2016 Fiscal Year Annual Research Report
チベット高原における温暖化にともなう有機物分解促進メカニズムの解明
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15H05111
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
廣田 充 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90391151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤嶽 暢英 神戸大学, 農学研究科, 教授 (50243332)
廣瀬 大 日本大学, 薬学部, 准教授 (20513922)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境変動 / 地球温暖化影響 / 有機物分解 / 炭素循環 / 高山生態系 / チベット高原 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の主たる調査地(中国青海省西寧市回族自治県海北草原)の高山斜面に2015年9月末に設置した温暖化実験区において、微気象項目(深さ5cmの土壌温度、土壌水分、地上1mの気温・湿度)システムを2016年5月に設置し、それらの無人観測を開始、同年8月まで連続観測を行った。同時に、フェノロジー観測用カメラを10台用意して、フェノロジー観測を開始した。当該地域の植物の主要な生育期間である7月から8月に、標高3200m、3400m、3600m、3800m、4000mの5標高においてチャンバーを用いて群集レベルのCO2放出フラックスである生態系呼吸と土壌呼吸を測定した。これらのフラックス測定は、通常の放牧区と長期禁牧区の両区で行った。 これらの結果から、土壌温度のみならず、土壌水分も標高によって大きく異なり、特に高標高域では気温と土壌温度だけでなく、土壌水分も低くなることが明らかとなった。生態系呼吸および土壌呼吸は、標高が上がるにつれて減少したが、その主な要因は温度低下であった。しかし、標高に伴う変化よりも、放牧の有無、すなわち放牧区と禁牧区間の違いの方が大きいことが明らかとなった。さらに放牧区でのこれらCO2放出フラックスの温度依存性は、禁牧区のそれよりも大きいことが明らかとなった。今日のチベット高原の高山草原では、低標高域で放牧圧が高いこと、低標高域では高標高域よりも生態系呼吸および土壌呼吸によるCO2放出速度が大きいこと、さらに低標高域では昇温にともなうCO2放出促進効果が高いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標高差を利用した野外操作実験による温暖化処理が順調に進んでいることと、関連気象観測も開始できているため。さらに、温暖化処理区以外の現状把握も終えていることから、概ね順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(2017年)に入り、中国当局から中国科学院を介して、当該地域への外国人入境不許可の連絡が入り、今年度は私を含めて日本人が入境出来ない、即ち我々が直接調査出来ない状況になった。そのため、1.当該地域での現地調査は平成30年度へ延期する、2.中国北京大学の連携研究者へ打診をして、我々の代わりに中国人院生に調査を委託する、3.国内の高山帯(日本アルプス木曽駒ヶ岳および乗鞍岳の山頂付近)も新たに調査地に加えて調査を実施する予定である。
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Research Products
(4 results)