2016 Fiscal Year Annual Research Report
ミクログリア極性分子スイッチとしてのプロテアーゼ反応に着目した疼痛炎症病態の制御
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15H05015
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中西 博 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20155774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武 洲 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (10420598)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カテプシンB / ミクログリア / M1/M2極性転換 / 炎症疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではカテプシン群が炎症疼痛において脊髄ミクログリアの傷害性(M1)あるいは保護性(M2)の二極性を決定する「分子スイッチ」として働く可能性を明らかにする。具体的には、①IκBα分解・NF-κB活性化を誘導するカテプシンの同定、②ミクログリア極性モニタリングマウス創出によるミクログリア極性転換の生体イメージング解析、さらに③遺伝子欠損マウスならびに特異的阻害剤を用い、ミクログリア極性「分子スイッチ」としてのカテプシン群を標的とした疼痛炎症に対する創薬の可能性の検討を行う。
カテプシンE、B、HならびにS欠損マウスを用いた疼痛に関する行動解析により、カテプシンB欠損マウスが中枢性に炎症性疼痛に対して有意に抵抗性を示すことが明らかとなった。さらに培養ミクログリアを用いた解析により、カテプシンBは普段は転写因子NF-κBに結合することで不活性化させている抑制因子IκBαを分解し、転写因子NF-κBの核内移行を促進することでM1に関連した傷害性分子の遺伝子転写を誘導することが明らかとなった。以上の結果より、炎症疼痛において増大した脊髄ミクログリアにおけるカテプシンBが保護性(M2)から傷害性(M1)への「分子スイッチ」として働く可能性が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度はミクログリアの産生するカテプシン群の疼痛炎症における役割についての解析を行った。これまでの解析の結果、野性型と比較してカテプシンB欠損マウスは中枢性(脊髄)に炎症性疼痛に対して有意な抵抗性を示したが、神経障害性疼痛に対しては有意な差を示さなかった(Sun et al., J Neurosci 32, 11330-11342, 2012)。一方、カテプシンS欠損マウスは中枢性(脊髄)に神経障害性疼痛ならびに炎症性疼痛に対して特に慢性期において有意な抵抗性示した(Zhang et al., J Neurosci 34, 3013-3022, 2014)。
本年度はまずカテプシンH欠損マウスならびにカテプシンE欠損マウスを用い、カテプシンHならびにカテプシンEの解析を行った。その結果、カテプシンH欠損マウスは末梢性に疼痛過敏を示すことが明らかとなった。また、カテプシンEは末梢性に神経障害性疼痛に対して有意な抵抗性示すことが分かった。これらの結果よりカテプシンBが炎症疼痛において脊髄ミクログリアの保護性(M2)から傷害性(M1)への「分子スイッチ」として働く可能性が強く示唆された。
そこで次にCre-Loxpシステムを用いミクログリア特異的なカテプシンB欠損マウスを作成することとした。しかし、先行実験として行ったカテプシンDのfloxマウスとNestin-Creマウスをかけ合わせニューロン特異的にカテプシンDを欠損させたマウスにおいて、ニューロンに依然としてカテプシンDが検出された。これは周囲の細胞から産生分泌されたプロカテプシンDが細胞表面のマンノース6リン酸受容体を介してニューロン内に取り込まれ、リソソームに運ばれて成熟型のカテプシンDに変換したと考えられる。この結果は現時点では細胞特異的にカテプシンを欠損させることは技術的に困難であることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
脊髄ミクログリアのカテプシンBが炎症疼痛において保護性(M2)から傷害性(M1)への「分子スイッチ」として働くことが示唆された。しかし、カテプシンBはニューロンならびにグリア細胞に広く分布しているため、このことを直接的に証明するはミクログリア特異的にカテプシンB発現を欠損あるいは低下させたマウスの作成が不可欠と考えられる。しかし、ミクログリア特異的なカテプシンB欠損マウスを作製しても周囲の細胞がミクログリアにカテプシンBを供給する可能性があることが示唆された。そこで、今後は以下の手法を用いてカテプシンBの役割について検討を行う。
① カテプシンBを過剰発現させた株化ミクログリア(CatB/MG6細胞)の極性解析 ② CatB/MG6細胞の野性型マウスの髄腔内への注入による疼痛行動の解析 ③ ミクログリア極性モニタリングマウスを用いた炎症疼痛の発症・慢性化に伴うミクログリアの極性転換ならびにカテプシンBの極性分子スイッチとしての役割の解析
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Research Products
(16 results)