、「骨細胞におけるFGF23のオートクリン作用」というin vivoにおけるFGF23フィードバック機構の解明を先行した。その結果、通常Ca/Pi餌によるkl/klマウスとαklotho-/-マウスは、骨細胞の配列の乱れやDMP-1の過剰発現を示したが、低Ca/Pi餌、および、低Ca/Pi餌+塩酸セベラマーを給餌したkl/klマウスでは組織異常が回復し、野生型マウスと同様の歯槽骨を提示すること、しかし、αklotho-/-マウスでは、低Ca/Pi餌および低Ca/Pi餌+塩酸セベラマーを給餌しても、組織異常が回復せず、通常Ca/Pi餌を与えた群と同様の組織異常を示すという結果に至った。さらに、低Ca/Pi餌および低Ca/Pi餌+塩酸セベラマーによるαklothoの発現が僅かでも、骨組織の異常が回復されることを突き止めている(kl/klマウスで誘導されたαklotho発現は、野生型マウスに比べて50%であった)。なお、平成28年度の研究は現在、論文投稿中である。また、研究実績の概要には記載しなかったが、TNAP(組織非特異型アルカリフォスファターゼ)とENPP1(ピロリン酸合成酵素)についても成果がでており、前骨芽細胞や骨芽細胞の細胞膜にTNAPの、一方、骨芽細胞と骨細胞の細胞膜と細胞内にENPP1の局在を検出することができた。このことは、骨細胞において、細胞内ENPP1の輸送にANKが関与する可能性があり、「骨細胞におけるリン酸イオン供与システム」の一端を解明しつつあると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、「骨細胞におけるリン酸イオン供与システムとFGF23フィードバック機構」というテーマで研究を進めてゆくうえで、前半に、FGF23が骨細胞に、直接、フィードバック作用を行う可能性があるかを検索した。その結果、平成28年度の解析では、骨細胞に対してFGF23/klothoがオートクリン的に作用する可能性、また、骨細胞ではTNAPよりもENPP1がより強く発現していることが明らかとなった。一方、骨芽細胞は骨基質に埋めこまれると骨細胞に分化するが、その機能もダイナミックに変化すると考えられる。特に、石灰化に関しては、平成28年度の結果では、骨芽細胞とは逆に、ENPP1の発現上昇とTNAPの発現低下があげられる。以上の結果を踏まえると、klotho欠損状態では骨基質石灰化が著しい異常を示していたことから、FGF23/klothoシグナルが、骨細胞のTNAP、ENPP1, ANKの発現に影響を及ぼす可能性、また、骨芽細胞から骨細胞へ分化する段階で、石灰化に関する種々の膜輸送体・酵素の発現がON-OFFに切り替わる可能性が高く、また、骨細胞に分化した段階で発現するE11/gp38が、これら因子のON-OFFに関与するか解析する予定である。ただし、骨細胞は、骨芽細胞とは異なり、細胞膜からの基質小胞産生は認めず、骨小腔や骨細管内部での石灰化調節は、骨芽細胞とは異なることを踏まえて解析を進める。その計画の1つに、DMP-1 promoterを用いたTNAPまたはENPP1遺伝子過剰発現マウスを作製する予定であり、現在、DNAconstructを作成中である。
|
Research Products
(12 results)
-
[Journal Article] Histological assessment for femora of ovariectomized obesity (db/db) mice carrying mutated leptin receptor.2016
Author(s)
Tanaka Y, Hasegawa T, Yamada T, Yamamoto T, Sasaki M, Hongo H, Tsuboi K, Haraguchi M, de Freitas PH, Li M, Oda K, Totsuka Y, Tei K, Amizuka N.
-
Journal Title
HISTOLOGY AND HISTOPATHOLOGY
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] Calcilytic Ameliorates Abnormalities of Mutant Calcium-Sensing Receptor (CaSR) Knock-In Mice Mimicking Autosomal Dominant Hypocalcemia (ADH).2015
Author(s)
Dong B, Endo I, Ohnishi Y, Kondo T, Hasegawa T, Amizuka N, Kiyonari H, Shioi G, Abe M, Fukumoto S, Matsumoto T.
-
Journal Title
Journal of bone and mineral research
Volume: 30
Pages: 1980-1993
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Expression of matrix Gla protein and osteocalcin in the developing tibial epiphysis of mice.2015
Author(s)
Liu H, Guo J, Wei S, Lv S, Feng W, Cui J, Hasegawa T, Hongo H, Yang Y, Li X, Oda K, Amizuka N, Li M.
-
Journal Title
HISTOLOGY AND HISTOPATHOLOGY
Volume: 30
Pages: 77-85
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-