2015 Fiscal Year Annual Research Report
外来化学療法を受けるがん患者を担当する看護師が行う就労支援モデルの開発
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15H05109
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
山崎 恭子 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (70347251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 明子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 教授 (20167430)
寺山 範子 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (30217434)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外来化学療法 / がん患者 / 就労支援 / 外来看護師 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの3大治療である化学療法は外来治療が可能となり、仕事を継続しながら長期的に治療を受けることが可能となったが、治療と就労の両立という新たな課題があがっている。そこで、地域社会の支援が確立されている北欧の病院にて看護師等の医療職ががん患者へ行っている就労支援の実態をインタビューにて調査を行った。 《スウェーデン》 カロリンスカ大学病院(The Karolinska University Hospital in Solna & in Huddinge )腫瘍科管理者Kari Fasterius氏、放射線腫瘍外来看護師Susanne Wallberg氏にインタビューを実施した。看護師達はがん患者に対し、可能な限り働くことや社会参加を勧め、患者に必要な支援や教育を行っている。また、がんを診断されたときからナースナビゲーターが関わり、外科や腫瘍科の間の情報を共有している。ナースナビゲーターは月曜から金曜の日中に病院や電話での相談を受け付け、患者が社会生活をしながら困ったときのフォローを可能にしていた。 《フィンランド》 セイナヨキ中央病院(The Seinajoki Central Hospital)看護管理者Merja Sankelo氏、腫瘍科外来主任看護師Lehtola Raija氏にインタビューを実施した。フィンランドでは2012年にがん疾患を含む傷病休暇について “The rule of the 30-60-90 ”といわれる制度が制定された。この制度は傷病で90日間休んでいる従業員は、産業医によって評価された労働能力を社会保険機構に提出することになっている。これは雇用者が労働者の就労の継続方法を見出すための義務としている。インタビュー対象者のMerja Sankelo氏はフィンランドのこのシステムは大変良いが、新しい法律のためまだ定着していないと感じていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は外来で化学療法を受けているがん患者を担当する看護師が就労への視点をもち、支援できる教育モデルを開発することである。 初年度は福祉制度が充実しているフィンランド、スウェーデンの2次医療、3次医療病院の外来の看護師を対象にがん患者に対する社会支援、就労支援についてインタビュー調査を実施した。この結果からフィンランドにはリハビリテーション看護師、スウェーデンにはナースナビゲーターが継続して支援を行っていることを把握した。現在、米国ではがんナースナビゲーターががん患者の継続支援を行いその役割の効果を検証している。したがって、米国の実態も把握し合わせて考察する必要性がある。 一方、日本の病院において、外来で化学療法を受けるがん患者を対象にした治療状況、治療期間に応じた就労支援に関するニーズを把握する予定であった。しかし、調査を予定していた研究協力病院である北里大学病院集学的がん診療センターでは、病棟の統合と移設などがあり、調査の実施が未定となったため調査がやや遅れている。 今後は外来化学療法でのがん患者を対象としたニーズ調査の内容について、担当する看護師とともに詳細を検討していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
①フィンランド、スウェーデンの2次医療、3次医療病院の看護師を対象にしたがん患者に対する外来看護師の役割を社会支援、就労支援の視点でインタビュー内容を集約していく。本インタビュー内容と先行研究を統合し、日本で今後、実施する予定の看護師への調査に反映させる。 ②外来学療法を受けるがん患者への就労支援に関するニーズ調査について、研究協力機関である北里大学病院集学的がん診療センターにて実施する予定である。調査内容には、治療内容(副作用との関連)、治療の過程(治療開始前、治療開始、知用再開)の状況と就労実態を基本とし、現在、外来化学療法で担当している看護師が就労支援をするにあたり、患者のニーズをどのような視点でとらえていくか分担研究者、研究協力者と検討していく。作成した調査票にて倫理委員会での承認を得た後、調査を開始する。研究協力病院は、約200人/月のがん患者が外来で化学療法治療を受けている。そこで、6ヶ月間、約1,200人の患者を対象に実施する予定である。 上記の2点を推進していくことで、外来化学療法を受けるがん患者を担当する看護師が行う就労支援モデルの構築に向けた礎となる。
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