2015 Fiscal Year Annual Research Report
口腔がん克服に向けた代謝ストレスシグナル制御機構の解明
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15H05019
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
西頭 英起 宮崎大学, 医学部, 教授 (00332627)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔領域で頻発する固形がんは、十分な血管新生がともなわないため低酸素・低グルコースストレス状態にあり、がん細胞は代謝要求性がきわめて高い状態にある。このようなストレス下では、オートファジーが細胞増殖に貢献していると考えられる。さらに、低栄養は不良タンパク質蓄積をまねき、小胞体ストレス誘導性の生存・増殖シグナルが発信される。このようなストレス耐性状態にある口腔がんを克服する一つの方策として、オートファジーや小胞体から発信される生存シグナルを抑制し、強い小胞体ストレスによる細胞死シグナルを惹起することが有効であると考えられる。事実、ボルテゾミブなどの抗がん剤は小胞体ストレス誘導性アポトーシスを惹起する。本研究では、がん細胞における代謝ストレスシグナルを解明し、その分子標的に基づき、増殖シグナルを細胞死シグナルへと変換させることで新規口腔がん治療法開発に繋げることを目的とする。小胞体ストレスを分子標的とした疾患制御については、これまで小胞体ストレスの緩和という方策で様々試みられていたが、小胞体ストレス自体は細胞生存シグナルも発信することから、がん治療においては必ずしも得策ではない。そこで、代表者がこれまでに明らかにしてきた、ASK1-JNK経路を介した小胞体ストレス誘導性アポトーシスシグナルと、上記Atg12/Atg5複合体によるIRE1α経路の制御を組み合わせることで、がん細胞でとくに増強されているオートファジー・小胞体ストレスシグナルを「生存・増殖→細胞死」へとシフトさせることで、口腔領域に頻発する固形がんの全く新しい治療基盤を打ち出すことを目指す。平成27年度は、「Atg12/Atg5-IRE1α結合に必要不可欠な最短アミノ酸配列の同定」「Atg12/Atg5-IRE1α結合を阻害する分子基盤の開発」について実験を進め成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記概要に従い、具体的に下記項目について研究を進めた。 ・Atg12/Atg5-IRE1α結合に必要不可欠な最短アミノ酸配列の同定。オートファジーを含めたオルガネラは、内因的・外因的なストレスに応答し環境に応じたストレスシグナルを発信している。同様に、質的・強度的に異なった小胞体ストレスの条件下で、Atg12/Atg5とIRE1αの結合も大きく変動することから、Atg12/Atg5のIRE1αへの結合を一方的に保持または破綻させることが出来れば、Atg12/Atg5の非古典的な役割を明らかにすることが期待される。本項目では、Atg12/Atg5がおおよそ200アミノ酸から成るIRE1αキナーゼ領域のどの領域に、またIRE1αに直接結合するAtg12側の結合領域をマッピングし、結合に不可欠な最短アミノ酸配列を同定した。 ・Atg12/Atg5-IRE1α結合を阻害する分子基盤の開発 <単鎖型中和抗体の開発> 同定した最短アミノ酸配列をもとに、当該領域に対するモノクローナル抗体を作製する。Atg12/Atg5-IRE1α結合は細胞内で起こる現象のため、重鎖・軽鎖からなる巨大な二本鎖抗体そのものが細胞内で中和抗体として機能する可能性は低い。近年、この抗原認識部位の可変領域を応用した単鎖型抗体が、各医学分野で特定の分子の機能を抑える新規の技術として期待されている。そこで、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマより、重鎖・軽鎖の可変領域のアミノ酸配列および塩基配列を決定した。 <細胞膜透過性結合阻害ペプチドの開発> 単鎖型抗体の成否によらない予備的実験系として、Atg12およびIRE1α側のそれぞれの結合領域ペプチドを、膜透過性配列(TAT配列やオリゴアルギニンなど)を付加することで、Atg12/Atg5-IRE1α結合を競合的に阻害する結合阻害ペプチドを合成した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の成果をもとに、分子メカニズムをさらに詳細に明らかにするとともに、最終目標である「増殖シグナルを細胞死シグナルへと変換させることで新規口腔がん治療法開発」に繋げるためのスクリーニング系の駆逐を予定している。
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Research Products
(3 results)